いしだあゆみ「母はとにかく会話がおもしろい」 戦時中を思い出し涙する父にも一喝!

エンタメ
2022.10.29
人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。10月は、独特の存在感と雰囲気ある演技が素敵な、歌手、俳優・いしだあゆみさん。実は芝居がとても好きないしださん。第5回目は、その理由のお話と、大阪育ちのご家族の、ちょっぴりホロ苦エピソードです。
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芝居のおもしろさは、自分ではない誰かになれること。

私の芸能生活は歌手活動から始まりましたが、徐々にお芝居の仕事もいただくように。最初は確か、15歳のときに出演した『七人の孫』というホームドラマ。撮影中、まるで実家にいるような気がして、すごくホッとしたのを覚えています。まだ子どもだったから、きっと本当は寂しかったんでしょうね。

芝居の仕事って、画面やスクリーンに映っているのは“役柄”なわけで、決して“いしだあゆみ”ではないんですよね。どんな悪いことをしても、それは役柄がやったことだから私に責任はないし、とてもラク。とはいえ多少は自分の解釈も入りますから、「私、この立場になったらこんなことするんだ…」という発見もある。そういう意味で、芝居って本当におもしろいし、奥深い。歌手は、“私自身”が一人で前に出なきゃいけないでしょ。だから苦手(笑)。私ではない私になって表現ができる芝居がとても楽しいし、大好きです。その気持ちはずっと変わりませんね。

笑いとツッコミを忘れない家族に感謝です。

大阪育ちの私たち3姉妹、そして母がとにかく会話がおもしろい。以前母と4人で京都の哲学の道を歩いたとき、みんな揃ってぺちゃくちゃうるさくて、全然哲学どころじゃない。後日一人で再訪して、しっとりと物思いにふけりながら歩き、哲学し直しました(笑)。

昔両親が東京に遊びに来てくれたとき、3人でカラオケに行ったんです。母は次々と歌う一方、父はなかなかマイクを持たない。やっと歌ったのが、戦時中によく歌われた『同期の桜』という曲で、途中で咳き込んだと思ったら、泣き出してしまったんです。戦争のことを思い出したんでしょうね。私もうるっときたんですが、なんと母は「泣くんやったら歌わんとき!」って、マイクを取っちゃった(笑)。それはないでしょ!! って、私の涙も引っ込みました。母はもう亡くなりましたが、姉妹も同じように、悲しいときにも思わず笑っちゃうことを言います。そういう家族でよかったって、しみじみ思います。

いしだあゆみ 歌手、俳優。1948年、長崎県生まれ。’64年に歌手デビュー。’69年『ブルー・ライト・ヨコハマ』が大ヒット。その後、俳優としても活躍。代表作にドラマ『北の国から』、映画『駅 STATION』など。

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※『anan』2022年11月2日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・大貫まりこ ヘア&メイク・福沢京子

(by anan編集部)

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