今、最も愛される画家の一人であるボテロの名を知らしめたのは1963年のNYで起きたある事件。メトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展示されたとき、ニューヨーク近代美術館ではボテロの《12歳のモナ・リザ》(※今回の出品はなし)を展示。新たなモナ・リザ像の登場は大きなインパクトを与え、以来、西洋美術史上の名画を独自の様式でデフォルメする作品は彼のライフワークに。
〈芸術を通して伝えることができるふくよかさ、包容力、官能性が好きだ。現実はドライだから〉
という自身の言葉が物語るように、ボテロの描くモチーフは人物も花も動物もはち切れそうに膨らんでいる。まるで世界のすべてが「ふくよかであること」を自らに許したかのように。故郷のラテンアメリカ、信仰、サーカスなどをテーマにした作品は、おおらかでユーモラスながら“ふくよかではない”実際の世界への風刺としても響いてくる。今、私たちの現実があまりに痩せ細り、幸せを感じられないのだとしたら。彼の絵筆がふりまく「ふくよかな魔法」にちょっぴりかかってみたくなる。
フェルナンド・ボテロ《モナ・リザの横顔》2020年 油彩/カンヴァス 136×100cm
フェルナンド・ボテロ《守護天使》2015年 油彩/カンヴァス 130×101cm
フェルナンド・ボテロ《象》2007年 油彩/カンヴァス 112×84cm
『ボテロ展 ふくよかな魔法』 Bunkamura ザ・ミュージアム 東京都渋谷区道玄坂2‐24‐1‐B1 東急百貨店本店横 開催中~7月3日(日)10時~18時(金・土曜~21時。入館は各閉館時間の30分前まで) 5/17休 一般1800円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※会期中、すべての土・日・祝日はオンラインによる入館日時予約が必要。公式ウェブサイトを参照。https://www.ntv.co.jp/botero2022/
※『anan』2022年5月18日号より。文・松本あかね
(by anan編集部)