複数の海外映画祭に招待される映画監督としても活動する甫木元空(ほきもと・そら)さんと、ジャズピアニストである菊池剛(きくち・ごう)さんによるBialystocks。メジャーファーストアルバム『Quicksand』は伸びやかな歌声と抽象的で奔放な音像が印象に残る。なかでも、甫木元さんが監督した同名映画の主題歌「はだかのゆめ」はストリングスが入ったストレートなピアノバラードだ。人は必ず死を迎え、別れが訪れるという映画『はだかのゆめ』で描かれる物語が一曲に凝縮されている。

音楽でしかできないことと映画でしかできないことを考えた。

Entame

「音楽でしかできないことと映画でしかできないことをすごく考えました。今回の映画は個人的な弔い的な意味合いもあって、とても余白が多いものになると思ったので、主題歌はある程度語り切った方が差が出るのではないかと思い、王道でストレートなものにしました」(甫木元空)

映画に出演しているミュージシャン、前野健太さんとの共作曲「ただで太った人生」も収録されている。

「事前に前野さんと歌詞を交換したりして作っていきました。小学生が友達同士で謎の言葉を言い合っているみたいな感じ、というアイデアが前野さんからあって、どこか民謡のような言い回しの歌詞になりました。だいたい僕は撮影現場で監督だと思われないんですが(笑)、ある通行人のおばあさんに『今まで親のすねを齧ってタダで太ってきたのに偉そうに撮影なんかして!』と怒鳴られ、それをそのままタイトルにしました」(甫木元)

「この曲のデモは、ベランダで揺れながらギターを弾いてるような雰囲気で、正直全然ぐっとこなかったんです(笑)。日本の童謡みたいな雰囲気がありますが、それをアメリカンにしたいなと思いました」(菊池剛)

フォーキーな歌もの中心の甫木元さんのデモが、アレンジを手がける菊池さんの手によって多様な音楽性が咀嚼されたサウンドに一変するところにBialystocksの面白さがある。

「デモはたいてい甫木元の高知の田舎にある家で録音するんですが、その家や自然の音がそのまま入っている。その空気感をできるだけかき消したいと思ってやっています(笑)」(菊池)

「菊池からデモとは全然違うアレンジが返ってくる時が一番楽しみです。歌ものに引っ張られず、四万十川からアメリカになったみたいな飛距離がある(笑)。それは、自分にはない発想なんですよね」(甫木元)

Entame

メジャー1stアルバム『Quicksand』。映画『はだかのゆめ』主題歌「はだかのゆめ」など全10曲収録。【初回限定盤(CD+Blu‐ray)】¥4,950 【通常盤(CD)】¥2,970(IRORI Records/PONY CANYON)

ビアリストックス 右から、甫木元空(Vo)、菊池剛(Key)。2019年、甫木元監督作品、青山真治プロデュースの映画『はるねこ』生演奏上映をきっかけに結成。’21年、1stアルバム『ビアリストックス』リリース。’22年11月、メジャーデビュー。

※『anan』2022年12月14日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・小松香里

(by anan編集部)

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