感覚と思考の間を大切にしています。
「その頃は心のモヤモヤを抱えて、窮屈さを感じていました。でも歌を通じてだったら言いづらいことも言える気がして。自分で曲を書いてモヤモヤをちょっと外に出してあげることが救いになりました」
今年4月にアルバム『odds and ends』をリリースし、6月にはZepp Tokyoにて初のワンマンライブを成功させた。にしなさん自身が手がける楽曲は些細な心の動きを鮮やかに捉える等身大の歌詞が特徴的。例えば好きな人が吸う煙草に嫉妬する気持ちを〈手持ち無沙汰ならば/両の手を私が握って拘束する〉と表現する。
「『ヘビースモーク』という曲は音楽の先輩たちと一緒にごはんを食べていた時に、煙草を吸われる方が多くて『彼女ができたらやめるのにな』と言ってるのを聞いて『いや、やめないでしょ?』と思いながら(笑)、書き始めました。頭で考えて策略的に曲を書きすぎても良いものにならないと思うし、でも感情だけで書いてもいろんな人に伝わってはいかないと思うので、いつも感覚と思考の間を大切にするようにしています」
フォーキーにもソウルフルにも、ジャンルは自由自在。全く力んでないように見えるのにどこまでも突き抜ける声は最大の武器かも。
「歌を届ける時は、自分の体の後ろに地球を感じながらフワーッと歌うようなイメージをしています。どうイメージして歌うかで声って変わるんですよ、そんなこともいろんなカバー曲を歌って配信していた時に研究して、人体の不思議を感じました」
普段は趣味のカメラで写真を撮ったり、ビーズアクセサリーを手作りしたり「本当に普通の子です」と笑う。これからも「興味を形にしたい」というワクワクを音楽でも素直に発揮してくれそうだ。
「ステージの上ではちゃんと曲が生きる、カッコよく歌える自分でいたいなと思うんですけど。これからも変わらずに等身大の自分でいられたらいいな」
にしな 1998年7月25日生まれ、東京都出身。弾き語りで活動を始め、Spotifyがその年に注目する次世代アーティスト応援プログラム「RADAR:Early Noise 2021」に選出。今年6月にPARKGOLFがプロデュースを手がけた新曲「U+(ユーアンド)」を配信。
※『anan』2021年8月4日号より。写真・小林真梨子 ヘア&メイク・筑波成美 取材、文・上野三樹
(by anan編集部)