時空を超えて“北斎さん”とシンクロする、特別な時間でした。

「音や風や振動だけでなく、よく見ると絵の中の人や景色も動いているんです。ものすごい臨場感に包まれて、北斎の世界にタイムスリップしたような気持ちになりました…!」
絵を描くのが大好きで、アートが常に身近にある池田さん。今回、この展示を通して天才絵師の力をあらためて実感したという。
「特にあの波の絵『神奈川沖浪裏』の表現はすごいです。現代では写真と映像の両方があるから描きやすいけど、江戸時代に生きた北斎さんは自分の目一つでその情景をインプットして、作品にアウトプットしていたんですよね。そのシンプルな手法であのいきいきとした世界を作り出せるなんて…! でも私も絵は実物を見て描きたい派なので、もし江戸時代に生まれていたら、やっぱり橋にしがみつきながらびしょ濡れになって波を描くかも?(笑) そんなことを思うのも臨場感ある展示ゆえなのかも」
ビジュアル、音、振動が一気に迫りくる空間は、さながらライブステージのようでもある。もしここで乃木坂46がパフォーマンスするならば、どんなセットリストを組みますか?
「えー!?(笑)…そうだなあ、齋藤飛鳥さんの卒業シングル『ここにはないもの』がまず思い浮かびました。飛鳥さんの卒業コンサートでは羽根が舞う中で踊ったので、今度は北斎の雪景色の中で再現できたら…。あと雪がちらつくMVの『歩道橋』。他には私たち5期生の曲『相対性理論に異議を唱える』もひんやりとした空気と時空を超える思いを表現した歌詞が合いそう! そうだ、その曲のセンター、岡本姫奈にこの展示を見せたいなぁ。バレエとか自分で表現する芸術に親しんできた子なので、こういう感じるアートを前にどんな反応をするか見てみたい! リアクション大きめだから、地面が揺れただけで絶叫しそう(笑)」
自分も楽しみつつ、隣の人の反応にもわくわく。それもイマーシブアートの醍醐味。
「一緒に体感することで、相手の知らない一面が見えそうですよね? あ、それで言うと、これから一緒に活動する6期生とも来てみたいです。アートに興味がある子がいるかは未知数だけど、よく知らない段階だからこそ『この子はこういう部分に着目するのか』とか内面を知るきっかけになるはず」
今回は一人で深くその作品に没入したことで、北斎をより身近に感じることができたそう。
「以前にその生涯を追った番組を見て知ったんですけど、北斎さんって画号を何十回も変えてるんです。でもそれはきっと、名前が何であろうが自分の作品だと気づいてもらえるという作品への絶対的な自負があったから。それほどの力量をこの場で感じました。私はこの『瑛紗』を超える名前はまだ想像できないけど(笑)、絵に生きた人生…憧れます」
帰り際も興奮冷めやらず「いや~…楽しかったぁ!」と繰り返しつぶやいていた池田さん。
「入った瞬間、ピンときました。『この展示は私の反応を引き出そうとしているぞ!?』って。その思惑に乗ったほうが絶対楽しい。そして夢中になっているうちに北斎さんと時空を超えてシンクロして…めっちゃいい体験ができました!」
PROFILE プロフィール

池田瑛紗さん
いけだ・てれさ 2002年5月12日生まれ、東京都出身。乃木坂46の5期生。東京藝術大学在学中。芸術バラエティ番組『小峠英二のなんて美だ!』(TOKYO MX)のMCも経験。イラストやブログなどクリエイティブな方面でも力を発揮している。
INFORMATION インフォメーション
HOKUSAI:ANOTHER STORY in TOKYO
浮世絵師・葛飾北斎が描いた世界を「映像・サウンド・触覚」を通して味わう、イマーシブ展覧会。多様なジャンルを描いた北斎の多面性を感じさせるエリアから始まり、風を感じながら「冨嶽三十六景」を楽しむ「風の部屋」など、7つのゾーンから構成され、大型LEDによる美しい映像や、高度な空間音響技術によるダイナミックなサウンド、歩くと連動する床や映像に合わせて吹く風など、全身で北斎の世界を堪能できる。同ビル内の『藤井茗縁(めいえん)』にて、浮世絵のラテアートが施された展覧会コラボメニューなど、味覚を刺激する試みも。6月1日まで開催中。東京都渋谷区道玄坂1‐2‐3 東急プラザ渋谷3F TEL:03・3464・8109 11:00~20:00(最終入場は19:10) 休みは施設に準ずる 一般¥3,500
写真・来家祐介(aosora) スタイリスト・番場直美 ヘア&メイク・北原 果(KiKi inc.) 取材、文・大澤千穂
anan 2441号(2025年4月2日発売)より