幅広いジャンルの本と、じっくりと対話を重ねて。
「2017年の『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』をはじめジェンダーに関する翻訳書の出版が相次ぎ、自然と品揃えも増えてきました。その後、’19年頃からジェンダー本の提案をしたいと考えるように。当店は女性エッセイと、社会学や社会問題の棚が隣接する珍しい棚構成になっており、両方の読者の懸け橋となることを意識しています」と話すのは、代官山 蔦屋書店で人文コンシェルジュを務める宮台由美子さん。「最近はかなり分厚い本もよく売れています。翻訳本やジェンダーの最新の言説に触れるようなものが求められている一方で、雑誌『エトセトラ』(エトセトラブックス)をはじめとする等身大の言葉が書かれた熱い本、雑誌も好評」と意識の高まりを感じているそう。「本は読者と1対1で向き合うメディアなので、自分の実体験と照らし合わせて考え、自分の言葉に落とし込む時間を作ることができる。また、いつでもどこでも連れていけるのも魅力。お気に入りの一冊をぜひ携えてください」
新しいジェンダーについて、考えるきっかけに。
『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 訳・くぼたのぞみ
ナイジェリア出身の作家による、全米が称賛したTEDスピーチを翻訳。フェミニズムを理解するのに最適な一冊。「『フェミニスト』って聞くとちょっと構えてしまう人にこそ読んでもらいたい! 言葉をリフレッシュすることで、堂々とジェンダーについて考え、フェミニストと名乗ることへの意識を刷新してくれる最初の一歩になります」1320円(河出書房新社)
力強い言葉で、すべての女性の背中を押す。
『わたしはオオカミ 仲間と手をつなぎ、やりたいことをやり、なりたい自分になる』
アビー・ワンバック 訳・寺尾まち子
元女子サッカー米国代表選手による名門女子大学の卒業式祝辞から生まれた本。オオカミの群れのごとく連帯し、新しい世界を築くためのメッセージを綴る。「“こうあるべき”とされてきた古い慣習は、どんな立場の女性でも身に覚えがあるはず。仲間と手を繋ぎ、やりたいことをやり、なりたい自分になり、新しいルールを作るための方法がこの一冊に」1540円(海と月社)
あらゆるデータから、ジェンダー問題に迫る!
『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』
キャロライン・クリアド=ペレス 訳・神崎朗子
公衆トイレやオフィスなど、日常に潜んでいるデータにおけるジェンダー・ギャップを明らかに。「膨大なデータが記された本書は科学的に、いかに女性が見えない存在とされてきたのかを解き明かす。『女だから仕方がない』と思ったあなた個人の経験が、自分だけではなく、世界中の女性たちと繋がっていることを確認できます」2970円(河出書房新社)
百人が百様に装い生きる素晴らしさを描く。
『百女百様 ~街で見かけた女性たち』
はらだ有彩
東京、大阪、ハワイやパリ…街で出会った自由な装いの女性たちをイラストと文章で描く。「私たちは多かれ少なかれ他者からの視線、本当は思い込みにすぎない社会的規範に縛られながら、日々装っています。本書で描かれた女性たちは多様で、それを見つめる視線のなんと優しくて豊かなことか。ジェンダー的視座を知るきっかけに」1650円(内外出版社)
※『anan』2021年4月7日号より。写真・安田光優
(by anan編集部)