ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。シンガーソングライターの吉澤嘉代子さんを迎えての対談をお届けします。

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    第1回「人生はドラクエ? 魂を売る覚悟」

    ゆっきゅん:日比谷野外音楽堂での「夢で会えたってしょうがないでショー」、本当にすばらしかったです!

    吉澤嘉代子:ありがとうございます、うれしい。

    ゆっきゅん:吉澤さんのライブを観て、こんな楽しい祭りがいつかできたらいいなと感じました。

    吉澤嘉代子:私もあれは人生のピークかな、ぐらいに思いました(笑)。

    ゆっきゅん:そんなことなさすぎる(笑)。

    吉澤嘉代子:それぐらい楽しかったです。

    ゆっきゅん:あれは準備も楽しそう。

    吉澤嘉代子:本当に楽しかった! 文化祭みたいで、前日もみんな会社に集まって、私の曲を爆音で流しながら作業していたと聞きました。

    ゆっきゅん:すごく仲のいいチームですね。私はたくさんの人の力を借りますが、どうしても一人でやってる感じもあるので、チームが羨ましくて。人探しって大変ですよね。

    吉澤嘉代子:大ごとですよね。本当に人生ってドラクエだなって思います。

    ゆっきゅん:やったことない!

    吉澤嘉代子:私もゲームは親しんでいないんですけど、ドラクエだけはやっていて。特に『

    』が好き。主人公が……これネタバレ?

    ゆっきゅん:大丈夫です、私やらないし、新作映画とかじゃないから。

    吉澤嘉代子:主人公が勇者じゃないんですよ。だから勇者の証しの剣を抜こうとしても抜けない。普通の人なんです。そこが自分と重なるなと思います。私はさも「ミュージシャン」と同じ類いのような顔をしてステージに立っているけど、全然違うレベルにいて、何もできないのにまぎれているだけだから。

    ゆっきゅん:吉澤さん、全然そんなことないのに、そんな認識だなんて……。でも、私も同じ気持ちです。本当にできることが少なくて、曲も作れないから、プロの仕事にただ支えてもらってます。その状況を自分では「天才サーの姫」と呼んでいるんですけど。

    吉澤嘉代子:私は、“なんちゃって業のはったり商売”という感じのまま10年やってきてしまいました。

    ゆっきゅん:ねぇ、10年経ったらそれはもう本物ですよ!

    吉澤嘉代子:そうかな? でも以前に、友人から「あなたは魂を売っている」って言われたことがあって。たしかに、その自覚は私にもあるんです。何ができるかっていうと、魂を売ること。だから、何の商売かと言われたら私は「魂屋」なのかもしれません。

    ゆっきゅん:魂を差し出す人が芸術家ですもんね。私は「魂売り」でもあるけど、「どうしようもなさ売り」でもあり、「怠惰売り」でもあるから……。

    吉澤嘉代子:商売人ですね(笑)。

    第2回「初めて買ったヤイコのCDと割れたジュエルケース」

    吉澤嘉代子:私、思春期の頃から思考が何も変わっていないんですよ。

    ゆっきゅん:その頃はどんな子だったんですか? って、今と変わってないのか。じゃあどんな曲を聴いていました? DIVA遍歴を知りたいです。

    吉澤嘉代子:私もゆっきゅんさんと同じで、子どもの頃から女性歌手が好きでした。だからこの商売をしているんですけど。

    ゆっきゅん:最高! 私もそうです。でもどれだけ女性歌手の影響を受けてたとしても、私の場合は声がオクターブ違うから、その影響が曲からは一瞬バレないみたいなところはあるんですよね。

    吉澤嘉代子:影響受けますよね。私の場合は、小学生の時にラジオから流れてきた矢井田瞳さんの曲を聴いて、「なんだこれは!」って思って。それで初めてCDを予約して、お小遣いで買いましたね。イオンの中にあるCDショップです。買った時、興奮しすぎて転んでしまって、CDケースが割れちゃったんですよ。

    ゆっきゅん:ああ、“ジュエルケース”が無惨にも……。それは悲しい。

    吉澤嘉代子:そう。すごい割れ方だったけど、CDはなんとか聴けました。「I'm here saying nothing」というシングル曲です。その時お店にあったフライヤーは今でも持ってます。紙も今見たら豪華で。

