“寝汗びっちょり”は要注意 漢方的に注意すべき“汗のかき方”とは?

2020.6.10
中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「汗っかき」です。
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今年も汗が気になる季節がやってきました。体温調節のために必要不可欠なものですが、一方で中医学では、必要以上に汗をかくような場合は、体のどこかに不調があると捉えます。

漢方的に注意するべき汗のかき方は、大きく分けて2つあります。ひとつめは「自汗(じかん)」といって、だらだらと汗が止まらなくなる状態。暑いところから涼しい場所に移ってもすぐに汗が引かず、いつまでも出続ける…などが典型的な症状です。これは「衛気(えき)」と呼ばれる、体表にある気の活動が低下していることが原因。衛気は体を守るバリアのような働きをしていて、毛穴を閉じたり開いたりする役目も担っています。この衛気が働かないと汗腺が開いたままになり、体液がどんどん出ていってしまう。同時に外からの邪気も入りやすくなるため、風邪をひきやすくなったり、花粉症がひどくなるなどの不調も起こり得ます。

衛気を養うには、体全体の「気」を底上げするのが早道。少しでも早めに眠るようにして、まずは体をしっかり休めましょう。その上で気を補う食材であるしいたけなどのきのこ類、さばやいわしといった青魚を。今が旬のさくらんぼやさやいんげんのほか、甘酒にも「補気(ほき)」の作用があります。

実は寝汗も要注意。体の潤い不足を疑って。

もうひとつ、不調の兆候として挙げられるのが「盗汗(とうかん)」。睡眠中にかく汗のことで、いわゆる寝汗を指します。夏は寝汗をかきやすいシーズンですが、室温調節をしてもびっしょりと汗をかくようなら要注意です。

盗汗が生じる原因は、「陰虚(いんきょ)」。これまでも何度か出てきましたが、潤いが不足している状態です。熱を抑える陰が足りないために熱が体内にこもってしまい、過剰な発汗につながる…というのがその仕組み。汗のトラブルとともにほてりやのぼせがある場合は、この陰虚を疑います。陰を補うには、いかや、ほたての貝柱、かきなどの貝類のほか、アスパラガスやおくらがおすすめ。ふだんは体を冷やすために控えたいトマトやきゅうりといった夏野菜や、ヨーグルトも、盗汗対策には良いでしょう。

汗を大量にかくことは、「水分代謝がいい」など健康なイメージがあるようですが、必ずしもそうとは限りません。汗とともに他の不調にも悩んでいるなら、どうぞ早めの養生を。

さくらい・だいすけ 漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。https://yurukampo.jp/

※『anan』2020年6月17日号より。イラスト・原田桃子 文・新田草子

(by anan編集部)