心と身体をラクにする、姿勢矯正+腹式の呼吸法。
1日に2万回以上しているといわれている呼吸。しかし、長引くマスク生活やストレスフルな日々で、呼吸が浅くなっている人が続出中。それを改善できれば、身体が内側から活性化し始め、運気はみるみる好転すると、ZEN呼吸法主宰の椎名由紀さん。
「呼吸は、人間が生きていくために必要不可欠な生命活動です。だから呼吸を正しくするか否かで、人生は大きく変わってきます。もしも今何かしらの不調を抱えている人は、普段無意識に行っている呼吸が原因かもしれません。“浅く速い呼吸”は、酸素を取り込む量が少なくなり、細胞に十分に酸素が行き渡らないため疲れやすくなり、さまざまな不調を招きます。代謝も悪くなるので、太りやすくなり、自律神経を乱す原因に。一方で、“深くゆっくりとした呼吸”は、細胞のすみずみまで酸素が届けられるので、全身の巡りが一気にアップします。さらに副交感神経の働きも高まるので、自律神経のバランスも調います」
そこで深くゆっくりとした呼吸を促すのに役立つのが、禅の教えをベースに、椎名さんがメソッド化した「ZEN呼吸法」。
「実は私は高校生の時から15年間、原因不明の不調に悩まされていました。頭痛、めまい、吐き気、冷え、便秘、慢性疲労など、まさに不調のオンパレード。病院に行っても不定愁訴と診断され、原因は全く分からず、20代の頃は関節が腫れて杖をついて生活するほどでした。しかし31歳の時、江戸時代に出版され、日本初の健康本のベストセラーといわれている『夜船閑話(やせんかんな)』と出合ったんです。そこには臨済宗中興の祖・白隠禅師(はくいんぜんじ)が遺した呼吸法が書かれており、それを実践したら1日でお通じが改善。さらに続けたら、たった2週間で長年抱えていた不調が改善されたんです。禅の世界には、調身、調息、調心からなる『三調』という言葉があります。“姿勢を調えて、呼吸を調えると、自然と心が調う”という意味です。この禅の教えに基づき、『ZEN呼吸法』は、正しい姿勢と腹式呼吸を行うシンプルなメソッドです。行う際は、吸うよりも吐くことを意識しましょう。身体の中に溜め込んだ古いものや不要なものを吐き出さないと、何も吸収できません。吐く息のことを『呼気』といいますが、まさに新しい気を呼び込み、運気を上昇させることができるんです」
呼吸は生きる希望。それをレベルアップすることができれば、心身ともに絶好調な状態でいられ、自ずと良い運気も巡ってくる!
これがZEN呼吸。
POINT 1:鼻呼吸で長く吐いてふんわり吸う。
POINT 2:胸は張らない。
POINT 3:お腹が動くのを感じる。
POINT 4:へそ下は締める。
Image:内臓を包み込むように深い呼吸を続ける。
頭の上にバターのような薬がのっているイメージ。それが少しずつ流れ出し、脳、気管、心臓、肺、胃、腸など、内臓を一つ一つ包み込むように意識しながら呼吸を。内側からポカポカ温まっていく感覚が得られればOK。
まずは基本の姿勢を身につける。
正しい呼吸は、正しい姿勢から。猫背や反り腰など、日頃の生活習慣やクセで、姿勢が乱れている人が急増中! 基本の姿勢を身につければ腹式呼吸も楽に。
START
普段のあなたの呼吸は、腹式or胸式のどちら?
まずは普段行っている呼吸のチェックから。利き手を胸部に、もう片方を下腹部に当てて呼吸をする。胸が大きく動けば胸式、お腹が大きく動けば腹式。「ほとんどの人が胸ばかり動くと思いますが、胸式0.5:腹式9.5が理想の呼吸バランスです」(椎名さん)
LESSON1 仙骨(せんこつ)を立てる
骨盤が傾いて張り出した仙骨を元の位置に戻す。
姿勢矯正は、土台となる骨盤から行う。足を肩幅に開いて立ち、背骨の下にある骨に手のひらを当てる。「これが骨盤の中心にある『仙骨』。ここをお尻とお尻の間にグッと入れ込むように、下の部分を前に押し出しましょう」。すると下腹部がキュッと締まるはず。
LESSON2 肋骨を真っすぐに
出っ張った肋骨を真っすぐにする。
胸を張りすぎて斜めに傾いた肋骨を真っすぐに立てる。「肩を下げて、肋骨の下に指を軽く当ててグッと押し込む。みぞおちのスペースが下がり、柔らかくなると、お腹が筒のようになり、横隔膜が動きやすくなります」。肋骨が元の位置に戻れば、お腹が自然と締まる。
LESSON3 頭頂を押し上げる
頭から大転子まで、身体を一直線に保つ。
頭のてっぺんから耳の付け根、肩、大腿骨の外側の出っ張りの骨「大転子」までが一直線になるように、姿勢を正す。「胸を張るのではなく、肩を下ろしたまま背筋を伸ばす。頭に指先を当て天井に向かって押し上げるようなイメージです」。これで基本姿勢の完成!
ZEN呼吸の要! 腹式呼吸を身体に覚えさせる。
姿勢が調ったら、いよいよ腹式呼吸に挑戦! 腹式呼吸初心者や苦手な人でも気軽にコツがつかめる2つの方法を紹介。毎日続けて、呼吸のリズムを身につけよう。
LESSON1 上半身の余計な力を抜く「カエルのポーズ」
胸や肩、背中の筋肉を激しく使うのが胸式呼吸。だからカエルのポーズで、上半身に余計な力が入らないようにすれば、自ずと腹式呼吸ができるようになる。「和式トイレにしゃがむように、足裏全体を床につけて、膝を大きく広げます。そのまま鼻から深く長く吐いて、腹式呼吸を繰り返しましょう」。背中が丸まらないように注意して。
CHECK
横隔膜を上下に大きく動かして行うのが腹式呼吸。わき腹に手を当てて、息を吸った時にボール状に膨らんでいく感覚があれば、腹式呼吸がしっかりできている証拠!
LESSON2 下腹部が動く感覚をつかむ、「ロウソクの呼吸」
吐き出す息の量で下腹部がどのように動くかを確認することで、腹式呼吸の感覚をつかみやすくなる。段階を踏んで、さまざまな腹式呼吸を練習! 「下腹部に手を当てて、鼻の前に人差し指を立てて、最初は“シュッシュ”と勢いよく、次に細く長く、最後に静かに吐き出します。これを繰り返すことで、腹式呼吸を身体に覚えさせましょう」
◎人差し指をロウソクに見立てて、腹式呼吸を。
最初はロウソクの火を吹き消すように、次にロウソクの火をゆっくり倒すように吐いて、吸って真っすぐに戻す。最後にロウソクの火を動かさないように静かに吐く。イメージすることで、呼吸をコントロールしやすくなる。
椎名由紀さん ZEN呼吸法主宰、呼吸アドバイザー。入門講座、オンラインレッスンも開催。著書に『呼吸美メソッド とってもシンプル、なのにすご~く効く!ZEN呼吸法』(双葉社)など。
トップス¥8,250 パンツ¥12,100(共にヨギー・サンクチュアリ TEL:03・5768・2791)
※『anan』2022年4月13日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・在原みゆ紀 イラスト・利光春華 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)