社会のじかん

乱射事件が起きてるのになぜ? 米で銃規制反対の“ホントの理由”

ライフスタイル
2018.04.01
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「銃規制」です。
社会のじかん

19歳の少年により、17人の高校生・教職員の命が奪われた、アメリカ・フロリダ州パークランドの銃乱射事件。同州の高校生は、デモなど、銃規制を求める抗議運動を行いましたが、これに対して猛烈な反論があり、インターネット上でのいじめも起きています。

アメリカの銃の所持率は、先進国のなかでも突出して高く、国内に3億丁を超える銃があります。2016年のFBIの統計では、銃が原因で死亡した人が1万1004人。そのうち自殺は約5500人。乱射事件もたびたび起きており、銃の事故のため、多額の税金が医療費に投入されています。

僕がアメリカに住んでいた2012年にもコネチカット州の小学校で銃乱射事件が起き、子どもたちが犠牲になりました。事件後、ロサンゼルス市警が、銃をフードクーポンなどと交換する「買い戻し」キャンペーンを催したところ、多くの市民が集まりました。ライフル銃が何丁も積まれた車の長蛇の列を目の当たりにし、アメリカがいかに銃社会なのかを実感しました。

世論調査によると、アメリカ国内の銃規制を求める声は決して少なくありません。購入希望者の身元調査をしたり、購入者を限定する規制に賛成する人は半数以上います。オバマ前大統領も法案による銃規制を目指しましたが、議会で反対され実現しませんでした。その後の規制を強化する大統領令も、現政権になり廃止されています。銃規制が一向に実現しない背景の一つが、規制に反対する団体、全米ライフル協会(NRA)の存在です。会員数は公称で500万人。潤沢な資金を持ち、政治家への影響力も大きいんですね。

また、合衆国憲法では、市民の銃の所持を重要な権利として尊重しています。銃規制は違憲という判決も出ています。それは、もしも政府が独裁政治を強いるなど市民の権利を奪おうとしたときには、市民自ら武装して、国を守れるようにという理由からなんです。

これらから、アメリカでは銃規制の実現は容易ではありません。しかし今回の事件を受け、航空会社や保険会社など複数の企業が、NRA会員の優遇措置をやめると発表。今後、銃規制の流れがどう進むのか目が離せません。

社会のじかん

ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN


※『anan』2018年4月4日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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