耽美とギャグを融合させた『ラシャーヌ!』や『パタリロ!』、はたまた復刊して話題をさらった『翔んで埼玉』など、少女マンガ史に燦然と輝く作品を描き続けてきた魔夜峰央さん。その画業45周年を記念し、魔夜峰央ワールドの原点ともいえる美しき悪魔「アスタロト」が活躍する作品が分厚い2冊にまとまった。『アスタロト・クロニクル』は、ファン心を躍らせる魅惑の豪華本だ。
魔夜峰央

著者自身、アスタロトはとても思い入れのあるキャラクターだそう。

「デビュー作の『魔界』(第I巻に収録)から登場するんですが、実は投稿時代から、黒髪、流し目のあのビジュアルはできあがっていました。マンガを描いていると、ときどき自分で作っている気がしなくて、“紙の上にすでにあるものを、自分がただ見えるようにしているだけ”と感じることがあるのですが、アスタロトの造形はまさにそれ。初めから決まっていたように思うんです」

魔界の四天王のひとり、アスタロト公爵は、宿敵ベールゼブブと対立し、魔界を二分する大戦争に。悪魔や邪神、ときに人間たちとも交わり、多彩な顔を見せていく。実際、アスタロトの行動原理は、ときに残酷、ときに優しい。その一方で、さらりとギャグも飛ばすような、つかみどころのなさに惹かれてしまう。

「アスタロトのふるまいが、人間から見て、温情ある行動に見えたり、血も涙もないと感じたりすることもあるでしょう。けれど、人の感情や思惑、正義や倫理さえも彼にとってはどうでもよくて、やりたいようにやっている。すべて彼の中にある美学に準じているだけなんですよね」

魔夜峰央

特筆すべきは、見る者をすべて虜にしてしまう、アスタロトの悪魔的(悪魔だけれど)なまでの美しさ。

「基本的に、ホワイトは使わないんです。白く抜きたいところは、その周囲を黒く塗りつぶしていく手法で描いています。黒髪は、ベタを何度も重ね塗っていくうちに、あの漆黒ができあがる。実際、紙から盛り上がっているほどでした。黒髪の長いラインをひと息に描くのが理想なのですが、肺活量が落ちたいま、描こうと思っても描けるかどうか(笑)」

そんな超絶技巧に見とれながら、じっくり味わいたい。

『アスタロト・クロニクル』Iにはデビュー作から「vol.1~12」、IIには「外伝」他を収録。ロングインタビュー、単行本未収録のアートワーク等ボーナストラックも多数。小学館クリエイティブ 各1900円 (C)魔夜峰央/小学館クリエイティブ

まや・みねお マンガ家。1973年、『デラックスマーガレット』でデビュー。'78 年に『花とゆめ』で「パタリロ!」を連載開始。同作は現在、Webで継続中。

※『anan』2017年6月7日号より。写真・水野昭子 インタビュー、文・三浦天紗子 

(by anan編集部)


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