悪気なく発してしまう失礼な言葉が問題に。
何気ないひと言が、相手の気分を害してしまう…。その原因となるほとんどが“失礼”に値することだという。
「たとえば初対面からなれなれしかったり、相手の話を途中で遮ったり。ただ、言葉に対する価値観は人それぞれ。何が失礼とされるのかという基本を押さえつつ、相手の反応を見ながら会話をすることが大切です」(メンタルアップマネージャ・大野萌子さん)
ここでは会話をピリつかせてしまう原因と対策など、良好な関係を築くための会話術を紹介。
「自分が陥りがちなパターンに気づくことが改善への第一歩。そのうえで、話す前に考える間を持つことが失言を避けるコツです」(コラムニスト・石原壮一郎さん)
ピリつかせないための心得
その1、会話は勝負ではない。
「相手と意見が食い違うこともありますが、自分の正しさを押しつけようとすると相手は不快に。会話は勝負ではなく、円滑な関係を築く手段だと認識しましょう」(石原さん)
その2、お互いに誤解はするという前提で。
「日常会話は聞き流してしまうことも多分にあります。だから誤解が生じるのは仕方がないと思ったほうがいい。意思疎通ができているか、会話の途中で時折確認を」(大野さん)
その3、話すより聞くことに集中する。
「人は自分が話したいことに意識が向きがち。でも、お互いそればかりでは会話がちぐはぐに。まずは相手の話を聞いて受け止めたうえで会話することを心がけて」(石原さん)
その4、ピリつかせたと気づいたら、すぐに謝る。
「表情など相手の様子を見ていれば、不快にさせたかどうかがわかるはず。気づいたら、すぐに謝って。言い訳は相手の反発心をあおるだけなので、逆効果です」(大野さん)
会話をピリつかせてしまう原因
会話をピリつかせてしまうのは“失礼”な発言だけれど、それはどういうことなのかと具体的に探るといくつかの事象が浮き彫りに。思い当たることがある人は、今すぐ改めて!
1、距離感がつかめない
いきなりタメ口など、空気を読まないのはNG。
人との距離の詰め方には注意。
「自分では親しみを込めているつもりでも、初対面でタメ口などいきなりなれなれしくするのは危険。たとえ相手が年下だったとしても、急な距離の詰め方をぶしつけだと捉える人がなかにはいるからです。人はどんな間柄でも、相手から尊重されたいものだと心得て」(大野さん)
また、親しい関係でも、適度な距離感は大切に。
「距離を縮めれば、相手と親しく心地いい関係になれると思いがちですが、それは逆。家族や恋人であっても、近すぎると支配関係になってしまう。ある程度の距離は保ちましょう」
例
Aさん:「初めまして○○です」
Bさん:BAD「よろしくね!」/GOOD「よろしくお願いします」
仕事やプライベート、また相手の年齢に関係なく、とにかく初対面では敬語を使うのが正攻法。また、会話の内容にも距離感を意識して。「たとえば『どこに住んでいるの?』『出身校は?』などプライバシーに関わる質問は慎重に。相手が何を失礼とするかわからないような関係性のうちは、避けたほうが安心です」(石原さん)
2、語彙力がない
ワンパターンの敬語や誤用にピリッと。
敬語を使っていればもちろん失礼はないけれど、それがワンパターンだと話は別。
「『させていただきます』に顕著ですが、同じ敬語を多用すると、言葉の意味が軽く聞こえて丁寧な印象が薄れてしまう。語彙を増やすには、人の言葉で好印象を持った表現を記憶し、自分でも使うようにすると身につきます」(大野さん)
語彙力が不足すると、誤用で場がピリつくケースも。
「『敷居が高い』など慣用句で陥りがちです。正しい意味を理解せず、間違えて使って相手を怒らせてしまうことも。不慣れな言葉は要注意」(石原さん)
例
BAD:「このお店は敷居が高いね」
GOOD:「このお店はとても素敵ですね」
「敷居が高い」は、不義理なことをしてしまい、相手の家に行きにくいという意味だが、“立派すぎて行きにくい”という意味だと勘違いして使う人が多い慣用句。「このように間違えやすかったり、聞きなれなかったりする言葉は、誤解の種になりかねないので気をつけて。わかりやすい言い方に置き換える気遣いも大切です」(石原さん)
3、上から決めつけ
別に求められていないのに、相手をジャッジ。
相手の発言に対して、勝手に決めつけるような言い方はNG。
「たとえば『きのう頭痛がして』と言われた時、相手を思いやる気持ちで『大変だったね』と言いたくなるかもしれませんが、その人は大変だと言っているわけではないので、ともすると“他人事?”とカチンときてしまうかも。その話に対して自分の感想を言いたい場合は、一度『頭が痛かったんだ』と相手の言葉を繰り返すこと。すると相手は受け止めてもらえたと感じ、次に『それは大変だったね』と言われても、むしろその言葉が心地よく響くはず。とても丁寧な印象に」(大野さん)
例
Aさん:「きのう美容室行ったんだ」
Bさん:BAD「その髪型いいじゃん」/GOOD「美容室行ったんだ。その髪型すてきだね」
上から決めつけのトラップは、上記のようなついやってしまいそうな会話にも潜みがち。「相手に求められていれば問題ありませんが、そういうわけではないのに、いいか悪いかをいきなりジャッジするのは唐突すぎ。たとえポジティブな感想でも、『美容室行ったんだ』と相手の言葉を繰り返した後に言うようにしましょう」(大野さん)
4、キャッチボールミス
話の流れを急に変えるのはマナー違反。
相手の話を遮って、自分の話をしてしまう、なんて身に覚えがある人も多いのでは。
「これは私のクライアントからの相談でも失礼な話としてよく聞くケース。これをされた人は、自分がないがしろにされた感じがしますし、腹立たしくもなります。会話はラリーではなくキャッチボール。相手の話は受け止めましょう」(大野さん)
「一つの会話をそういつまでも続けるわけにはいかないので、どこかで話を変えるのはいいと思いますが、目安としては二言三言くらい応酬があってから。それなら相手も気を悪くしないはずです」(石原さん)
例
Aさん:「きのう見たドラマで泣いちゃって…」
Bさん:BAD「お腹すいたね、何か食べに行かない?」/GOOD「どんなストーリーだったの? 何か食べながら聞かせてもらえる?」
相手はドラマの話をしようとしているのに、「お腹すいたね、何か食べに行かない?」と自分が興味のある話題でバッサリ。「その前に、『どんな物語だった?』など寄り添う気持ちを示すだけでも心証はよくなります。話を変える時に『それよりさあ』なんて言うのは、相手の話がどうでもいいようなニュアンスで、もっての外です」(石原さん)
大野萌子さん メンタルアップマネージャ。企業や一般向けにメンタル講習を行う。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)など。
石原壮一郎さん コラムニスト。大人が身につけたいコミュニケーション術を著書やメディアで発信。近著は『超実用 好感度UPの言い方・伝え方』(ワン・パブリッシング)。
※『anan』2021年4月21日号より。イラスト・丸ゐまん丸 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)