いい原作を、とんでもないクオリティでヒットさせる。
高野水登:僕なりにトレンド予測をすると、2023年も「少年ジャンプ+」の勢いが止まらないと思います。まず『SPY×FAMILY』のアニメが爆跳ねして道が開けた。今後アニメ化が予定されている『【推しの子】』(『週刊ヤングジャンプ』に最新話を掲載)も、第1話は90分という発表があって、原作を読んでいる者には何をやろうとしているかピンときた。相当話題になると思います。『怪獣8号』も控えてます。
大島育宙:さすがにそれは僕も読んでる。
高野:1000%ヒットしますね。だって単行本化する前で1億5000万PVを記録して、1巻で100万部超え。売る前にもう売れてる。
大島:『チェンソーマン』のアニメ化も話題になってるよね。
高野:ですね。製作委員会形式を取らず、制作会社であるMAPPAと集英社の2社だけで作っていて、もしかすると業界構造を変えるかも? と思ったくらい。制作会社自ら宣伝予算を出してるってことは、回収の目算がついてるはず。いい原作をとんでもないクオリティで作ればヒットするっていう、めちゃくちゃ健全な成功の方程式ができちゃったかも。
大島:「ジャンプ+」がすごいのは、過去のエピソードが1話ずつ1回だけ無料で読めること。作品が気になったらすぐに全話読める。目先の利益じゃなく、まずファンになってもらうことが大事だってわかってる。ドラマの見逃し配信とも似てるしくみだよね。間口を広げたほうがコンテンツの視聴熱は高まる。
高野:紙は休載したらそのページを埋めないといけないけど、ウェブはその必要がない。ページ数の制約もないから、好きなだけ描ける。第2部から「ジャンプ+」で連載再開した『チェンソーマン』も1週休んで50ページくらい描いてますから。
大島:『タコピーの原罪』みたいな、ダークな作品も載せるしね。
高野:そう! 物語を受け取るフォーマットの幅が広い。緩いもの、ハードなもの、王道の少年マンガまで、ばんばん人気作を連発してる。
大島:そういえば『東京卍リベンジャーズ』もまたやるんでしょう?
高野:そうなんですよ。『東リベ』は2021年のアニメ放送のあとで実写映画が公開されて爆発的にヒットしましたけど、2023年も同じ波が来るんです。1月に第2期アニメ、春と夏に実写映画を控えてる。
大島:それはヤバいね。
高野:またファンが増えそう。「とにかく原作持ってきて作れ!」な時代は終わりましたね。
『【推しの子】』
芸能界のしくみもわかる、異色のサスペンス。
産婦人科医・ゴローの前に現れたのは、“推し”のアイドル「B小町」のアイ。彼女はある禁断の秘密を抱えており…。2023年4月にTVアニメ化を予定。
『タコピーの原罪』
ハッピーからの急展開。衝撃のラストが待ち受ける。
いじめに苛まれる少女しずかとタコ型地球外生命体タコピーの交流を描く。作者のタイザン5は『週刊少年ジャンプ』で「一ノ瀬家の大罪」を連載中。©タイザン5/集英社
『怪獣8号』
怪獣と隣り合わせで生きる悲哀。待望のアニメ化決定!
謎の生物に浸食され怪獣化した日比野カフカは人間に擬態して生きている。怪獣と隣り合わせの世界を描くアクションドラマ。単行本8巻まで発売中。©松本直也/集英社
無限まやかし お笑いコンビ「XXCLUB」の大島育宙(左)と脚本家・高野水登(右)によるユニット。映画やドラマ、漫画、小説などのフィクション=まやかしを無限に食べ、感想や考察を無限に話す。SpotifyとYouTubeチャンネルで「無限まやかし」配信中。
※『anan』2022年12月28日‐2023年1月4日合併号より。写真・五十嵐一晴 ヘア&メイク・松橋亜紀 取材、文・飯田ネオ
(by anan編集部)