劇団ひとり(以下、劇):主人公の原案は、『♪ピンポンパンポンプー』の最後に中居さんが描いた謎のキャラです。それを僕が、前回の主人公“のんちゃん”と“びりーくん”と同じように、3Dプリンターでフィギュアを制作したのが始まり。
古市憲寿(以下、古):中居さんが描いた絵では、奥行きとか造形まではわからないから、フィギュアを作るのは大変だったんじゃないですか。
劇:そうなんだよ、造形のデフォルメは難しかったね。なんだかわからない、このなかなか気持ち悪い生き物をどう作ろうか、って(笑)。
古:色はなぜ、緑にしたんですか?
劇:本体を作ったものの、何色にしたらいいかわからなくて。うちの子に「これ何色だと思う?」って聞いたら、上の女の子も下の男の子も「緑」って言うから、緑にしてみたら、あれ? なんかすごく愛着湧いちゃったぞ、って(笑)。
古:ははは(笑)。でも、緑だったから僕もこの物語を思いついたし、もし違う色だったら、また全然違う物語になっていたと思う。
劇:緑の姿を見て、中居さんが、中居くん+ダサい+野菜を組み合わせて“なさいくん”と名付けましたからね。また不思議と、表情とか顔が中居さんに似てるんだよね。フィギュアもそうだけど、絵本に出てくるいろんな表情も、見れば見るほど中居さんに見えてきた(笑)。物語も壮大でいいよね。前回の世界観を引きずらずに、全く別の話にして、割り切ったところもすごいと思う。
古:今回はあまり、具体性のない、神話っぽい話にしたくて。ひとりさんのお子さんが、なさいくんを見て緑だって言ったように、子供の発想って大人の発想を超えてくるんですよね。だからあまり、こういう物語です、って決めつけないで、大人も子供も、読んだ人が自由に受け取って、楽しんでくれたらいいなって。根底には、温暖化などを意識した部分はあるんですが、それも説教がましくなるのは嫌だったんです。だから、SDGsのこととかはなんとなく感じてもらえればいいし、なんなら、子供たちにはわからなくてもいいぐらいに考えていました。
劇:なるほどね。僕が最初にフィギュアにした時、なさいくんは、捨てられている空き缶の中に住んでいるイメージだったの。だから、古市さんがこれを「大陸だ」って言った時は、ぶったまげましたね(笑)。人によってこんなにも、なさいくんのサイズ感は違うのか、って。
古:はははは(笑)。
劇:でも、物語が枠にはまっていなくていいなって思った。そしてやっぱり、ページに仕掛けが施されているところもポイント。この仕掛け、実は中居さんが提案したらしいね。番組では、この絵本にあまり興味ないふりしてるけど、あの人は結構思い入れがあるんですよ。
古:前回よりも今回の方が、思い入れがあるように見えますよね。完成した絵本を愛しそうに眺めていましたから。
劇:やっぱり自分のキャラクターだから、愛情が湧くのかな。これから、どこかの遊園地とコラボして、なさいくんのアトラクションを作っても面白いかもね。メリーゴーラウンドの中に、一体だけ交ぜるとか(笑)。
古:僕はドラえもんのゲストで出てきてほしい。ファッションブランドとコラボしても楽しそうですね。
劇:ジーンズの後ろのポケットに、ちょこっと刺繍したりね。
古:いいですね。
劇:こうなると、早くも次の新たなるキャラも気になるところ。僕が注目しているのは、“なさいくんのともだち”の中で、島本(真衣・テレビ朝日アナウンサー)さんが描いた、靴下と手袋(『パリン グリン ドーン』の中に登場)。
古:シュール。これ、よく描けましたよね。なんの脈絡もない(笑)。
劇:勇気のある絵。でも物語が浮かびそう。もしかしたら、なさいくんの靴下と手袋かもしれないですから。
古:柳澤(秀夫)さんのキャラも、空気読まない感じが気になります。
劇:電波を発してるカエルみたいな。無線が好きだから、その辺から出てきたんでしょうね。それぞれのキャラの癖が強いのは、熟考してないから(笑)。みんな紙とペンだけ渡されて、その場で描いてるから全体的に統一感もないんです。それがまた、この絵本のいいところ。この中から、主人公がまた生まれて、第3弾の絵本が作られたらいいですね。
古:楽しみです。
『パリン グリン ドーン』 体の形を自由に変えながら、みんなの願いを叶えてくれる、緑の不思議な生き物、なさいくん。ずっとひとりだった、なさいくんが見たものとは? マガジンハウス 1760円
げきだんひとり 1977年2月2日生まれ、千葉県出身。お笑い芸人、俳優、作家、映画監督として活躍。バラエティ番組『ゴッドタン』(テレビ東京)に出演中。8月末に書き下ろし小説『浅草ルンタッタ』(幻冬舎)が発売。
ふるいち・のりとし 1985年1月14日生まれ、東京都出身。社会学者、作家。『アスク・ミー・ホワイ』(マガジンハウス)、『ヒノマル』(文藝春秋)ほか多くの著書を出版し、雑誌連載なども数多く担当。
※『anan』2022年8月3日号より。写真・森山将人(TRIVAL) 取材、文・若山あや
(by anan編集部)