フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『Arrow(アロウ)』のイタリア料理です。
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『Arrow』をSNSで見かけたら、誰しもがスクロールの手を止めてしまうのではないか。ホワイトでウッディ。マリン&カントリーなセンスと意志に満ちた世界観。私が店内の写真をポストしたら早速友達からコメントが飛んできた。「やばい! この椅子かわいい!!」「アメリカの教会で使われてたヴィンテージらしいよ」「うわ~最高」

そう、『Arrow』の空間は最高なのである。オーナーの山田一歩さんが店作りをする際に決めたのは、普通の店は作らないこと。キッチンには巨大な縦型冷蔵庫も天井から吊り下がるラックもない。どちらも当たり前に飲食店に設置されるものだが、機能性だけでジャッジをしないことが、この店を特別へと変える確信があったのだろう。

しかし、空間に振り切ったお店は得てして料理に同等の愛が注がれないこともある……なんて定説をまるっとひっくり返すのが『Arrow』でもある。煮込み、パスタ、肉! シンプルで肝の据わったイタリア料理が、厨房からドカンドカンと放たれるのだ。シェフの川村洋太さんはイタリア愛溢れる人。ピエモンテやシチリア料理など横断的な経験を積んだ彼の渾身の皿は、デセールのチョコラータに至るまで油断ならないおいしさだ。「お腹をすかせて来てほしい」と彼らは言う。非日常な空間でめいっぱい料理を頬張る没入的な食体験は、突き抜けるような幸せを約束してくれるだろう。

手前から時計回りに、川村シェフが現地で衝撃を受けたフィレンツェ屋台の味 ランプレドット(¥1,700)、北海道産鴨フィレ肉のロースト(¥3,400)、魚介とオレンジのシチリア風煮込み リゾット(¥1,900)、チョコラータ バニラジェラート添え(¥1,000)。グラスワイン(¥1,000~)。

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Arrow 東京都世田谷区三宿1‐7‐1 TEL:070・1250・0626 17:00(土・日・祝日15:00 )~24:00(22:30LO) 水・木曜休 詳細はインスタグラム(@arrow_mishuku)で。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。

※『anan』2023年5月17日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

(by anan編集部)

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