    ゆっきゅん:CDが売れていた時代だ。

    吉澤嘉代子:それから宇多田ヒカルさん、椎名林檎さん、aikoさんとかいろいろと聴いて。

    ゆっきゅん:1998年デビュー組のなかで、あゆが欠けてる……。でも、私が補完するんで大丈夫です。吉澤さんの分まで聴いておきました。

    吉澤嘉代子:ありがとうございます。当時からいろんな曲を聴いて、それぞれが歌う切なさを子どもながらに感じてました。日記を書くのが一番好きな時間だったんですけど、その時は音楽を大きめに流していたんです。それで泣きながら日記を書くのがすごく好きでした。

    ゆっきゅん:え、すごい! 私は聴いてただけで何も書いてなかったです。当時聴いていた歌手たちは、今も好きですか?

    吉澤嘉代子:好きですね。

    ゆっきゅん:変わらずいい新曲を出し続けてくれるの、嬉しいですよね! 長年活動し続けたら、もうヒット曲だけでライブのセトリだって埋まるじゃないですか。でも、ファンや世界が新曲を楽しみにし続けている。これ、すごいことですよね。目指すべき姿な気がします。

    吉澤嘉代子:新曲がちゃんとその人にとっての「新しさ」があって、ずっと現役なところがすごいですよね。

    第3回「まだ曲になっていないタイトル候補の言葉たち」

    ゆっきゅん:いつから創作活動を始めたんですか?

    吉澤嘉代子:幼い頃から短い歌とかは作っていたんです。でもちゃんとポップスとして成り立つような一曲を完成させたのは16歳になってから。

    ゆっきゅん:それは誰かに聴かせるためのものだったんですか?

    吉澤嘉代子:うん、高校に入ったら軽音楽部でバンドをやりたいと思っていて、実際に組みました。最初は人の曲もやっていたけど、自分の言葉で作りたいと思って、それから。

    ゆっきゅん:いいな。私は吹奏楽部で低音楽器を吹いていました。その頃も日記は書いていましたか?

    吉澤嘉代子:はい。上部に空白が多いノートに書いていたんですけど、そういえばそこに日記のタイトルをつけていましたね。今も曲作りになるとタイトルから作ることが多いんですけど、それは日記のやり方を踏襲しているからかも。

    ゆっきゅん:タイトルってめちゃくちゃ大事ですよね。そしてタイトル先行なのもすごいですね。

    吉澤嘉代子:基本的にそうですね。なんか、「言葉を所有したい」という欲があるんです。タイトルがあると、勝手に私のものみたいな気持ちになるんです。

    ゆっきゅん:じゃあ、タイトルだけ存在している曲とかありますか?

    吉澤嘉代子:めちゃあります、タイトルストックが。

    ゆっきゅん:私、思いついたタイトルを書き込むLINEがあるんです。一人だけのグループをメモ代わりにしていて。楽しくないですか?

    吉澤嘉代子:楽しいです。1個ずつ打ち明け合おうよ!

    ゆっきゅん:お願いします! 私は……「付き合ってないけど別れたくない」。これ、絶対サビ頭の歌詞にもなると思うんですけど、なんか「頭の中の人生が進む速度が速い子」の歌です。

    吉澤嘉代子:すごく聴きたいです。

    ゆっきゅん:書きたいです。って、早く書けって話だけど。

    吉澤嘉代子:思ってても書けないものですよね。温める必要もあって。

    ゆっきゅん:そうなんですよ。

    吉澤嘉代子:私は……「氷の奥歯」。

    ゆっきゅん:タイトルだけでもう吉澤さんの曲だ。

    吉澤嘉代子:お店でお水を飲んでると、たまに奥歯みたいな溶け方をした氷ってあるじゃないですか。それが素敵だなと思って。でもどんな曲にしたらいいかわからない。

    ゆっきゅん:でもちゃんとタイトルですね。すごい。

    吉澤嘉代子:おもしろいですね。そしてお互い、よく差し出しましたね。

    ゆっきゅん:いつか世に出してください! 私も出します!

    第4回「曲の主人公のことをどれだけ想像できるか」

    ゆっきゅん:レコーディング当日まで歌詞を直すことってあります?

