ホラーファンからの信頼が厚い制作陣が、再び集結した第2弾!
2024年5月、テレビ東京で突如深夜放送された『イシナガキクエを探しています』という番組。タイトル通り、55年前に行方不明になった“イシナガキクエ”という名の女性を探す特別公開捜査番組という形で進んでいき、情報提供のための電話番号も表示され、実際にオペレーターが電話で対応している様子も映し出される。しかし、彼女を探しているという男性の話を聞くうちに、視聴者は「あれ? 何かがおかしい…?」と、不可解で不穏な世界へ足を踏み入れてしまったようなゾワゾワした感覚に襲われる。そして、最終話まで見届けると、様々なピースの間に繋がりが見え始め、イシナガキクエとは何者なのか、彼女に何が起こったのかが脳内に浮かび上がってくる…。そう、これは、リアルな捜査番組ではなく、あくまでもフィクションとして作られたフェイクドキュメンタリー番組。制作を手がけたのは、『行方不明展』『このテープもってないですか?』なども話題となった、テレビ東京の大森時生さんだ。
その”フィクション”ドキュメンタリー「TXQ FICTION」シリーズの第2弾、『飯沼一家に謝罪します』が、12月23日〜26日、四夜連続で放送されることが発表された。
第1弾に引き続き制作を手がけるのは、大森さんを始め、『フェイクドキュメンタリーQ』の皆口大地さん、『フェイクドキュメンタリーQ』『心霊マスターテープ』の寺内康太郎さん、2025年1月24日公開映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の近藤亮太さん、と、ホラー界隈で絶大な信頼を得る面々。さらに、国内外で注目を集めるアーティストの大西晃生さんがタイトルビジュアルを制作し、グラフィックデザイナーの大島依提亜さんがデザインを担当、オープニングテーマは、TVアニメ『【推しの子】』第1期OPテーマ「ファタール」などで知られるキタニタツヤさんが手がける。
YouTube、映画、小説、漫画と、多くの分野でフェイクドキュメンタリーやモキュメンタリーが作られ盛り上がっている今、そのムーブメントの旗手の1人でもある大森さんは、この新作でどんな試みを行おうとしているのか。フェイクドキュメンタリーというジャンルは、“たまたま目撃してしまったもの”として楽しむ感覚も醍醐味の一つ故、あまり放送前に情報を入れることは野暮だが、その見どころの手がかりとなる断片を聞いた。

――今回”謝罪”というテーマに至ったのはどんな経緯だったのでしょうか?
謝罪という行為の奇妙さに興味がありました。謝罪にはどのような意味があるのか、謝罪された側は何をもって許すのか。現代において(特にSNSにおいて)謝罪はより頻繁に、そしてより表面的に行われるようになったと思います。「ご不快な思いをされた方“がいたら”謝罪します」といったような、巧みな、すり抜けるような謝罪もよく目にします。謝罪の言葉は、時としてその場の状況や相手の期待に応じて、便宜的に調整されます。そこに真に反省しているかどうかは関係なく、その行為自体がひとつの“儀式”として成立するというのは面白いなと思いました。
——大西晃生さん、大島依提亜さん、キタニタツヤさんと、今回も様々なジャンルのクリエイターの方々と一緒に制作をされていますが、皆さんには、番組のイメージやリクエストを、どのように伝えたのでしょうか?
「TXQ FICTION」とタイトルにも銘打っているように『飯沼一家に謝罪します』はフィクションです。フィクションだからこそ、そしてフェイクドキュメンタリーという手法を使っているからこそ、現実に置き換えたときに浮かび上がる感情に受け手は惹き寄せられると思っていて、この感覚をお伝えしています。その上でストーリーやテーマ設定の理由などをお伝えして、そこからはお任せということが多いです。大変ありがたいことに、


――大森さんの番組では、不鮮明な写真や映像素材がとても効果的に登場しますが、今作も、公開された場面写真などから、そういった要素が入ってくるのではと予想されます。大森さん自身が、不鮮明ゆえの怖さや不穏感を感じるメディアは何でしょうか?
確かに“不鮮明”なものは不気味です。そこに怖さを感じつつも、強烈に惹きつけられる感覚はあります。それはなぜだろう、と考えると、それはノスタルジーと結びついているからだと思います。フィルムには(私は)不気味さは感じません。そこに郷愁を覚えることがないと、歴史資料のように感じてしまうからかもしれません。それでいうと、僕が不穏に感じるのは、ニンテンドー3DSやPSPなどゲームについているカメラで撮影
——フェイクドキュメンタリーにおいて、視聴者が想像力で補完したり考察したりできる余白を残しつつ、強度のある物語を語るために、意識されていることはありますか?
そこは制作陣が常に頭を悩ませている問題です。明確なお答えは難しいですが、もっとも大切にしているのは、“現実の複雑さ”を失わないことです。現実というものはとにかく複層的に構成されているという感覚があります。怒りながら、笑ってしまうようなこと。殺したいくらいの恨みが、だんだんと生きる目的になること。現実は、そういった割り切れないことばかりです。現実の複雑さを含むことができていたら、それ自体が強度のある物語になると思っています。
——「TXQ FICTION」がこれから目指すもの、挑戦していきたいこととは?
より複雑な物語にも挑戦していきたいです。現実のドキュメンタリーにもドラマにも到達できない場所に到達できればなと考えています。裁判など、“人が裁かれる”ということに最近興味があります。まだ、具体的にどうという話では全くないのですが。
——ホラーというジャンルの中で、最近大森さんが注目されている作家さんや作品を教えてください。
木村響さん、吉岡一靖さんによるJAMES WEBBというチームに注目しています。特に『Perspective』というYouTubeでも公開されている作品がとても好きな質感でした。オーセンティックなJホラーの中に、不思議と清涼感を感じる作品です。今後の作品もとても楽しみにしています。
INFORMATION インフォメーション
TXQ FICTION『飯沼一家に謝罪します』
2024年12月23日(月)〜26日(木)深夜2時00分~2時30分、テレビ東京にて放送。
今回の放送に合わせ、TXQ FICTION第1弾『イシナガキクエを探しています』もTVerで期間限定無料配信予定。
PROFILE プロフィール
大森時生(おおもり・ときお)
テレビ東京プロデューサー。『このテープもってないですか?』『SIX HACK』『祓除』などの話題作を手がける。プロデュースを担当した映画『フィクショナル』が公開中。展覧会『行方不明展』の書籍版が発売中。