集中力がある人たちのそばに行く。
雑念を払うのにもっとも手っ取り早いのが、環境を変えるという方法。「心理学の世界では“集中力が伝染する”という現象は昔から確認されています。つまり、できる人間に近づけば自分もできる人間になり、周囲の生産性が低ければ、自分の生産性も低くなるということ。同じ社内にハイパフォーマーがいない場合は、熱心に仕事をする人が集まるカフェに行ったり、同じ目標を持つ人がしのぎを削るサークルに参加する、などでもOK。どんな人と付き合うかで集中の質も変化します」
タスクを行う場所を決める。
好奇心の塊である本能の暴走を防ぐためにも、作業するための環境は前もって整えておく必要がある。「勉強をするときはリビング、仕事をするときは自室のデスクなど、作業によって専用のスペースを設けることで、その場所はあなたにとっての“聖域”となります。作業に不要なマンガや日用品、食べ物などはあらかじめ排除しておくこと。ステップ2の儀式の考え方を使って、“一日のはじめにデスクを整理整頓する”というルーティンを設定しておくのも効果的でしょう」
感情の暴走をしのぐ。
たとえば夜中に食欲が止まらなくなったり、急に怒りがあふれてきたり…。本能が生み出す感情は、時にものすごい勢いで暴走することがある。「そんな激しい感情の波を正しくコントロールするには、自己をじっくりと見つめる作業が必要不可欠です。“じっくり見つめる”といっても、自分の思考と感情からはいったん距離を置き、何も分析せずにただ観察に徹するのです。この行為を“デタッチド・マインドフルネス”といいます。具体的な方法を3つご紹介しましょう」
具体的な数字を出して少しだけ続けてみる。
本能が生み出す感情は強度が強い一方で、持続時間が短いという特徴がある。つまり、神経伝達物質の影響がやわらぐまでやり過ごせば、スムーズに本来の作業に復帰することが可能に。たとえば、「SNSをチェックしたい衝動に襲われたが、とりあえず無視してあと5分だけ仕事を続けよう」「資料を作成する気力がないが、まずは1行だけ書いてみる」などという具合に、具体的な数字を出しながら、一歩引いた視点から観察を続けることで、感情に巻き込まれず平静を取り戻すことができる。
メタファーを思い浮かべて、忘れる。
まずは下の文章を読んで、具体的な映像をイメージしてみる。これは有名な心理療法の技法で、自分の乗らない電車が通るのをホームに立って眺める感覚によって、デタッチド・マインドフルネスの「観察」のコンセプトを理解する有効な手段といえる。特にこの「電車のメタファー」では、思考や感情を「必ず通り過ぎるもの」として認識するところもポイント。他にも、通り過ぎる雲のメタファー、牧草地のメタファーがある。
心を駅のようなものと考えてみてください。思考と感情は、駅を通り過ぎる列車です。電車はホームに止まり、過ぎていきます。あなたはホームに立ち、ただ電車が通り過ぎていくのを見てください。電車に乗り込まない限り、別の場所に着いてしまう心配はありません。
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感覚を物質化してイメージする。
この方法は、作業中になんらかの感情が湧き上がったら、「いまの気分が物体だったらどのような感じだろう?」と考えてみるトレーニング。たとえば仕事中にスマホを触りたくなった場合は、「いまの感情はグレーで、みぞおちのあたりにテニスボールサイズの物体が収まって細かく振動している感じ…」と、自分の感情を物体化して観察していく。上手くイメージできないときは、「その物体はどんな色(形・サイズ・質感・動きetc…)をしているか?」などの質問を自分に問いかけてみること。このトレーニングは長く続ければ続けるほど、注意力散漫になるタイミングをつかみやすくなる。
鈴木 祐さん サイエンスライター。健康や科学、心理などをテーマに書籍や雑誌の執筆を手掛ける。新刊『科学的な適職』(クロスメディア・パブリッシング)が発売中。
※『anan』2020年2月12日号より。イラスト・加納徳博 取材、文・瀬尾麻美
(by anan編集部)