フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『CENSU TOKYO』の海南チキンパエリアです。
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「CENSU行った?」「ああいう店を求めてた!」。近頃のフーディーとの会話でその名が挙がるのを何度聞いただろう。外苑前に7月にオープンした『CENSU TOKYO』は、香港発のフレンチベースなガストロノミー居酒屋……と言うと難解だが、あえてシンプルな言葉に託すなら「ちょっと面白い居酒屋です」と、オーナーシェフの金須郁幸さん(実力派って往々にして軽やかですよね)。

CENSUの始まりは2021年。現地オーナーの佐藤峻さんが香港店をオープンさせて以降、瞬く間に美食家やシェフから支持される一軒に。“IZAKAYA”というある意味自由なフォーマットに、和食・フレンチ・中華の技法を取り入れた情報密度の高いガストロノミックな料理を縦横無尽に展開する。〆の「海南チキンパエリア」は象徴的な一皿。帆立ベースの出汁にパンダンリーフやレモングラスを合わせて炊いたパエリアを、ドライエイジングした美桜鶏のローストが支配する。米の旨味にアジアンハーブの香り、チキンのパリパリジューシーな仕上がりには中華の技法もよぎる。あらゆる食文化を越境させながら、それでもカオスを避けてバシッと美味しさに着地させる手腕は見事。そして何より楽しい。固定観念が追いつけない感性と技術のクロスオーバーで、居酒屋というスタイルを更新するCENSU。今、彼らの登場と挑戦に、東京のフードシーンが勇気づけられている。

奥から時計回りに、蛤を紹興酒や梅酒に漬けた「ドランケンクラム」(¥1,480)は香港らしい一皿。「ハマチ」のお造り(¥1,380)は、トマトとハラペーニョを合わせた自家製ポン酢で。〆の「海南チキンパエリア」(¥4,880)は、4人ほどでシェアできるサイズ感。ドリンクは日本酒(1合¥1,280~)もナチュラルワイン(グラス¥1,280~)も勢揃い。今日はとことん飲みましょー。

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CENSU TOKYO 東京都渋谷区神宮前2‐12‐9 TEL:03・6434・5883 18:00~23:00 日曜・不定休 詳細はインスタグラム(@censu_tokyo)で。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。

※『anan』2023年9月13日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

(by anan編集部)

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