「中学のときに『あさきゆめみし』というマンガを読んで、その影響で『源氏物語』の現代語訳や原文も手に取ってみたのですが、当時はわりと女の人にスポットを当てて読んでいたんです。大人になって光源氏を冷静に見てみると、いくらイケメンだからといってあんなにたくさんの女性を悲しませるなんて、ちょっとないわと思って(笑)。その感覚のままで現代に来ちゃったら面白いかもしれないと思ったんですよね」
光源氏がタイムスリップする先は、都内でひとり暮らしをしている27歳のOL・藤原沙織の部屋。彼女は“光源氏を名乗るコスプレ男”を半信半疑で居候させるのだが、スマホやら抹茶フラペチーノやらネイルやら、現代カルチャーと遭遇する彼の反応が、「まあこうなるよね」とある程度予測できるのにいちいち笑えてしまう。しかも彼は、何かに感動するたびに和歌を詠み、ツイッターに投稿までしてしまうのだ。
「この時代の貴族は嬉しかったり悲しかったりしたときに、日常的に歌を詠んでいたと思うのですが、その感覚がツイッターやインスタグラムなどのSNSとフィットする気がしたんです。ツイッターは特に、文字数の制限もありますしね」
女好きオーラがダダ漏れなのに、一緒に暮らしている沙織には興味を示さなかったり、昼間は家でゴロゴロしていて生活能力がまったくなさそうだったり。時代が変わるとイラッとすることも少なくないのだが、イケメンが家にいるのは悪い気がしないし、どこか憎めない光くん。
「このマンガを描いてみて、ギャグやコメディを描き続けている方の体力を尊敬しました。ネームを描きながら結構悩んだり苦労したはずなのですが、作画に入るとバカバカしくて、何が大変だったのか実はよく覚えていないんですけどね(笑)」
読み終わって、光くんともう会えないのかと寂しく思わせるところも、天性の人たらしのなせるワザだ。