どっしりと、いかにもチョコレートケーキという重厚感漂う見た目なのに、舌にのせるとたちまちほどけるように消えていく。思いがけない軽さにするすると食べ進めば、ビターな味わいと力強い旨味が舌にじんわり。その奥に潜むナッティな風味もあとを引き、フォークが止まらなくなってしまう。
「〈トラディッショナル〉のムースは生クリームを使わずメレンゲとチョコレートで、昔ながらのやり方で仕立てました。乳化させないのでさらりと溶けるし、カカオの香りもストレートに出るんです。生地も口どけよくしたいから粉を使いません」。そう話す松島啓介シェフは、日本でもお馴染みのショコラトリー、『ジャン=ポール・エヴァン』で6年スーシェフを務めた人。ショコラへの想いは人一倍強い。軽やかで食べやすくもカカオの醍醐味を感じさせるこのお菓子をシグネチャーにしたのも、ショコラの魅力をより多くの人に伝えたくて。店作りも然りで、白と水色で彩られた佇まいはショコラトリーの高級感とはまた違う可愛らしさがあり、誰でも気後れせずに入れる。「今はまだまだですが、生菓子の半分くらいはショコラ系にしていきたいです。ショコラと他の食材の組み合わせも色々挑戦したいですし」。敷居は低くも志は高い!
クセがなくビターで食べやすい、マダガスカル産チョコレートを存分に楽しめる「トラディッショナル」¥585。ナッティな香りの正体は生地に混ぜ込んだパートダマンドクリュ(ローマジパン)。アーモンドを挽くところから手がける自家製だからとびきり芳しい。昨年10月オープン。
Patisserie LesLines 東京都杉並区西荻北3‐13‐14 TEL:03・5303・9225 10:00~19:30 水曜・隔週火曜休
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2019年2月6日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・中根美和子 取材、文・chico
(by anan編集部)
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