『野田ともうします。』『幸子、生きてます』など、地味系女子の日常を独特のギャグセンスで描くフィクションもいいけれど、『中年女子画報』のような体験エッセイでも高い人気を博す柘植文さん。 本書『ひとりぶらりごはん』は後者に属し、柘植さんならではの目線でリポートする「旅と食」の風景が楽しい一冊だ。

いつだって「旅とごはん」は最高だ。真似したくなる、行きたくなる!

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「ひとりごはんの何がいいかといえば、それこそひとりなので、なんでも自由にできること。行きたいとこに行って、食べたいものを選んで。『やっぱりこっちがいいや』と、そのときどきの気分でなんでも変えられるのが楽しいですね」

取材やヤボ用ついでに、あるいはふらりと出かけた先で、著者が食べるものは、松本市で馬刺し、名古屋市で味噌煮込みうどんなど、各地の名物も多い。だが、函館ですき焼きランチ、仙台で餃子のように、「なんとなくいま食べたいもの」だったり、「お店を探してうろうろしているうちに適当に入ったお店」だったり。ゆるい冒険が、むしろ味。

「札幌でジンギスカン、盛岡でわんこそば…、ひとりで囲みづらい名物もあるので、そこはがんばらないです(笑)。お店も、わりとマンガの中でもうろうろ探していますが、自分なりにひとりでも入りやすそうなところを選んでいます。カウンターがあるのはひとり客歓迎の一つの基準。テーブルしかない店だと、盛りが多すぎて失敗したことも」

また、柘植さんが求める味のこだわりに共感する人も多いだろう。たとえば「ハムカツ」は薄いのが好み。

「もともと安っぽいものだし、そこが魅力だと思うんですね。ハムを厚くして高級感を出されても、とまどってしまう。昭和感まんまの味を求めている人間もいるとわかってほしいですね。一方で、『マンガは面白いけれど、自分とは食の好みが全然合わない』というレビューを見かけたことがあります。それはそれで、味覚って人それぞれというのが実感できて面白いなあと」

グルメマンガの楽しみでもある料理の“扉絵”にも注目。モノクロなのにめちゃくちゃ美味しそう!

「撮ってきた写真をトレースして描いています。案外、ご飯と麺類が難しいです。味の感想やそのとき感じたことなどは、忘れないようにいろいろメモします」

それが書き文字部分のユーモラスなツッコミに活かされている。

「だんだん丸くなって、だいぶ毒は抜けてきました(笑)」

グルメ旅欲を刺激される一冊だ。

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『ひとりぶらりごはん』 食欲をそそる各地の名物やB級グルメが満載。コミック28編とミニコラム4編を収録。コンビニコミックス『ひとりごはん』(隔月刊)で連載中。少年画報社 913円 ©柘植文/少年画報社

※『anan』2021年7月14日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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