――『アウトレイジ』は、毎回誰かが衝撃的な方法で殺されるのが、ある種観どころになっています。今回の予告編でも、とてつもないシーンが公開されていました。どれも残酷なのに、どこかにたけしさんの作るコントに通じる笑いがあるような気が…。
北野:そうだね。2作目のときの、加瀬亮くんが、バッティングセンターで椅子に固定された状態で野球のボールを延々投げつけられて死ぬのなんて、おいら実際、昔『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』でやったやつだからね。ていうか、この映画に出てくる殺され方、だいたいみんなコントでやってんじゃない?(笑)
――描き方が、おもしろいか、シリアスかってことですか?
北野:命にかかわらないレベルで「痛い!」で終わればコントで、本当に死んでしまえば…って、死んだって描けば、殺人になるってこと。違いはそれだけなんだよ。あのね、お笑いって悪魔のようなもので、シリアスな部分には、必ず笑いが忍び寄るんだよ。分かりやすいところで言うと、例えば結婚式でブーケトスでスカートが脱げちゃったり、ケーキが落っこちちゃったり。あるいは葬式で、足がしびれて倒れたり、とか。厳粛さと笑いって、隣り合わせなんだ。
――場が厳粛であればあるほど、実は笑いが忍び寄っている?
北野:うん。それは死に対しても同じことで、ヤクザ映画だったら、「てめぇ、殺すぞ、この野郎!」って銃口を突きつけて、引き金を引いたら、カチャッ、カチャッ。「あれ? 弾がない!」って、完全にコントだよね。笑いは常に、緊迫感とか緊張感を壊してやろうと狙ってるわけだ。
――ということは、殺人場面で笑うのは不謹慎? と思っていたんですが、笑っていいんですね。
北野:うん、いいのいいの。
――ちなみに、北野組というのは厳粛な雰囲気なんですか?
北野:うちの場合はね、俺はすごく穏やかなんだけど、スタッフが怖い(笑)。なかにはすごい迫力ある人もいるから、初めて来た役者さんとか、震え上がるみたい。で、俺が「いいよいいよ、適当で」って場を和ませたりするんだけど、なかなか緊張はほぐれない(笑)。
――そういえば、『アウトレイジ』は顔のアップが多いので、顔の緊迫感も半端ないです。
北野:実は、この映画に出てる人ってみんな、他の作品ではヤクザ役をやっていない人ばっかり。そういう役者がヤクザを演じて、どアップで凄むからこそ怖いし、インパクトがあるんじゃない? 俺が描いているのはいわゆる現代ヤクザだから、わかりやすいヤクザ顔より、普通の顔のほうがいいわけ。今回で言うと、西田敏行さんなんて、『釣りバカ日誌』で見せている顔と全然違うじゃない。だからおもしろい。でも、もちろん顔だけで選んでるわけじゃないよ? 雰囲気も大事。岸部一徳さんの場合は、とあるセリフを言わせたいっていうその1点で、出てもらったの。結果、すごく良かった。
――ネタバレになるので言えませんが、落差に驚きました。
北野:へへっ、そうでしょ。
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