全方位的に感謝できる。そういう初歩的なことが大切です。
「わたしの一番かわいいところ」で大ブレイクしたFRUITS ZIPPERをプロデュースする木村ミサさん。“原宿から世界へ”を掲げるプロジェクト・KAWAII LAB.のプロデューサーに就任したのが約3年前。どんな心境だったのだろう。
「アイドルをプロデュースするということは、メンバーの人生を背負うこと。自分がやりたいことを他の誰かが体現してくれ、世界に届けられるワクワクもありましたが、それがどう思われるのか不安もありました。でもメンバーが決まるたびに自信が湧いてきて、7人揃った時には“売れるかも”と確信めいたものがありました。FRUITS ZIPPERが目指していたのは全員がセンターになれるグループ。それができたと思ったんですよね。最初の1年はほぼ一緒に行動して、同じ感情を共有してきたので、自ずと距離が近づきました。KAWAII LAB.のグループはメンバー主体がコンセプト。彼女たちと話す時間が長いほど、プロデューサーとしての思考もクリアになっていく感覚があるので、定期的に話す時間を持つようにしています」
今やヒットに不可欠となったSNS。FRUITS ZIPPER躍進の起爆剤になったのもTikTokだった。
「SNSネイティブの子ばかりなので、何を発信するかは基本的にメンバーに任せていますが、SNSチームから海外で流行っているミームを提案することはあります。また、メンバーごとに他撮り、どアップ、垢抜け法と人気が出る動画の傾向が違うので、伸びるものをより伸ばしていこうとはみんなで話していますね。今TikTokのダンス動画は、簡単そうだけど割とちゃんと覚えないと踊れないものが人気です。『フルーツバスケット』という楽曲のサビはそうしたんですが、Bメロのパフェの形を表現した、誰にでもできる手振りが伸びました。本当にいつどこで何が伸びるのかわからないので、可能性の種を世界中に蒔くようにしています。ただ、SNSを回すことだけを意識して楽曲を作ると、ライブがつまらなくなってしまうんですよね。そこが難しいんですけど、SNSとライブ、それぞれの特性を意識して作るようにしています」
FRUITS ZIPPERの成功後、KAWAII LAB.から3つのグループが立て続けにデビューした。
「KAWAII LAB.がブランド化しつつある中で、原宿のKAWAIIカルチャーをムーブメントにして、知っていただく機会を増やすには、短いスパンでグループを作る意味があるとは思います。FRUITS ZIPPERに影響を受けて、KAWAII LAB.に入りたくてオーディションを受ける子の中には、自分の声を変えたり、作り込んだりする子もいるんです。でも、そのままの状態から、その子にしかない魅力を引き出すのが私の仕事なので、等身大でいてほしい。それは所属する全アイドルにも伝えていることです。どれだけ外でいい顔をしても、裏でふてくされていては、推してもらえるアイドルにはなれないと思うんです。全方位的に感謝できる。本当に初歩的なことですけど、そういうことがアイドルにはすごく大切です」
成長を楽しみにするアイドルたちと分かち合う夢とは。
「FRUITS ZIPPERとは“当たり前にドームツアーができて、ワールドツアーも回れるアイドルに”という共通認識があります。そう考えるとやりたいことはまだまだいっぱい。KAWAII LAB.全体としては、原宿という多様な場所から、すべてを受け止め肯定してくれる“NEW KAWAII”を世界中に広げたいと思っていて。そのためにはどんな小さな可能性でも、チャンスに賭けます!」
PROFILE プロフィール
木村ミサ
きむら・みさ 1990年12月25日生まれ、群馬県出身。2014年から3年間、アイドルグループ・むすびズムとして活動。’22年よりKAWAII LAB.の総合プロデューサーを務める。注目するエンタメはオーディション番組。