
毎日の暮らしや将来に必要なお金のこと、きちんと把握してますか? 「わからない」ゆえの不安は、知ることで解消できるはず! “お金初心者”の3人と一緒に、お金の勉強を始めましょう。「お金の教科書」、今回のテーマは「教育訓練給付制度が変わった」です。
教育訓練給付制度が変わった

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)さん 社会保険労務士。グレース・パートナーズ社労士事務所代表。人事労務、社会保険面から企業の経営を支援。女性の雇用問題にも取り組む。著書に『知らないともらえないお金の話』(実業之日本社)など。
貯蓄未知子(ちょちく・みちこ/34歳・会社員) 都内の賃貸で一人暮らし中。毎月の貯蓄は財形2万円+口座に残った分のみ。奨学金は完済。昨年からNISAをスタート。
リスキリング支援を国が手厚くサポートする理由
未知子:先日、IT企業に勤める同級生に会ったら、新しく立ち上げた部署でDX、ChatGPT、AIなど最新テクノロジーに関する講師をしていると聞いてびっくり! 最先端の分野だから需要があるそうで、会社も積極的にその分野のリスキリングをサポートしてくれたとか。いい会社ですよね~。うらやましい。
佐佐木:未知子さん、教育訓練給付制度はご存じですか?
未知子:仕事のスキルアップや資格取得にまつわる費用の一部を国が補助してくれる制度ですよね。雇用保険でカバーされていると、以前雇用保険をおさらいしたときに学びました。
佐佐木:実は去年、教育訓練給付金の給付率について、一部見直しが行われました。
未知子:初めて聞きます。
佐佐木:今回、拡充されたのは再就職や早期のキャリア形成のための「特定一般教育訓練」と、中長期的なキャリア形成を後押しする「専門実践教育訓練」で、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、給付率が引き上げられました。
未知子:私たちにとっては喜ばしいことですけど、どうしてまた?
佐佐木:理由は大きく2つあります。ひとつは将来性のある業種に労働移動させたいという狙いがあるからでしょう。
未知子:AIが普及することで、余剰となる人手を別の領域で活かしたい、というわけですね。求められる業種というのは、冒頭で話したような最先端のテクノロジー分野などでしょうか。
佐佐木:その通りです。もうひとつは、労働者のスキル向上によってキャリアアップの機会を広げ、社会全体の生産性を高める狙いから、リスキリング支援を充実させているんです。
未知子:例えば?
佐佐木:この4月からは自己都合で退職した人への失業給付の給付制限が見直され、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練などを受講すれば、失業給付の給付制限が解除され、すぐにもらえるようになりました。リスキリングによって、働き方も多様な選択肢が増えていくでしょう。
未知子:東京都も選択的週休3日制を取り入れていたり、働きやすい社会を作るための“本気”を確かに感じますね。
佐佐木:技術革新やビジネスモデルの変化に対応していくのはもちろん、自分に合った働き方を選択するためにも、リスキリングの重要性はますます高まりそうです。教育訓練給付制度を上手に活用してみてくださいね。
教育訓練給付制度とは
働く人々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、教育訓練経費の一部が支給される制度。
教育訓練給付金の給付率

・一般教育訓練給付金
【対象】雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象。
【本体の給付率】受講費用の20%〈上限10万円〉
【資格取得などした場合】―
【5%以上賃金上昇につながった場合】―
【最大給付率】受講費用の20%〈上限10万円〉
【対象となる主な資格・試験】Webクリエイター、TOEIC、英検、医療事務技能審査試験、インテリアコーディネーター、ソムリエ呼称資格認定試験など
・特定一般教育訓練給付金
【対象】特に労働者の速やかな再就職および早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象。
【本体の給付率】受講費用の40%〈上限20万円〉
【資格取得などした場合】10%
【5%以上賃金上昇につながった場合】―
【最大給付率】受講費用の50%〈上限25万円〉
【対象となる主な資格・試験】宅地建物取引士資格試験、パン製造技能検定試験、ファイナンシャルプランニング技能検定試験、普通自動車第二種免許、気象予報士試験など
・専門実践教育訓練給付金
【対象】特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象。
【本体の給付率】受講費用の50%〈年間上限40万円〉
【資格取得などした場合】20%
【5%以上賃金上昇につながった場合】10%
【最大給付率】受講費用の80%〈年間上限64万円〉
【対象となる主な資格・試験】キャリアコンサルタント、調理師、栄養士、キャリア形成促進プログラム、専門職学位など
※2024年10月以降に開講する講座の場合
イラスト・小迎裕美子 取材、文・一寸木芳枝
anan2444号(2025年4月23日発売)より