自分らしく生きる、バービーの芯の強さ。
女子の憧れが詰まっているバービー。実際に子供の頃一緒に遊んだり、親におねだりした、という人も少なくないはず。そんな彼女が、今年デビューから60周年を迎えた。そこで、バービーの魅力を改めて探るべく、誕生の地・ロサンゼルスへ。60年間製造から販売までを担うおもちゃメーカーの「マテル」と、バービーへの深い愛情からロスへと移住した日本人コレクターのご自宅の取材が特別に実現。
ロサンゼルスの空港からほど近い閑静なエリアに、「マテル」はいくつかのオフィスを構える。その中のひとつ、広々とした平屋造りの白い建物が、デザインや試作などを行っているクリエイティブセンターだ。建物の外観はいたってシンプルなものの、エントランス付近には誰でも遊べるミニカー用のロングレールが。そこで、まずはプロダクトデザイナーのビル・グリーニングさんが出迎えてくれた。ビルさんと共に中に入ると、壁に大きくプリントされた女性の姿が目に入る。この女性こそ、「マテル」の創設者のひとりであり、バービーの生みの親であるルース・ハンドラーさんだ。
「ルースさんがバービーを考案したのは、娘・バーバラさんの子育ての真っ最中。一緒に人形遊びをしている時に、女の子用の人形の種類が少ないと感じたことがきっかけでした。男の子は消防士や医者など何にでもなれるのに、女の子は母親や病気の人のお世話係にしかなれないことに気づいたのです。そこで“You Can Be Anything”(何にだってなれる)というメッセージを伝えるべく人形を製作、娘の愛称である“バービー”と名付けたそうです。実際に60年間で、バービーは宇宙飛行士や動物学者、起業家、大統領候補など、約200以上の職業に就いてきました」(ビルさん)
巨大バービーハウスやスポーツカーのオブジェが置かれたロビーを通過すると…実際にバービーが生み出されている作業エリアに到着。ここでは、シニア・ディレクターを務めるロバート・ベストさんがアテンド。ロバートさん曰く、バービーのサンプルが生み出されるまでには、大きく分けて4つの工程があるそう。
まずは、ロバートさんなどのデザイナーがコンセプトを考えて、デザイン画を描くことからスタート。
「1体のバービーを作る時、1本の映画を作るくらい様々なことを考えます。例えば、ピンクのバービーを作るとしたら、辞書で“ピンク”の意味をチェックしたり、パリやミラノの最新ランウェイでどんなピンクのアイテムが登場しているか調べたり。いろいろなところからインスピレーションを貰って、デザイン画を描き始めます」(ロバートさん)
デザイン画が出来上がったら、専用のコンピューターソフトを使いながら、2Dのイラストを立体的な3Dモデルに起こしていく。データは3Dプリンターですぐに出力できるため、現物をチェックしながら作業可能。輪郭や頭の形、口角の上がり具合など細部までこだわり、コンセプトに合う顔の形ができるまで試行錯誤するそう。
人形のベースが完成した後は、顔の絵付けと髪の毛の縫い付けに移る。3Dプリンターで出力したのっぺらぼう状態の顔に、極細筆で眉毛や唇を描くわけだが、1mm単位での調整を要する緻密な作業。米粒ほどの小さなスペースに、生き生きとした表情を描けるのはトップレベルのドールクリエイターだから成せる業。髪の毛は、日本の会社から取り寄せたファイバーを使用し、足踏みミシンで1本ずつ丁寧に縫い付けていく。
そして顔ができると、最後にコンセプトに合わせて洋服を仕立てる。
「まずはデザイン画をもとに、スカートやブーツなど、各アイテムをスケッチし直します。そこから型紙を作って、素材選び。シャイニーなものだったり、ワッフル調だったり、模様が入ったデザインだったり、布も糸もいろいろなものを試してみます。ここまでできた段階でようやく経営陣にプレゼンして、OKをもらえたら商品化します(笑)」(ロバートさん)
