「忍者スタイル」で世界を制した20歳のエース。
2020年の東京五輪の追加種目に選ばれたスポーツクライミング。国際大会で行われる3種目のうち、体ひとつで制限時間内に決められたルートを完登した回数を競う「ボルダリング」で、世界のトップに立つ日本人がいる。昨年、弱冠20歳でワールドカップ年間優勝と世界選手権優勝を成し遂げた、楢﨑智亜選手だ。
「世界選手権の優勝を決めたときは、ホッとしたという感じ。自分でも波が来ていると感じていたので、獲れるものは全て狙うという気持ちで挑みました。日本人初のタイトルを獲得できて、とても光栄です」
楢﨑さんの魅力は、海外選手から「忍者」に例えられる、壁から壁へと飛び移るダイナミックな登り方。
「ただ登るのではなく、フィジカルの強さを生かして格好よく登る、というのが自分のスタイル。ただ、以前はその部分に目が行きすぎて、結果を残せずに苦しんだ時期もありました。先輩クライマーの野口啓代(あきよ)さんからのアドバイスがきっかけで考え方が変わり、技術やメンタルの重要性に気付けたことが昨年の好成績につながったと思います」
その言葉通り、’15年には30位台だった世界ランキングが、’16年には1位へと大躍進。その目は、すでに次のステージを見つめている。
「ボルダリングの面白さは、スタートからゴールまでの過程に正解がなく、体格や能力にあわせて登り方を自由に決められるところ。多くの人にその魅力を知ってもらうためにも、目標は東京五輪の金メダルです」