腸活の最旬キーワード! 「発酵性食物繊維」とは?
腸の健康を保つために効果的な成分として知られる食物繊維。なかでも最近、腸活の主役として注目されているキーワードがある。それが「発酵性食物繊維」。
「発酵性食物繊維とは、食物繊維の中でも、特に腸内細菌によって発酵されやすいものを指します。ここで言う“発酵”とは、腸内細菌が食物繊維を分解して有用物質を生み出す“腸内発酵”を意味します。発酵性食物繊維を積極的に摂取するほど腸内発酵力は高まり、大腸内にある1000種類以上の腸内細菌の中の善玉菌や日和見菌が活性化して増殖。腸内フローラを整えて便通を改善してくれるほか、美肌や免疫力アップなどの効果も期待できます」(大妻女子大学教授・青江誠一郎先生)
今まで腸活というと、善玉菌を含む食品を摂取することがメインだったが、単一の菌を腸へ足すだけでなく、エサとなる食物繊維を摂ることにより腸にもともと存在する多様な善玉菌を増やしていこう、というのが昨今の流れだ。
「食物繊維の豊富な食材と聞くと、レタスなど緑色の葉物野菜を思い浮かべるかもしれませんが、発酵性食物繊維は穀物をはじめとした茶色の食品群に多く含まれます。代表的なものは、小麦や玄米のふすま部分に含まれるアラビノキシラン、大麦やオーツ麦に含まれるβ‐グルカン、豆類のレジスタントスターチや難消化性オリゴ糖など。雑穀中心の伝統的な日本食には発酵性食物繊維が特に豊富で、日本人の長寿の秘訣ともいわれていますが、近年の食生活の欧米化や過度な糖質制限などの影響で、摂取量は大幅に減少しています」
不足分を補うためには、普段の食事に1日3gの発酵性食物繊維をプラスするのが効果的。1日3食として、1食で1gと考えれば、そこまでハードルも高くない!? 穀物中心の食生活で、効率的でバランスのいい腸活を実践しよう。
発酵のメカニズムって?
発酵性食物繊維を積極的に摂取する→腸内発酵が進み、酪酸など短鎖脂肪酸が産生→免疫を制御する細胞が活発に働くようになる
腸内細菌が食物繊維を分解し、人に有益な物質を作り出す過程を「発酵」と呼ぶ。発酵性食物繊維を摂取すると腸内で善玉菌が活性化され、酪酸などの短鎖脂肪酸が作られる。短鎖脂肪酸には腸のぜん動運動を促すほか、免疫システムの調整を助ける働きなどがある。
どんな食材に含まれるの?
水溶性食物繊維のほとんどと、不溶性食物繊維の一部。
水に溶けやすい水溶性食物繊維はほぼ全てが発酵性食物繊維だが、サプリメントやドリンク剤に添加されるものには難発酵性のものもある。不溶性食物繊維の中では、穀物に含まれるアラビノキシランとレジスタントスターチは発酵性食物繊維に分類される。
発酵性食物繊の摂り方
主食を中心に選べば1日3gも楽にクリア。
発酵性食物繊維が豊富な腸活食材は下記に。特にマストで摂りたいのが、穀物を中心とした主食。
「まずは細かい数値をあまり気にせず、主食を優先しながら、豆類、根菜、果実類の各分類から複数の食材を取り入れることを習慣にしましょう。発酵性食物繊維は加熱、冷凍しても成分が変わらないのも特徴。コンビニで根菜サラダを1品追加、という形でも全く問題ありません。腸の動きが活発な朝に多めに摂ることもおすすめです」
【主食】
玄米、大麦、全粒小麦などの穀類。β‐グルカンやアラビノキシランが豊富。
- 小麦ふすまシリアル……4.4g/40g中
- そば……3.6g/茹でた状態。200g中
- もち麦+白米……3.5g/もち麦50g+白米100g中
- 中華めん……3.1g/茹でた状態。120g中
- 押し麦+白米……2.3g/押し麦50g+白米100g中
- うどん……2.2g/茹でた状態。200g中
- オートミール……1.5g/30g中
- ライ麦パン……1.2g/60g中
【豆類】
レジスタントスターチや難消化性オリゴ糖などが多く含まれる。後者は主にビフィズス菌に作用。
- 納豆……1.7g/40g中
- あずき……1.7g/乾いた状態。20g中
- きな粉……1.2g/16g中
- いんげんまめ……0.7g/乾いた状態。20g中
【果実類】
ペクチンが豊富で、さまざまな腸内細菌に効果的。リンゴやキウイフルーツもおすすめ!
- バナナ……2.3g/75g中
- アボカド……1.0g/60g中
【根菜】
いも類にはレジスタントスターチ、ゴボウにはイヌリンなどが含まれる。
- ゴボウ……3.8g/茹でた状態。40g中
- 長いも……2.7g/50g中
- ジャガイモ……1.0g/皮付き、レンジ加熱。50g中
- にんじん……0.5g/茹でた状態。50g中
- さつまいも……0.5g/50g中
エサになる発酵性食物繊維は腸内細菌によって異なる。
約1.5mもの長さの大腸には、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸産生菌など、約40兆個ともいわれる多様な腸内細菌が生息している。それぞれエサとする発酵性食物繊維が異なるため、各部位に棲む腸内細菌をバランスよく活性化するには、1種類をたくさん摂るのではなく、複数の品目を摂取することが大切。
青江誠一郎先生 大妻女子大学家政学部食物学科教授。農学博士。日本食物繊維学会理事長。食物繊維の機能性や消化管機能、メタボリックシンドロームなどを研究。著書に『最強!毒出しごはん』(河出書房新社)など。
※『anan』2024年7月31日号より。イラスト・Saki Morinaga 取材、文・瀬尾麻美
(by anan編集部)