
ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。映画監督の山中瑶子さんを迎えての最終回をお届けします。
映画をつくったきっかけは真っ赤なカーテン?
ゆっきゅん:2018年公開の『あみこ』がデビュー作ですよね。それはもう撮らずにはいられなかった感じですか?
山中瑶子:そうですね。大学生になって、一人暮らしの部屋のカーテンを真っ赤にしたら気分がずっと高ぶって生活リズムが乱れてしまい、学校に行けなくなってしまったんです。それで大学を辞めるしかないと考えたんですけど、辞める前に何か実績を残したいなと。とりあえず休学をして、その間に大量に映画を観ていたら“面倒くさい学生シネフィル”みたいになってきて。このままでは目標だけが高いまま一生映画をつくらない人間になりそうで、バカなうちに撮らないとダメだという気持ちがありました。
ゆっきゅん:エピソードが奇抜すぎて展開が入ってこない(笑)。
山中瑶子:それで19歳のときに映画を撮り始めました。手や体を動かすことって大事ですね。
ゆっきゅん:しかもそれが名作! これまでの行動すべてが英断すぎます。
山中瑶子:カーテンの赤もデヴィッド・リンチが好きだったからなんです。
ゆっきゅん:リンチがすべての根源!
山中瑶子:今こうして映画を撮り続けられているのはリンチのおかげだなと思います。本当映画に助けられてきてますね。
ゆっきゅん:最近の生活はどうですか?
山中瑶子:最近、朝ごはんを食べるようになったんですよ。
ゆっきゅん:普通にかっこよ!
山中瑶子:年始から食べるようになったんですけど、すごく調子がよくて。ちょっと今は自分の中でいろいろと変わりたい願望があり、新しいことを始めてみています。
ゆっきゅん:何かあったんですか?
山中瑶子:なんかいろんなサイトのパスワードがわからなくなってきて。
ゆっきゅん:それはありますね。
山中瑶子:人によってはちゃんとメモをしているじゃないですか。私はそれができなくて、毎回パスワード関連に苦しみながら、それにすごい時間を割いている。そのことが嫌になってきて、ちゃんとしたいと思ったんです。
ゆっきゅん:私もいつも「パスワードを忘れた場合」のところを押して再設定してます。
山中瑶子:それがもう最悪な気分で。同じことを生涯で何百回やるのかなと考えてしまって。その間に見落としている風景がいくつあるんだろうって思います。
ゆっきゅん:私が天井を見ている間に、世界では素晴らしいことがたくさん起きているんだろうな……。
山中瑶子:本当それです。
ゆっきゅん:そんな私の今の目標は、ちゃんと午前中を発見することです。
Profile

山中瑶子
やまなか・ようこ 1997年、長野県生まれ。初監督作品『あみこ』がPFFアワード2017で観客賞を受賞。最新作『ナミビアの砂漠』は第77回カンヌ国際映画祭の監督週間で国際映画批評家連盟賞に輝いた。テレビドラマの監督も手がける。
Profile

ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』のリミックスEP『生まれ変わらない私を!?』が配信中。
anan2438号(2025年3月12日発売)より