第二弾となる今回は、勝新太郎さんの主演映画で一世を風靡した『座頭市』の物語をリリー・フランキーさんの脚本で上演。演出には三池監督が再登板する。
「正直、歌舞伎に関して僕は、まったくのジャンル違い。前回ですでにキャパオーバーでしたから、遠慮したかったというのが本音。でも、市川海老蔵という、生まれた瞬間から世の中の誰一人代われない宿命を背負って、一日一日、歌舞伎のために生きる覚悟を固めてきた人が、『またやろう』って言ってくれているわけです。そんな言葉に逆らえませんよね(笑)」
ただ今回、演出を引き受けるにあたって三池監督からひとつだけ条件を出したのだそう。それが寺島しのぶさんのキャスティング。
「そろそろ歌舞伎も性別だとか形式にこだわらなくてもいいんじゃないかと思ったんですよね。でも、それが生半可な女優だったら、そんな気にもならなかったと思います。寺島さん自身が歌舞伎俳優の家系だということもありますが、僕の目には彼女が女優というバケモノに見えていて、そんな彼女と海老蔵さんを組み合わせてみたかったんです。本当は、そこに平幹二朗さんが入れば最高だったんですが、スケジュールが合わずに諦めたら亡くなってしまい。でも、この3人が舞台に揃ったら、俺が何もしなくたって、どんな芝居でも絶対に楽しくなるでしょう。いまの僕のリアルな目標設定は、あの世の平さんに『出たかった!』と悔しがらせたいということです(笑)」
演目を『座頭市』に決めたのは海老蔵さん自身。その根底には、’12年に亡くなった中村勘三郎さんから再三聞いた俳優・勝新太郎の破天荒な魅力に惹かれたことがある。
「六本木歌舞伎は死者に導かれているんです」と監督。そして歌舞伎自体も「亡くなった人の想いを引き継ぎ、新たな作品が生まれる芸能の面白さがある」とも。
「歌舞伎って、長い歴史のなかで余計な部分を全部排除して、シンプルを極めていってできた引き算の芸能だと思うんです。機材や技術の進歩をどんどん取り込んでいかなきゃ古びてしまう映画界に生きている俺からしたら、憧れの世界なんです。海老蔵さんは、六本木で新しい歌舞伎を作ろうとしているけれど、僕としては、いまある歌舞伎そのものが斬新で面白くて仕方ない。あえて新しいものを作ろうとしなくても、歌舞伎の基礎的な知識がない自分が入ることで自然と、一般的な歌舞伎とは違うものができると思っています」