いま、世界で憧れの眼差しを浴びているのは、自分の個性を堂々と表現する“カッコいい”女性たち。その象徴ともいえるアリアナ・グランデのライブレポをお届けします。
ariana grande

ロサンゼルスのステイプルズ・センターに到着すると、オーバーサイズのスウェット&ニーハイブーツの女の子たちが、会場の外でプレイするDJの音楽に合わせ踊っている。入場を待つ列の中には、ツアーグッズを共に身につけた親子や、男性の姿も多く見られる。そう、彼らは“アリアネーター”。アリアナ・グランデの熱狂的なファンたちだ。

スクリーンの真ん中に半球体のスクリーンが重なり、天井からも巨大な球体スクリーンが吊り下げられたシンプルなステージ。そこに映し出される皆既日食のような映像とともに、アルバム『スウィートナー』のアカペラのイントロが会場に響き渡る。アリアナ・グランデの代表的な女性賛歌ともいえる、「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」を歌いながら、ダンサーを従えたアリアナ本人が登場すると、アリアネーターたちの歓喜の渦で会場の空気が揺れる。

ワインレッドのブラトップのセットアップに、パフスリーブのボレロ、そして彼女の象徴ともいえるサイハイブーツ姿で凛と立ち、「ようこそ、スウィートナーツアーへ!」と叫ぶと、最新アルバム『thank u, next』から「バッド・アイデア」を、重厚なバンドサウンドをバックに歌い踊る。「ブレイク・アップ・ウィズ・ユア・ガールフレンド、アイム・ボアード」では花道を移動しながら、その歌詞さながら男性ダンサーを翻弄するダンスで客席を煽るアリアナ。時折見せる小悪魔的な表情は、女性から見てもドキッとさせられる不思議な魅力を持っている。

ピンクのシフォンが揺れる女性らしいセットアップに衣装チェンジし、しっとりと歌い上げるのは「R.E.M.」。アルバム『デンジャラス・ウーマン』収録のダンサブルなナンバー「ビー・オールライト」は、マドンナを彷彿させるヴォーギングを取り入れたダンスがクールな一曲だ。

ツアータイトルでもある「スウィートナー」が始まると、歓声は会場が一つになるほどの大合唱に。テンポの良い曲が続き、「I want it, I got it…この曲知ってる?」と彼女が呟くと、会場が沸く。世界中の誰もが知る名曲「マイ・フェイバリット・シングス」と、HIP HOPを大胆に取り入れた「7リングス」だ。ピンクのアメ車に跨り「欲しいものがあれば、自分のお金で手に入れるわ」と、涼しげな表情で歌うアリアナ。

車とともにステージから姿を消し、次はシックなパープルのパンツルックで登場。いろいろなスタイルのアリアナを堪能できるのもライブの醍醐味だ。「ラヴ・ミー・ハーダー」「ブリージン」など、世界中の女性の共感を得たエモーショナルな曲を歌い上げる姿は圧巻。デビュー当時、そのキュートなルックスからアイドル的な存在でもあったアリアナ。しかし今、多くのファンの心を揺さぶる歌声は、彼女が乗り越えてきた経験や努力の賜物であり、それを昇華させたアーティストとしての余裕さえ感じる。宇宙空間のような壮大な映像をバックに歌うのは、「NASA」。曲の世界観を表現する、映像技術を駆使した演出も、今回のライブの見どころのひとつだ。

オレンジのスパンコールのミニドレスにダウンジャケットというカジュアルなスタイルを身に纏い、新旧アルバムからヒット曲が続く。バンドサウンドを前面に出したドラマティックなアレンジの「デンジャラス・ウーマン」から、EDM全開の「ブレイク・フリー」へ。会場のボルテージが絶頂に達したその時、「今日は楽しんでくれた? パワーをくれて、一緒に歌って踊ってくれて、本当にありがとう! みんな愛してるわ!」と叫ぶ声に、これが唯一のMCであることに初めて気付くほど、彼女のステージに魅了されていた。

最後の曲は、2年前イギリスのマンチェスター公演で起こったテロ事件の苦しみを乗り越え「もう流す涙は残ってない。元気を出さなきゃ」と前向きな言葉で綴る「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」。

収まらない興奮の中、チェック柄のツインピースでステージに現れたアリアナがアンコールで歌うのは、元カレにメンションした歌詞が話題となった「thank u, next」。アルバム『スウィートナー』が、キャリア史上最高の称賛を受ける中、元恋人マック・ミラーの死やピート・デヴィッドソンとの婚約破棄など、次々と彼女を襲った辛い出来事。それでも彼女は自身の持つ天性の武器=音楽で、真っ向から向き合う強さを手に入れたようだ。満面の笑顔で、軽快にステップを踏みながら「ありがとう、さあ、次!」と、花道を駆け抜けるアリアナ・グランデの姿は、強く、たくましく、そして美しかった。

Tour Title:Sweetener World Tour Date:2019.05.06 Place:STAPLES Center
『Sweetener』と『thank u, next』の2作のアルバムを軸にしたツアー。今年3月にスタートし、アメリカとカナダの40か所以上で開催。ヨーロッパでの追加公演も発表された。2020年の大統領選に向けて若年層の投票率をアップさせるため、Sweetener World Tourアメリカ編の全公演で、NPO団体HeadCountと組んだ有権者登録ブースを設置している。

Ariana Grande 歌手。1993年6月26日生まれ。アメリカ合衆国フロリダ州出身。8歳で北米プロアイスホッケーリーグで国歌斉唱をしたほどの歌唱力の持ち主。デビューアルバムがいきなり全米アルバムチャート1位を獲得し、以降も様々な記録を打ち立てる。“アリ”の愛称で親しまれ、大の親日家としても有名。

ariana grande

『thank u, next‐deluxe edition』 最新アルバム『thank u, next』に、ボーナス・トラック2曲とDVDを付けた日本独自企画盤(オリジナルジャケット仕様)。アリアナの26歳の誕生日である6月26日に発売された。¥3,100(ユニバーサル ミュージック)

※『anan』2019年7月10日号より。写真・Kevin Mazur 文・本田珠里

(by anan編集部)

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