岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「和歌」です。
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NHKよるドラ『いいね!光源氏くん』の主題歌で「ニニニニニ」という曲を書かせていただきました。源氏物語といえば宇治、和歌といえば宇治なので、宇治出身のミュージシャンとしてはこの上なくうれしいお仕事でした。Aメロでは、紫式部の「世に知らぬ 心地こそすれ 有明の 月の行くゑを 空にまがへて」そして「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に雲隠れにし 夜半の月かな」という有名な2つの短歌を使わせていただきました。カルタで百人一首を読み上げるときと同じような抑揚をつけて、メロディラインを考えて、それもまた楽しかったです。長い歴史をもつ紫式部さんからしても、自分の和歌にメロディをつけて一つの曲としてリリースされるというのは、今までなかった経験だと思います。こんなデブのシンガーソングライターが勝手に売り出しているという事実、どう思ってはるんやろか。でも、地元の先輩だし、笑って許してくれるはずです。

「ニニニニニ」というタイトルは曲を聴いていただければ、どういう意味かわかると思います。古の人たちは、5・7・5・7・7という31音に乗せて、愛の気持ちを伝えていた。和歌とは、ラブレターのようなものであり、短いラブソングでもあります。でも、現代の若者にとって、31文字に自分の気持ちを込めるのって難しいこと。もう単純に「好き」の2文字だけで十分。それがつまり、字足らずの「ニニニニニ」です。サビでは「好きー好きー好きー好きー好きー」と「好き」を連呼しようと思いついたとき、めっちゃええのができたと思いました。のちに、いしわたり淳治さんが、この歌詞のコンセプトをめっちゃ褒めてくださっていてうれしかった。日本を代表する作詞家の方に、天才と言っていただいたので、あ、俺、天才なんだなって素直に思いました。ありがとうございます。

時代が違えば「愛している」の表現もがらりと変わる。和歌について考えているときには、現代のラブソングの名手たちが和歌を作ったらどんな想いを31音に込めるのだろうと考えたりもしました。逆に、紫式部がいま生きていたとしたら、どんなラブソングを作るんやろうとも思います。時代ごとに、歌の表現ってルールや枠組みがある。その中で、それぞれが、ずっと変わらない普遍的な“愛”を伝えあっているのって面白いことだな、とあらためて思いました。

おかざきたいいく スマホに振り切った演出が話題の『よなよなラボ』(NHK総合 毎月1回土曜24:05~)が好評放送中。8/10(月)21:00~、BSテレ東特番『社歌で日本を元気に!シャカリズム』に出演。

※『anan』2020年8月12日-19日合併号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・村田真弓 文・梅原加奈

(by anan編集部)

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