メディアを縦横無尽に行き来する今のエンタメを担う著者の仕事術。
「カッコつけた感じにならないよう、そして、業界が違う人でも読みやすいように気をつけました。今は、いろいろなプラットフォームで仕事ができるようになっていると感じていますが、これは僕の業界に限らないことで、たとえばnoteを使えば誰でも文章を発信できますよね。テレビには、約70年続くビジネスモデルの中で作る面白さがある。一方、失敗しても自分の労力と時間が犠牲になるだけで誰からも怒られないYouTubeには、挑戦ができる面白さがあります。才能を世に届けたいと思った人のお手伝いができたり、新しいことができたりした瞬間は楽しいですね」
本書を読んだ人から、意外な言葉をかけられたことも。
「師匠である作家の方や、一緒に仕事をしたいと思った芸人さんに自ら声をかけたことに対して『行動力があるね』と言われたのですが、そういう見方をするんだと思いました」
現在29歳。作り手として大事にしているのは価値観のアップデート。
「SNSでは、小さな発言のミスや価値観のズレに対する指摘がダイレクトに届きます。“人を傷つけないお笑い”と言いますが、その中で面白い言葉を取捨選択できるのが、僕や一緒に仕事をしている第7世代の芸人なのかなと。ゲームをしてNetflixを見ているだけでは、#MeTooや、LGBTQ+に対する理解など、そういうことに気づかず過ごしていたかもしれません。SNSは価値観をアップデートするためにも大事なツールです」
放送作家という仕事に特別なこだわりはないという白武さんの目標は。
「世界中のお店に置かれるボードゲームやNetflix作品など、長く愛されるものを作りたいですね。高校生の時、あまりクラスに馴染めず家でDVDを見て楽しんでいたので、僕と同じような人にとってのコンテンツの一滴になれれば、楽しくない時間の中での楽しみを作っていけたらいいなと思っています」
『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』 作家として活躍する著者の仕事論や今に至るまでの人生、コロナ禍におけるエンタメについての考察までが綴られた一冊。扶桑社 1400円
しらたけ・ときお 放送作家。1990年12月17日生まれ、京都府出身。テレビ番組『霜降りミキXIT』(TBS)や、「ジュニア小籔フットのYouTube」など数々の芸人チャンネルに参加。
※『anan』2020年10月28日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・重信 綾
(by anan編集部)