横断的なメディア展開で、若者から中毒者が増加中!
“小説を音楽にする”をコンセプトに誕生したYOASOBIは、作詞・作曲ほか楽曲制作のすべてを手がけるAyaseと、ボーカルのikuraからなる男女2人組音楽ユニット。昨年11月に「夜に駆ける」のミュージックビデオ(以下、MV)を初公開、その約1か月後に同曲のダウンロード/ストリーミング配信がスタート。若者たちの間で“歌ってみた”動画が拡散され、デビューわずか半年足らずで大注目のアーティストに急成長を遂げた。小説+楽曲+MVと、メディアを自由自在に操り、それぞれのクリエイティブで作品を配信し続けるYOASOBIの、そのダイナミックな仕掛けや、活動内容を追ってみた。
派生する世界観を解説! YOASOBIマップ
【NOVEL】
物語の世界観を音楽で表現するYOASOBIにとって、小説はその核となる要素。一般公募にて選出された小説や、プロの作家による小説などを原作として、楽曲を制作している。原作小説集『夜に駆ける YOASOBI小説集』(双葉社)も9/18に発売!
【MUSIC】
原作小説をもとに、コンポーザーのAyaseが作詞・作曲を手がけ、ボーカルのikuraが歌を乗せる。デビューから約8か月の間に配信された以下の4作品に加え、9/1には5作目となる最新曲、「群青」が配信されたばかり。CMソングにも起用されている。
【VIDEO】
YOASOBIを構成する大事な一要素。原作小説や楽曲の配信だけで終わらず、さらに世界観をイメージしやすく視覚化させたMVは、基本アニメーションで展開。毎回曲の世界観に合った異なるアニメーターを起用し、より鮮度が上がったキャッチーな物語が展開される。
1st『夜に駆ける』
Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャート「Streaming Songs」では総再生回数1億回を突破した、YOASOBIのデビュー作であり代表作。
【NOVEL】『タナトスの誘惑』星野舞夜
【MUSIC】テーマ:夏の夜、君と僕の焦燥。
【VIDEO】映像・藍にいな
2nd『あの夢をなぞって』
花火大会をキーに、予知夢を見たクラスメイトの少年少女の恋物語を描いた作品を、楽曲にしたもの。胸がキュンとする夏のラブソング。
3rd『ハルジオン』
作家の橋爪駿輝氏原作の楽曲。エナジードリンクとのタイアップソングで、リモート演劇「劇団ノーミーツ」が8月に行った公演の主題歌にも。
4th『たぶん』
これまでのドキドキするようなキャッチーな恋愛ソングとは違い、別れを描いたミドルテンポの切ないラブソング。今年7月に公開された。
ボカロPのAyaseがインスタでikuraを発見!
――自己紹介と、YOASOBIの成り立ちを教えてください。
Ayase:僕はYOASOBIの楽曲の作詞と作曲を手がける、いわゆるコンポーザーです。
ikura:私はAyaseさんが作った曲を歌っていますが、普段は自分で曲を作って歌う、シンガーソングライターとしても活動しています。
Ayase:YOASOBI誕生のきっかけは、“小説を音楽にする”というコンセプトで楽曲を作りませんかとお声がけいただいたことから。僕はボカロP(音声合成ソフト“ボーカロイド”を使って曲を作る人)でもあるし、バンドでも自作の曲で歌っていたんですが、誰かが書いた物語を曲にして世に出すという新しい試みに興味を持ちました。ボーカル探しを始めたら、インスタでカバー動画を上げていたikuraを発見して、連絡をしたんです。
ikura:“小説にまつわるユニット”という説明を聞いて最初は「なんじゃそりゃ」って思ったけど(笑)、YouTubeでAyaseさんの曲を聴いた時に、音とメロディにすごく中毒性を感じて衝撃を受けて、それで一緒にやりたいって返事をしました。
――他のアーティストにはない活動内容が注目を集めていますね。
Ayase:はい。テーマを決めて小説を募集し、その中から1作品を選んでサブスクリプションに楽曲をリリース、そしてMVを発表する。ネットの世界が主軸です。
ikura:第一印象は、明るい私に対して暗い方なのかなって思ってたけど…。
Ayase:人見知りしてたかな。僕もめちゃめちゃ明るいです(笑)。ikuraは素直でピュアな心を持ちつつ、しっかりした女の子だなっていうのが第一印象。想像通りで求めていた歌声でした。
言葉のインスピレーションが生む創造性。
――小説は楽曲に対してどんな位置づけなのでしょうか。
Ayase:小説、楽曲、MVがすべて1つの作品だと考えると小説は“骨”。歌詞は“肉”で、ikuraの歌は“皮膚”かな。となるとMVは“服”になるのかな。
ikura:うん、MVのビジュアルから入る人もいるからね。
――なるほど、すごく腑に落ちました。小説を選んでから歌詞はどのように作り上げるんですか?
