理想の恋愛として真っ先に浮かぶのが、おじいちゃんとおばあちゃんになって縁側でお茶を飲んでいる姿なんです。
――目立つことが苦手な上白石さんが、「東宝シンデレラ」オーディションを受けられたのは?
上白石:もともと歌ったり踊ったりするのが好きで、ミュージカルスクールに通っていたんですが、そこで勧められたんです。受かるとはまったく思っていなくて、2次審査は福岡に行けるとか、最終まで残ったら東京に行けるっていうことが楽しみで。最終審査に受かったら次の日の『めざましテレビ』に出ることになっていたんですけれど、私と一緒に受けた妹は、ミュージカルのチケットを取っちゃっていましたから。それくらい誰も受かると思っていなかったんです。
――いま役を演じられる時に意識されていることはありますか?
上白石:監督の意向をどこまで酌めるかということでしょうか。この作品での私の役割というものがあるはずですから、そのために何をしたらいいかを考えている気がします。
――まさにドラマ『恋はつづくよどこまでも』(以下、『恋つづ』)では、視聴者が共感して応援したくなるヒロインを演じられていましたよね。
上白石:…演じられてました?
――見事にハマっていましたよ。
上白石:私自身がどうやっても普通なんで、ザ少女漫画のヒロインにはどうあがいてもなれないのはわかっているんです。ただ、『恋つづ』は、佐藤健さんという絶対的なカリスマ性を持った存在がいて、そこにどう考えても無理でしょうっていう女の子がアタックするというアンバランスさが見どころの作品で、私が選ばれたのも、そこだと思っています。だから可愛く映ることは考えず、ひとつひとつ楽しみながら鈍くさ~く演じました。
――演じた七瀬は、好きになったら一直線っていうタイプですけれど、ご自身はどうですか?
上白石:私は衝動で動いたことがないんです。理性が勝ってしまって。だから七瀬の一途さに憧れます。
――理想の恋愛、ありますか。
上白石:どんな恋愛が理想だろうって考えると、おじいちゃんとおばあちゃんになって縁側でお茶を飲んでいる画が真っ先に浮かぶんですよね。あまりヤキモキすることなく、老後まで楽に一緒にいられるのが理想でしょうか。男女問わず、何かに夢中になっていて、ごはんがおいしいとか、そういう何気ないことにも幸せを感じるタイプの人が好きなんです。そういう人とはいい老夫婦になれる気がして。
――以前に萌歌さんにインタビューした時、妹として姉という立場がいかに大変かということを語っていらしたんですが…。
上白石:妹が自覚しているんだってことに驚いています(笑)。でも姉として20年間やっていますし、ふたつプレゼントをもらったらひとつ譲るのは当たり前で、大変だと思ったことはないですね。むしろそれが心地いいというか楽というか。でも最近は、姉妹というよりも同志とか親友とか、双子みたいな感覚です。
――この先、女性として仕事人として、目指すものはありますか?
上白石:子供が好きなんで、いい母親になりたいという夢はあります。人としては、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が最終形態ですね。欲はなく苦にもされず、見返りを求めずに愛を注げて、自分のことも大事にできる人になりたいです。仕事に関しては、正直将来をまだ描けてないんです。ただ、最近、重度心身障がいの子供たちと触れ合ったり、保護猫について取材させていただいたり、社会と繋がるお仕事をさせていただくことが続いたんです。小さい時から両親に社会に貢献できる人になれと言われて育ったので、私が仲介者になって、誰かの橋渡しができたらいいなって思っています。それがいまの私なりの、社会への貢献の仕方なのかなって。…なんだかとても立派なことを言ってしまいましたね。
上白石萌音さん初のオリジナルフルアルバム『note』が発売中。RADWIMPSの野田洋次郎さんや大橋トリオさん、いきものがかりの水野良樹さん、YUKIさんなど豪華アーティストが楽曲提供した全10曲を収録。通常盤は2727円。32ページのミニ写真集とDVDがついた初回限定盤は4000円。アルバム初回プレス分には9月19日のオンラインライブのスペシャルプライスコードが封入。
かみしらいし・もね 1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年に「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。‘14年の初主演映画『舞妓はレディ』では、その高い歌唱力も注目され、‘16年のアニメ映画『君の名は。』ではヒロインの声を演じた。映画『L・DK』やドラマ『恋はつづくよどこまでも』など話題作に次々出演。歌手としても初のオリジナルフルアルバム『note』が発売中。
※『anan』2020年9月2日号より。写真・小林真梨子 スタイリスト・嶋岡 隆 北村 梓(Office Shimarl) ヘア&メイク・高村三花子 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)