わかり合えなくてもおしゃべりは楽しい。これぞ女性の生きる道。
「ずっと推しがいるような状態で生きてきたので、いる前提の行動が当たり前だと思っていました。なので、担当編集エイチの反応が意外すぎて。オタクと非オタクの邂逅が結実したマンガですね」
本書の準主役でありながら、〈おっかけ要素もオタク要素も持ち合わせていない〉エイチさん。ゆえに竹内さんと「お互いの言うことはわかるけれど、実際のところはまるでわかっていない」という噛み合わなさを生み出し、笑いと共感を生む。
「とりあえずネタがたまるまで、5時間でも6時間でも話をしましたね。打ち合わせとか話し合いというより、おしゃべりに近かった。少年アヤさんが(本作の)書評で『だれがなんと言おうと、わたしたちのおしゃべりには価値がある』と書いてくれたのはうれしかったですね」
鋭い考察が詰まっているが、とりわけ第4話「あつまれ! 農民の沼」には首肯すること多し。
「推しを推したいがために、語学や創作などいろいろなスキルや能力を高めていく。エイチが『すごい』と褒めてくれたけど、私は言われるまでわかっていませんでした。エイチの発言がヒントになって、沼の民には農民タイプと狩猟民族がいるというのにも気づきました(笑)」
また、大書しておきたいのが、本書は金言の宝庫だという点。たとえば、あなたなんてまだ若い、と言われたときも〈こちとら生きてきた中で今日が一番年とってんだよ!!〉と一刀両断。
「年上の友人に年齢マウントされたときの感情を、素直に書きました」
その他、親との関係、結婚観、将来への不安など、女性にとって関心の高いトピックがいっぱい。
「エイチとのやりとりで、関係性を築いていくのにわかり合う必要はないんだなと強く感じました。むしろわかり合えないもの同士だからこそ会話が盛り上がるという経験を、お裾分けしたかった。何でもオープンにする必要はないけれど、この本が『こんなことも話していいのかな?』と思う人の気持ちのアクセルになってくれたらいいですね」
竹内佐千子『沼の中で不惑を迎えます。輝くな! アラフォーおっかけレズビアン!』 実家暮らしの独身アラフォー女性が、人生に惑いまくるさまを描いたコミックエッセイ。ちょっとシュールで哲学的な最終話も、含蓄のある展開にしみじみ。集英社 1540円 ©竹内佐千子/集英社
たけうち・さちこ 漫画家。東京都出身。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。コミックエッセイなど著書多数。http://takeuchisachiko.jp/
※『anan』2021年12月1日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)