Vaundy、『ONE PIECE FILM RED』鑑賞後「一番最初に口ずさむのは僕の曲であってほしい」

エンタメ
2022.08.29
類いまれなる音楽センスでヒットを飛ばし、作詞作曲のみならず、映像やデザインでも才能を発揮。マルチアーティストとして活躍中のVaundyさんも『ONE PIECE』ファンの一人。推しキャラを問えば「麦わらの一味だったらブルック。戦いを見てもまだまだ力を隠し持っていそうな感じで、その余裕感がいい」とマニアな答え。愛する作品に携わり、生まれた楽曲で顕示したかったこととは…。
one piece

――今作『ONE PIECE FILM RED』では錚々たるアーティストが楽曲提供されています。その中の一人に選ばれたお気持ちは?

お話を聞いて、これは他のアーティストさんたちとの戦いだなと思って(笑)。本気で戦い、僕が一番カッコいい曲を作ってやろうという思いで挑みました。

――劇中歌「逆光」に関しては、カッコよさを強く意識されて?

はい。でもそれは、「俺の曲、カッコいいでしょ」ではなく、キャラクターたちが「オラー!」と戦っているときに流れて超カッコいい曲にしたかった。だから、絶対にオシャレに振ってはいけないと思って。例えば、ルフィが繰り出すパンチに対して「かっけー」と思うとき、何がすごいのかわからないけど、カッコいい以外思いつかない。そんな曲を目指したつもりです。

――脚本は最後まで読まずに制作されたそうですが、その意図は?

ラストまで読むと、余計な雑味が入ってしまう可能性がある。結末を知っているからこそ、「もうちょっと足しちゃおうかな」って。だから、「逆光」が流れるシーンまでを何度も読み、ウタというキャラクターを捉えて作りました。あとは、結末を知らずに純粋に完成作を楽しみたいという思いもあって。申し訳ないんですが、自分の欲望に忠実に(笑)。

――「逆光」はウタの感情が爆発する場面で流れる曲ですが、ロック調にしたのは制作サイドからのオファーですか?

“Adoちゃん、ONE PIECE、劇中歌”という時点でロックしか思いつかなかったんですよね。それで、「Adoちゃんらしさが100%出る曲で、Adoちゃんがこう歌ってたらカッコいいよなー」とか「ここでルフィがしゃべって、ゾロのこんなシーンもあるかなぁ…」などと想像しながら、その妄想に音楽をはめていった感じです。

――ドラムの音と歓声から始まる長めのイントロも印象的で、ライブ感がビンビン伝わってきます。

ロックはイントロが大事なので。例えば、AC/DCというバンドのイントロは超長いんですが、それをライブで聴くとワクワクするんですよね。さらに監督からも「イントロを長く使いたい」との要望をいただいたので、劇中の“画”として使えるのはドラマーのシーンだなと思い、最初にドラムソロを入れて、そのあとクラップで煽り、ウタの合図で曲が始まる流れにしました。

――歌詞で意識した点は?

ウタは海賊を憎み、怒っているけれど、それは愛してしまったからこそ、なんで裏切られなきゃいけないんだという思いが強い。“愛への罰だ”という歌詞は、ウタへの愛で罪をかぶったシャンクスに対して、私の欲しかった愛の形はそうじゃない! っていうような、自分でも消化できない複雑な感情を表していて。子供の反抗期に近いかもしれない(笑)。でも、根底には「本当はシャンクスやルフィたちのことが大好き」という思いもあるから、それも歌詞に落とし込んでいます。悩んだのはサビの頭のフレーズ。いろんな言葉が浮かんだ中で、しっくりきたのが“怒りよ”というワードだった。ウタは怒っているから、その怒りの感情をちょっと擬人化させているんです。イメージ的には「行ってこい、私の怒り。悪党どもをぶっ飛ばしてくれ」って感じですね。

――曲のタイトルでもある“逆光”というワードも意味深で気になります。

逆光=海賊を意味していて。僕は基本的に、頭に浮かんだ妄想の絵から曲を作っていくんですが、ウタが手前にいて、奥には光を背に受けて立つ海賊たちのシルエットが見えたんです。『ONE PIECE』では海軍や世界政府が世間的には光なので、反する海賊は逆光。そう捉えて使っています。

――改めて、劇中歌を作る醍醐味なども感じられましたか?

めちゃめちゃ楽しかったですね。ただ、「逆光」という曲が完成するのはまだ少し先。お客さんの反応があってモノ作りは本当の終わりを迎えるので。僕自身も実際に映画を観て感じて、そこで得ることもあるだろうし。いま思うことは、お客さんが映画館を出て、一番最初に口ずさむのは僕の曲であってほしい、ってことですね(笑)。

バウンディ 2000年6月6日生まれ。’19年、YouTubeへの楽曲投稿で一躍話題に。9月には初の武道館ワンマンライブ開催。10月公開の映画『線は、僕を描く』のyamaが歌う主題歌「くびったけ」も手がける。

「逆光」 ウタの怒りや葛藤を詰め込んだロックチューン。「7曲の中で一番“怒り”を表している楽曲なので、パンチを利かせたいなと思いました。“がなり”など、普段のAdoの歌い方に一番近い曲でもあるので、私のファンの方々は『出た出た! コレコレ!』って感じだと思います(笑)」

『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』 「逆光」含む7曲を収録したアルバムも好評発売中。通常盤ジャケットのウタ×Adoさんのコラボイラストは『ONE PIECE』原作者であり、本作の総合プロデューサーを務める尾田栄一郎先生の描き下ろし。通常盤¥1,980。Spotifyなど各種聴き放題サービスでも配信中。

『ONE PIECE FILM RED』 音楽の島エレジアで開催される歌姫・ウタのライブを訪れた、ルフィ率いる麦わらの一味。大勢のファンが埋め尽くす会場には、よからぬ思惑を持った者もいて…。原作・総合プロデューサー/尾田栄一郎 監督/谷口悟朗 脚本/黒岩勉 音楽/中田ヤスタカ 公開中。

『ONE PIECE』 1997年、『週刊少年ジャンプ』にて連載スタート。主人公のルフィが海賊王を目指して、仲間と共に戦い、成長していく冒険活劇。現在、103巻まで発売中。

※『anan』2022年8月31日号より。インタビュー、文・関川直子

(by anan編集部)

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