Ayase:曲にすることは考えずに小説として読んで面白い作品を選び、直感で言葉を拾うんです。
――各作品から、お二人がピンときた言葉が知りたいです。
Ayase:「夜に駆ける」の原作『タナトスの誘惑』なら“さよなら”。Aメロの始まりが“さよなら”なんですが、最初に結論を匂わせておいて完結した時に、あ、これが最初の“さよなら”だったんだとわかる。伏線を張るような作り方をするのが好きなのかも。
ikura:私は“ニッコリと笑っていた”。小説ではハッとして答え合わせが始まるシーンで、曲では転調する大事な言葉。あと“夜空に向かって駆け出した”も。
Ayase:僕も同感。駆け出したというのは自殺してしまったことなんだけど、そういうグロテスクな感じのものってポップな表現で包むほど、グロテスクさが際立つと思っていて、言い回しがキレイだと思った。「あの夢をなぞって」の原作『夢の雫と星の花』では“好きだよ”かな。こういうストレートな表現は、物語が複雑に絡んでいる中にポンと入ることで一気に現実感を帯びるんです。
ikura:私は“光のカーテンのように目の前いっぱいに広がっている”が好きなシーン。曲ではサビの頭の“あぁ”で花火が上がり、花火が反射した光のカーテンが広がるイメージで歌いました。
――曲を作る人と歌う人とでは、選ぶ言葉やシーンが違いますね。
Ayase:そうですね。「ハルジオン」の原作『それでも、ハッピーエンド』は“わたしたちは美しかった”の過去形の一文に時間の流れや二人の関係性、今の私は美しくないといういくつもの意味が集約されているように感じた。小説『たぶん』に関しては曲のタイトルは「たぶん」以外の選択肢がなかった。目を閉じて始まり、物語は“たぶん”で進んでいくから。
ikura:私が気になったのは“同居人”という言い回し。主人公が男性か女性かあえてわからないようにしているけど、もし性別がはっきりしていたら違う歌い方になったと思う。それと10テイクぐらい録り直して苦労したのが、思わず零れ落ちたというニュアンスの“お帰り”。深い意味はなく、無意識に零れ落ちるような“お帰り”は本当に難しかったです。そして“埃”という言葉。この小説のテーマが“埃っぽい朝のこと”なんですが、“埃”の一文字で明確に描かれてはいない二人の結末に切なさを感じました。
Ayase:へぇ~、ikuraちゃんの気持ちをいま初めて聞きました(笑)。面白いですね。
ヨアソビ コンポーザーのAyase、ボーカルのikuraからなる、「小説を音楽にするユニット」。2019年11月に公開された第1弾楽曲「夜に駆ける」は、各種配信チャートで1位を席巻し、さらにストリーミング総再生回数は1億回を突破。原作小説の書籍化やコミック化も発表し、ますます展開の幅を広げている。
Ayaseさん・ジャケット¥94,000 シャツ¥44,000 ニットパンツ¥54,000 ネックレス¥41,000(以上アーネスト ダブル ベイカー/ジャックポット TEL:03・3352・6912) ピアス、リングは本人私物
ikuraさん・ブラウス¥62,000(アクネストゥディオズ/アクネ ストゥディオズ アオヤマTEL:03・6418・9923) キャミワンピース¥31,000(フィーニー TEL:03・6407・8503) ピアス¥38,000(オール ブルース/エドストローム オフィス TEL:03・6427・5901) パンプス¥41,000(フミエ タナカ/ドール TEL:03・4361・8240)
※『anan』2020年9月23日号より。写真・宮崎健太郎 スタイリスト・服部昌孝 ヘア&メイク・上川タカエ(mod’s hair) インタビュー、文・若山あや JASRAC 出 2007271-001
(by anan編集部)