スポットワークって?
佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)さん 社会保険労務士。グレース・パートナーズ社労士事務所代表。人事労務、社会保険面から企業の経営を支援。女性の雇用問題にも取り組む。著書に『知らないともらえないお金の話』(実業之日本社)など。
散財好美(さんざい・よしみ/31歳・フリーランス) 5年交際中の彼と同棲中。貯めたい意思はありつつも、推し活とちょこちょこ散財癖あり。閑散期に副収入を得たいとスポットワークに興味津々。

人手不足の今、急拡大するスポットワーク市場。
好美:先日、大学時代の友人に会ったら、「子供がまだ小さいからスポットワークでスキマ時間に働いている」と話していました。最近耳にする機会も増えましたけど、そもそもスポットワークって何ですか?
佐佐木:一般に「短時間・単発の就労を内容とする雇用契約で働くこと」というのが定義とされています。ただし、広義には雇用契約を結ばない単発的な仕事も含むなど、一概に線引きできない部分もあります。というのも、スポットワークの登録者数は現在約3200万人ともいわれ、ここ数年で爆発的に増えていますが、法整備がそのスピードに追いついていないのが現状なんですね。
好美:なるほど。でもスポットワークの代表的な仕事といえば、デリバリー配達員が頭に浮かびますけど。
佐佐木:好美さん、ちょっと待ってください。フードデリバリーなどの配達員の仕事は、基本的にスポットワークではありませんよ。
好美:え!? 違うんですか?
佐佐木:デリバリー配達員の多くは、業務委託。ワーカーは企業の“配達パートナー”としてその仕事を請け負い、完了したらその成果に報酬が支払われます。企業側は彼らと直接的な雇用関係がないため、勤務時間を管理する必要も労災保険に加入する必要もありません。
好美:あぁ、だから配達中の事故の補償について、たまにニュースになるわけですね。
佐佐木:その通りです。一方のスポットワークは最初にお話しした通り、企業と雇用関係にあります。つまり、企業は勤務時間や業務内容を指示し、ワーカーはそれに従うことになります。
好美:そっか。スポットワークは働く内容と時間は自分で選べても、現場に行けば指示内容を仰いで働くわけで、自由裁量の部分はないですもんね。
佐佐木:はい。業務委託であるデリバリー配達員は1日何件請け負うか、どんな交通手段でどんな経路を選ぶか、すべては自分次第。そこが大きく違うんです。
好美:では、スポットワークの代表的な仕事ってなんですか?
佐佐木:接客業や軽作業が多いですね。コンビニ、飲食店、ホテル、今はどこも人手不足ですから、その需要は拡大しています。
好美:企業と働く側、どちらにとっても、スポットワークは上手に使えばウィンウィンの関係に思えるけれど、メリット、デメリットはあるんでしょうか?
佐佐木:それは次回、詳しくお話ししましょう。
今どきスポットワーク事情
・スポットワーク経験者
10代~20代…16.2%、30代…9.4%、40代…7.0%
経験者の職業は、約半数が正社員で、目的は副収入。また、年代別で比較すると若い世代ほど利用経験が多く、10~20代では利用を検討している潜在層を含めると約3割に(※1)。
・一度のスポットワークで働く時間
5時間未満…66.4%(※1)。
ボリュームゾーンは「3時間以上5時間未満」で37.4%。利用頻度は「1週間に1日程度」が18.2%で最多。半日未満のスキマ時間を上手に利用している様子がうかがえる※1。
・スポットワークに応募する際、重視する点
仕事の内容…50.4%、未経験でも働けること…43.2%、勤務場所が自宅から近いこと…40.0%
報酬や自由度の高さより、作業内容が決め手に。また、“気軽に・身軽に参加できるかどうか”も、重要なポイント。その点、面接・履歴書不要のスポットワークは柔軟性も魅力※1。
・スポットワーカーの平均賃金
1255円※2
三大都市圏における通常のアルバイト平均賃金1219円※3よりも、やや高い結果に。スポットワークの職種の中で賃金が高いのは、運送・ドライバーで1247円※2。
※1 株式会社ネオマーケティングによる「スポットワークに関する調査」より
※2 出典:単発バイト求人サイト「ショットワークス」2024年12月度
※3 2024年12月度リクルート「アルバイト・パート募集時平均時給調査」
イラスト・小迎裕美子 取材、文・一寸木芳枝
anan2440号(2025年3月26日発売)より