フランス・シャンパーニュ地方にあるランス美術館は、ルーヴル美術館に次いでカミーユ・コローの作品を多く所蔵するなど、19世紀の風景画が充実していることで有名。本展『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』では、このランス美術館のコレクションから厳選した名作を通して、印象派の中核ともいうべきフランス近代風景画の歴史をたどる。

18世紀以前の西洋美術において、風景画は崇高な神話や歴史画の背景にすぎなかった。けれど18世紀末から19世紀初頭にかけて、その風景画に注目が集まり始める。この動きは革命後の社会の変化、新興ブルジョワジーの台頭、産業革命と都市化による田園風景への憧れなど、当時新しく生まれた価値観を受けて引き起こされたもので、画家らはアトリエを出て屋外で風景をスケッチし始めた。そんな風景画家の中でも特に注目を集めたのは「バルビゾン派」と呼ばれる画家たち。彼らはパリ郊外にあるフォンテーヌブローの森に隣接するバルビゾン村に滞在し、大作を生み出してゆく。その写実的な作風がモネやルノワール、シスレーなど19世紀後半に活躍する印象派の画家たちに受け継がれていったのだ。

こうしたフランス印象派の成り立ちを余すところなく紹介したのが本展。近代画家の先駆者であるミシャロンやベルタンに始まり、コローやクールベ、ブーダン、さらに印象派のモネやルノワール、ピサロまで、19世紀フランス絵画の巨匠の作品が一堂に会する。会場では時系列に章が展開し、関連する資料も数多く登場。例えばチューブ式絵の具や、エッチング(腐食銅版画)の発明が風景画の発展を加速させたことなど、文明が美術に大きく影響を及ぼしている様子がよくわかる。

いま話題となっているデジタルアートも、過去の名作も、技術の発展が新しい芸術を生んでいるという事実は変わらない。心が洗われるような異国の美しい風景画とともに、そんな普遍性にも気づかせてくれる、発見のある内容だ。

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コンスタン・トロワイヨン 《ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道》 1856年 Inv. 907.19.234 ランス美術館 ©MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 《湖畔の木々の下のふたりの姉妹》 1865‐70年 Inv.887.3.82 ランス美術館 ©MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

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クロード・モネ 《べリールの岩礁》 1886年 Inv. 907.19.191 ランス美術館 ©MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《風景》 1890年頃 Inv. 949.1.61 ランス美術館 ©MBA Reims 2019/Photo : C.DevleeschauWer

『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』 SOMPO美術館 東京都新宿区西新宿1‐26‐1 6月25日(金)~9月12日(日) 10時~18時(入館は17時半まで) 月曜休(8/9は開館) 一般1500円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

※『anan』2021年6月30日号より。取材、文・山田貴美子

(by anan編集部)

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