旧制高校とは、かつて日本にあった高等教育機関。帝国大学に進学するための、男子のみに門戸が開かれたエリートの登竜門なのだが、著者の粥川すずさんにとって旧制高生たちは、推しと呼べる存在だ。

友達作りは勉強より難しい!? エリートたちの青春コメディ。

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「きっかけは私が高校生のときに、全国の旧制高校の写真集を図書館で手に取ったこと。当時の学生たちの芯の通った感じというか、昔の人ならではの一本気な雰囲気にすごく惹かれ、借りては返すことを繰り返していたんです。バンカラな学生の白黒写真を拡大コピーして、部屋に貼っている女子高生でした(笑)」

それから時は過ぎ、子育ても落ち着いてきた頃、一念発起してマンガを描き始めたのだが、投稿作に続き、この初の連載作も大正時代の旧制高校が舞台となっている。

「ストーリーに関しては、かなり悩みました。旧制高校の卒業生は政治家や社長など出世している人が多いのですが、あのときほど純粋に友情を育めた時期はない、と回顧している記述をよく見かけて、友情ものだったら描けるかなと思えたんです」

しかしそこで描かれるのは、一筋縄ではいかない友情だ。旧制高校に晴れて入学した大石征至郎の最大の目標は、終生の友を得ること。そのターゲットになったのが、歴代最年少で文芸新人賞を受賞して、天狗になっている梅原雪光。今までひとりも友達を持ったことがなく、作り方さえ知らない大石君は、段階を踏むことなく、梅原君を強制的に親友認定。梅原君は戸惑うものの、人知れずスランプに陥っていたことから、創作の糧になるかもという少々やましい気持ちで、大石君と友達になることに。

「若くして賞を取った梅原君は、世間知らずでプライドもあるけど、基本的にはいい人。しょうがないなと思いながら、面倒を見ちゃうタイプです。むしろキャラ設定に手こずったのは、大石君。最初は怖いかもしれないけれど、だんだんかわいく見えてくるといいなと思っています」

ちなみに、梅原君を独り占めしたくて嫉妬する大石君の振る舞いは、粥川さんの子どもたちの幼少期を思い出して描いたそう。ほかにも寄宿寮の奇妙な風習や、先輩後輩、同級生との人間関係など、汗くさく(失礼!)コミカルな学園ライフも、粥川さんの腕が鳴るポイントだ。

「バンカラマントを描くのは、本当に楽しいですね! 実はひとつ注文して、作ってもらったんです。それを自分で着ては写真を撮って、絵の参考にしています(笑)」

ふたりは真の友情を育むことができるのか。麗しき大正ロマンの陰に、こんな楽しい世界があったとは!

粥川すず『エリートは學び足りない』1 旧制高校の入寮日、一冊の手帳がきっかけで「友達」になった少年たち。執拗に友情を求める大石君に、振り回されっぱなしの梅原君。真の友情って一体何!? 講談社 715円

かゆかわ・すず マンガ家。2019年「コリン先生随行録」で第76回ちばてつや賞一般部門で入選。本作はウェブ「コミックDAYS」にて連載中。

※『anan』2022年10月12日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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