立ち食いそばのニューチャプターを拓いた衝撃の店、京都『SUBA』のオープンから約2年半。ついに彼らが東京にやってきた。渋谷の宮益坂エリアの一角。グレートーンのオフィスビルの一階をぶち抜いて、「YUSUKE SEKI STUDIO」が手掛ける象徴的なコンクリートのカウンター(しかも少しだけ傾けてある)が鎮座する『SUBA VS』が誕生した。2階にはワインショップ『VIRTUS』(ウィルトス)の角打ちもあり、『SUBA』の出汁でワインを割った“出汁割り”も楽しめる。グラスのふちには七味。彼らは常に、形式と慣例に囚われた世界を笑い飛ばす創造性とユーモアに溢れている。ここにいると、“まとも”ってただサボってただけじゃん、と思えてくる。
そばひとつとってもそうだ。オリジナルの二八蕎麦に、鰹節や昆布を効かせ、かえしは控えめな出汁でベースを固めつつ、とり天そばには、燃えるような赤の毛沢東スパイスをたっぷり振る。冷かけには「舟形マッシュルームと唐千寿そば」なるものも。フレッシュなマッシュルームにカラスミかかってる前菜うまいよね、の気づきが、そのままそばに載っかったスタイルだ。唐千寿はカラスミのそっくりさんだが再現度が異常で、塩味や旨みが食べ進めるほどにそばつゆに移って味わいが増していく。このクリエイティブの底知れなさ、だからこそ追いかけたくなる、『SUBA VS』なんておそろしい子!
出汁割りワイン550円、舟形マッシュルームと唐千寿(カラスミ風)1200円。
SUBA VS 東京都渋谷区渋谷1‐15‐8 宮益ONビル1F 12:00~23:00 店休日はインスタグラム(@subasoba_vs)にて要確認
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)、『ショートケーキは背中から』(新潮社)など。
※『anan』2024年10月30日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)