    吉澤嘉代子:だいたいそうです。

    ゆっきゅん:わかります。

    吉澤嘉代子:でも、なんだかその姿勢、プロフェッショナルじゃないなとは思っているんですよ。

    ゆっきゅん:プロフェッショナルですよ!

    吉澤嘉代子:本当のプロフェッショナルは期日までにクライアントに見せたもので完成させるべきだなとは思っているんです。

    ゆっきゅん:でもどんな有名歌手もギリギリまでやってますよ。

    吉澤嘉代子:そういう武勇伝、聞くと救われますね(笑)。ゆっきゅんさんは歌詞を直す時、何を指針にしていますか?

    ゆっきゅん:私は、曲の主人公への正確さみたいな感じですかね。ずっと考えていると、その人のことがわかってくるから。見えている景色が明瞭になってくるというか。どんどん正確に修正していく感じです。

    吉澤嘉代子:私も曲の主人公のことは考えて書きますね。楽曲提供の場合は歌い手のことだったりするんですけど。生身のモデルがいない場合や、自分の中から生み出さなきゃいけない場合は、主人公像のイメージを絵で描いたりします。

    ゆっきゅん:え、すごい!

    吉澤嘉代子:私しかわからないような絵ですけど、情景とか、その人のビジュアルとかを描いてます。

    ゆっきゅん:吉澤さんの歌を聴いていると、万華鏡を覗いているような気持ちがするんですよね。まなざしの筒が、宇宙みたいな感じ。

    吉澤嘉代子:すごく嬉しいです。私もゆっきゅんさんの歌詞はすごいなって思いますよ。視点もそうだし、そこに切実さがある。

    ゆっきゅん:自分が感情移入できる主人公の歌を書いているからかもしれないです。あと作詞ってその日の気分による偶然の産物みたいなものもあるじゃないですか。それとはどう向き合っていますか? 私はその日雨が降っていたから書けた、みたいなものを残したくなってしまうんですけど。

    吉澤嘉代子:たぶんそういうものが人々の心を打つんですけど、私はミリ単位で気持ちを測って、平均値を狙いたくなっちゃいます。完璧主義なのかな。いびつなものを正してカッコつけたくなっちゃう。

    ゆっきゅん:私は雑誌みたいなタイプで、吉澤さんは小説みたいな感じがする。今だから聴く、とかではなくて、いつ聴いてもいい普遍性というか、石碑みたいな。

    吉澤嘉代子:そうかもしれない。こういう差っておもしろいね。

    ゆっきゅん:プロとプロの対談すぎる!

    吉澤嘉代子

    Profile

    よしざわ・かよこ 1990年生まれ、埼玉県出身。2014年、メジャーデビュー。5月に配信リリースした「メモリー」は「第75回全国植樹祭」の大会テーマソングに。10月より全国6か所のライブハウスを巡る「歌う星ツアー」を開催予定。

    ゆっきゅん

    Profile

    1995年生まれ、岡山県出身。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」を開始。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が発売中。作詞家としてアイドルへの詞提供も行う。

    写真・鳥羽田幹太 文・綿貫大介

    anan2455号(2025年7月16日発売)、anan2456号(2025年7月23日発売)、anan2457号(2025年7月30日発売)anan2458号(2025年8月6日発売)より
    Check!

    No.2455掲載

    夏の推し旅 2025

    2025年07月16日発売

    海、美食、動物、かき氷、アートなど「大好き」なもの=“推し”を追い求める癒しの旅を案内する特集。夏といえばの沖縄は、那覇&本島西海岸のエリア別解説のほか、久米島、西表島という2つの離島もフィーチャー。他に「大人の夏休み」として、埼玉・長瀞の涼を求めて日帰り旅、栃木・那須で自然に触れる“大人の林間学校”、岡山で今が旬のフルーツとアートを楽しむ旅、北海道・トマムで雄大な自然を満喫する旅など、この夏おすすめの旅先をご紹介します。 ※ anan2455号POPver.(通常版)と、MODEver.(特装版)は表紙・掲載グラビア(Mrs. GREEN APPLE)・バックカバー・価格が異なり、その他の内容は同一です。

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