「浮世絵というと風景画や美人画が有名ですが、現代の雑誌や写真集と同じように、かっこいい役者や有名人を目当てに女性がこぞって買い求めた一面もありました」と学芸員の赤木美智さん。「和装男子―江戸の粋と色気」では浮世絵に描かれたメンズファッションに注目、当時の憧れの男性像に迫る。
橋の上で行き交う若い男女を描いた「橋上の行会」では、お洒落な若衆に町娘たちが熱視線。そのファッションは紫の縦縞の羽織に黒の縦縞の小袖、つまりストライプ×ストライプという難易度の高いコーディネートだ。また、「最後の浮世絵師」といわれる月岡芳年が描くのは、実在した江戸時代初期の侠客。奇抜な花模様が映える黒地の生地は、見る角度によって市松模様が浮かび上がる、版画ならではの技法に注目したい。そのほか七代目市川團十郎が舞台で用いて大流行したかまわぬ文様など現代に伝わるものも。
「度々、奢侈禁止令が出される中、装うことへの情熱を密かに楽しんでいた江戸っ子の心意気をぜひ感じてみてください」
一. 重ね着上手のお洒落上級生。
勝川春潮「橋上の行会」
二. 浮かび上がる市松模様が粋。
月岡芳年「月百姿 名月や来て見よがしのひたい際 深見自休」
三. かまわぬ文様、大流行。
豊原国周「三十六花艸の内 風車草 御所の五郎蔵 市川小団治」
『和装男子-江戸の粋と色気』 太田記念美術館 東京都渋谷区神宮前1-10-10 開催中~1月28日(木)10時半~17時半(入館は~17時) 月曜(1/11は開館)、1/12休 一般800円 TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)
※『anan』2021年1月13日号より。文・松本あかね
(by anan編集部)