肝心なのは乱れる前。早めの対処を心がけて。
なんだかだるくてやる気が出ない…。誰しもそんな日はあると思うけど、それは自律神経が乱れているサインかも。
「その状態が長く続いたり、心身ともに調子がいい時の自分と違う感覚を持ったりするなら、注意が必要です。自律神経は、こうした日々の様子から整っているか否かを推察できます」(順天堂大学医学部教授・小林弘幸さん)
また、普段は整っていたとしても、ストレスがかかるなど、ちょっとしたことで乱れてしまうことも。
「仕事のプレッシャーといった心理的なことはもとより、窮屈な服を着ているだけでもそれがストレスになり、自律神経が乱れてしまう。自律神経は一度乱れると3~4時間は元に戻らず不調が続くので、そうならないためにもトリガーとなる事象に早めに対処することが大切です」
そこで、日々の生活で心がけたい自律神経を整えるための習慣を紹介。さらに、乱れてしまった時の対処法も併せて、自律神経を健やかに。
日常に潜む自律神経が乱れる原因
環境による悪影響
リモートワークなど、これまでとは違う環境でのやりにくさや、単純に天気が悪いだけでも環境の悪さに含まれる。日中でも副交感神経が優位になり、やる気が出ない状態に。
余裕のない生活
遅刻しそうになって慌てて支度をする、期限ギリギリまで仕事をため込んで焦って作業をするなど、余裕のない生活は心理的なプレッシャーとなり、自律神経に悪影響。
ストレスがかかる
気に障ることを言われたり、捜し物が見つからなかったり…。ストレスのトリガーは日常の中にゴロゴロと。それにより交感神経が高まり、自律神経のバランスが崩れてしまう。
自律神経を整えるための基本アクション
心身ともに負担になっていることを極力減らす
捜し物が見つからずにイライラすることが多いなら、すぐに見つけられるように机やカバンを整理するなど、自分がストレスを感じやすい要因と向き合い、解消しておくこと。自律神経は、いかに乱れさせないかが大事。
メンタルでなんとかしようとせず、体を動かす
自律神経が乱れて落ち込みがちな時は、とりあえず動くこと。心と体はつながっており、軽いストレッチでも体を動かすと無意識のうちに気分が上向きに。フィジカルへの刺激で自律神経が整えられることも覚えておこう。
できることからコツコツと。自律神経を整える10の習慣。
自律神経を整える基本アクションを押さえつつ、ここからは日常で心がけておきたい具体例。無理してたくさんやろうとするとむしろストレスになるので、できる範囲で取り入れよう。
1、日常の中で「これっていいな」と感じられる瞬間をつくる。
ネガティブ思考に囚われていると、自律神経は乱れがちに。
「その状態から切り替える意味でも、散歩の途中に心惹かれる風景を探すなどイキイキできる瞬間をつくってほしいんです。それを撮影して毎日SNSにあげるようにすれば、散歩に出ようという動機にもなるはず。対象は『いいな』と思えば食べ物でも何でもOK」
2、モノの置き場所を決める。
スマホなど頻繁に使うモノが、どこに置いたのかわからなくなるという人も多いのでは。
「捜している間はイライラすると思いますが、それが自律神経を乱す要因に。そんなことが日に何度も起きないよう、例えばスマホなら外出時は右のポケットに入れる、家ではダイニングテーブルに置くなど、定位置を決めましょう」
3、野菜は“硬い部分”を率先して食べる。
「具体的に言うと、にんじんやかぼちゃなど野菜の皮やキャベツの芯。また、根菜もおすすめです。栄養素が豊富なうえ、よく噛むことで表情筋が緩み、表情が柔らかに。つくり笑顔でも表情が和らぐと、自律神経が整うという実験結果があります。また、噛むことに集中するため、マインドフルネスの効果も期待可能です」
4、窮屈な服や靴を選ばない。
「ボトムスのウエストがキツい、靴のヒールが高いなど、衣服による締め付けで“辛い”と感じると交感神経が上がり、想像以上に自律神経が乱れます。ただ、締め付けられていても、それを不快に感じていなければ問題ありません。むしろ締まった服を着ることでモチベーションが上がるという人は、それで大丈夫です」
5、天気の悪い日はお気に入りの服を着る。
「天気が悪い日、とくに雨の日は気分がどんよりしがちな人も多いはず。それは、雨の日には副交感神経が上がり、交感神経が下がる、いわば“休息モード”になりやすいからです。そんな時のやる気アップに有効なのが、お気に入りの服を着ること。気分が上がると交感神経が優位になり、自律神経は活動モードに」
6、認められない場合は“部分的”に諦める。
「認められずに悩んでいる時、交感神経と副交感神経は、共にダウンしていると考えられます。がんばろうとしても難しいし、思い悩むことがストレスとなり自律神経を乱す原因に。そこで必要なのが、“部分的に”諦めること。『この分野で認められないなら、別の分野でがんばろう』など、一方を諦め、他方に目を向けましょう」
7、人の悪口は言わない。
「気に入らない人の悪口を言うと、その場はスッキリするかもしれませんが、あとあと自分が嫌な人間に思えてしまうこともあるのでは。結局それがストレスに。だからといって無理に褒めるのもストレスなので、一番いいのは『悪口は言わない』と決めること。人から苦手な相手の評価を求められた時は、『わからない』と答えるのが良策」
8、1杯の水で体をリセット。
“やる気が出ない”という休息モードの時の、交感神経アップ法。
「自律神経は腸の働きと密接につながっています。また、腸は少しの刺激でも反応しやすく、水を1杯飲むことで自律神経の働きが良くなり、交感神経がアップ。体が活動モードへ。水分なら水以外にお茶などでもOK。体に行き渡るようなイメージで飲みましょう」
9、「寒い」と思う前に上着を羽織っておく。
自律神経にとって温度差は大敵。
「暑い屋外から急に寒い室内に入るなど激しい温度差に、自律神経は非常に弱いんです。『寒い』『暑い』と思った時点ですでに自律神経は乱れているので、早めの対策が必要となります。例えばクーラーが効いた部屋に長時間いる場合、最初は寒くなくても予め上着を1枚羽織るなどしておきましょう」
10、デスクワークの合間にスクワット10回。
「血流は自律神経によってコントロールされています。自律神経が乱れると血流が滞るし、その逆も然り。つまり、長時間のデスクワークで動かずにいると血流が滞り、自律神経が乱れてしまうのです。その予防としておすすめしたいのが、スクワット。デスクワークのすき間時間にゆっくり10回。1日4セットを目安に行いましょう」
小林弘幸さん 順天堂大学医学部教授。自律神経の第一人者としてアスリートなどへのコンディショニング向上指導に関わる。著書に『整える習慣』(日本経済新聞出版)など。
※『anan』2021年9月8日号より。イラスト・沼田光太郎 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)