バービーの歴史と製作工程がわかったところで、ビルさんとロバートさんにお別れを告げ、バービーのコレクターとして世界的に有名な、日本人のアズサバービーさんのご自宅へ。7年前日本からロサンゼルスに移住し、現在はネイルアーティストとして活躍するアズサさん。ファッションとアートの街ウェスト・ハリウッドに、彼女の自宅兼ネイルサロンはある。インターホンを押してドアを開けると、「どうぞ」という可愛らしい声とともに、ピンクのお部屋が出現! 壁一面にバービードールがずらりと並び、バスルームやキッチンにはロゴやシルエットがあしらわれていて…まさにバービー尽くし。アズサさん自身も鮮やかなピンク色のロングヘアがお似合いで、バービーの世界観から飛び出してきたような出で立ちだ。
「バービーを好きになって今年で23年。今までグッズやドールにざっと1000万円以上は使ったと思います。きっかけは、15歳の時に初めて買ったバービーのお弁当ボックス。その時彼女のハッピーでポジティブなオーラがいいなと思って、そこから集めるようになりました」
とアズサさん。ドーリーな見た目に反して、性格はかなり男前のようで、この家のカスタマイズも全部自らの手で行ったそう。ペンキを使った塗装も、電動釘打ち機で釘を打ちつけるのもお手のもの。
「私自身“見た目と中身のギャップがすごい”とよく言われますが、バービーも、よく知らない人からは“ファッションやメイクのことばかり考えている”と思われがち。だけど本当は全然そんなことなくて…そういうところにすごく共感を覚えたんです。そして何よりバービーは、自分が女性であることに誇りを持っていて、男性にも媚びない。ボーイフレンドとしてケンはいるけど、ケンなしでも生きていける感じがバービーはしますよね(笑)。そんな強くて格好良い彼女が、私自身の女性像と一致したんです」(アズサさん)
多様性を尊重する。ブランドとしての信念。
今回の3人の取材を通して、繰り返し使われていた2つの言葉がある。それは“ダイバーシティ”と“インクルージョン”だ。ダイバーシティとは「多様性」、インクルージョンとは「性別や人種、社会的地位、障害の有無など、持っている属性によって排除されることなく生活できる状態」のこと。バービーの歴史、そして今後のバービーを考えるうえで、これらの言葉は重要な意味を持つ。
「2016年にトール(長身)、カービー(ふくよか)、プチ(小柄)の3タイプのスタイルを新しく発表した時、多くの人からポジティブな反応を貰いました。こういうふうに、自分と似たような人形がいないと思って育ってきた人たちにも、子供に“いま世界はもう変わったよ。人と違うことはスペシャルで素晴らしいことなんだよ”と教えてあげられるような、それぞれのバービーを今後も届けていきたい」(ビルさん)
「今年は車椅子に乗ったバービーも発売スタートしましたが、車椅子のケンがいてもいいと思いますし、他にどんなバービーがいたらいいかは考えるように意識しています。それは、今の時代だからというわけではなくて、この地球で仕事をしていくうえですごく大切なこと。どんどん挑戦して、開けられなかった扉を開けていきたいです」(ロバートさん)
多種多様な人の違いを認められる優しさ、その上で自分の個性を大切にする強さ。両方を併せ持つバービーは唯一無二の存在であり、それこそが60年間トップドールであり続けられる秘訣かもしれない。今後70周年、そして100周年を迎える中で、バービーがどんな進化を遂げるのか…これからも目が離せない!
Barbie(TM)デビュー60周年 60周年を記念して、ニューヨークのチョコレートショップ『マリベル』とのコラボチョコがマリベル京都本店で発売中。箱にバービーがプリントされていて、ギフトにもぴったり。またバービーグッズオンラインストア(http://www.bb-store.jp/)では、バービーがモチーフになった文房具やコスメなど豊富にラインナップ。気分やシーンに応じたアイテムがきっと見つかるはず。
©2019 Mattel. All Rights Reserved.
※『anan』2019年10月2日号より。写真・平岡 純 多田 寛(DOUBLE ONE/ドール)
(by anan編集部)
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