頑張っている人も、頑張れない人も自分を大事にしてますか?
「職場でいつも笑っているキヨコ先輩のことが気になりだすのですが、他者の言動を見て『あの人のああいうところがつらいよね』という言葉が出てくるときって、自分自身が疲れているサインなんですよね」
そして休めばラクになれるはずだったのに、現実は違っていた。
「休むかどうか悩んでいるときよりも、休んでからのほうが100倍しんどいんです。なぜかというと、休む前は悩んでいる理由が他者だったけど、休んでからはそれが全部自分になってしまうから」
エミと同じ状態に陥ったとき、おおがさんは書店に行って自分の気持ちを代弁しているような本を探したそう。しかしうつから抜け出すためのノウハウ本はたくさんあっても、当事者として共感できる本がなかった。古傷をえぐるように本作を描いたのは、そういう切実な思いがあったからだ。ただしおおがさんの経験とエミの大きな違いは、エミはまだ心の病の入り口、つまり引き返せる場所にとどまっているということ。
「私は壊れかけていることに気づきながら、もっと苦しくなって周りの人に『見るからに無理だ』と思われる状態になるまで、自分を痛めつけながら耐えてしまいました。そこまでいってやっと休めたのですが、そうなる前が引き返せるタイミングだったと今は思うんです。同じような気持ちの人がいることがわかったら、少しは心が軽くなるはずと思うから、この本を手に取る気力がまだある人には、壊れる前に気づいてほしい」
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エミの予備軍やもっと手前にいる人にとっても、なぐさめず、元気づけたりもせず、ただ寄り添うような本作は、読む薬になるだろう。
「自分を大事にするってよく言いますけど、頑張ったごほうびやアフターケアが多いですよね。でも頑張らないでいいし、ごほうびの一歩手前で休んでもいい。それだって自分を大事にすることだと思うんです」
おおがきなこ マンガ家、イラストレーター。著書に『今日のてんちょと。』『いとしのオカメ』『いとしのギー』。noteにてエッセイ「やさしさのおきばしょ」を執筆中。
『エミ34歳、休職させていただきます。』 笑うことに疲れて会社に行けなくなった倉橋エミ。仕事を休み、自己嫌悪にかられながらも、ゆっくりと自分の心を取り戻していく大きな迷子の物語。主婦と生活社 1200円 ©2020 おおがきなこ/主婦と生活社
※『anan』2020年5月13日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)