意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「楽しい日本」です。

個人を生かせる社会。地域活性が鍵になりそう。

石破総理は1月の施政方針演説で、明治時代に謳われた富国強兵の「強い日本」、戦後の企業が主導してきた「豊かな日本」から、これからは一人ひとりが主導する「楽しい日本」を目指していきたいと語りました。これはつまり「ウェルビーイング」の言い換えにあたると思います。働き方改革やジェンダー、障がいのあるなし、経済面などの格差を解消し、個人の多様な幸せの実現を目指すということです。

石破総理が政治家として最も薫陶を受けたのは田中角栄氏です。田中氏は1972年、自民党総裁選を控えた時期に『日本列島改造論』という本を出し、90万部以上のベストセラーになりました。当時、日本は高度経済成長期。仕事を求めて地方から都市部に人が集中し、公害や過疎過密の問題が広がった時期でもありました。工業の再配置と高速道路や新幹線などを全国に巡らせることで、地方分散を進めようという政権公約を掲げたのです。

石破首相は初代地方創生担当大臣を務めた人でもあります。令和版の「日本列島改造」、過疎や高齢化の進む地域の産業活性化に向けて、地方創生予算を倍増させることを打ち出しました。

ただ、地方創生の現場を取材していると、たとえ資金を投入しても、それを活用できる人材が限られており、生かしきれていないのを実感します。建物や道路を造るというようなハード面だけでなく、きちんとしたソフトをつくれる人への投資が「楽しい日本」の実現には必須でしょう。

地方を活性化させるには、地域の中心的な担い手だけでなく、少し離れたところで関係人口を増やす役割をする人や、予算を配分したり投資する人たちも必要です。関わる人たちの輪が広がることが地域の力にもなります。ただ、人材や人の繋がりを育てるにはどうしても時間がかかります。効率重視では地方創生はうまくいきません。

石破政権には、中長期的な地域人材の育成と、地域金融の支援をしっかりとやってほしいと思います。教育格差をなくし、子どもたちが自由にさまざまな経験を得られるような場づくりをすることが、将来的な地方創生、「楽しい日本」の実現に繋がると思います。

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2442号(2025年4月9日発売)より
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No.2442掲載

カラダにいいもの大賞 2025・春

2025年04月09日発売

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我が身を振り返る、内省する意味のある日で、そこから発展して自分に近い人たちとその外にいる人たちとの関係を見つめることまで含みます。異なる視点・意見をもった相手との間で対立したり迎合したりと揺れ動く様子もイメージされますが、いずれにしても自分の考えや気持ちについてしっかりと見つめることが大切です。

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