観れば観るほど、新しい発見があって好きになる!
——まずは、お二人が本作を観に行ったきっかけから教えてください。
『名探偵コナン』とか『RRR』とか、いつもいろんなコンテンツを勧めてくれる高校の時の友達がいて、その子に「『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』もきっと好きだと思う。かっこいい強い男と強いジジイが戦う映画なんだけど」と教えてもらったんです。“強い男と強いジジイが戦う”という言葉で観ようと決めて。それで、酒寄さんもきっとハマるだろうなと思って、誘いました。
はい、田辺さんに「強い男たちが戦う映画を観に行こう!」と言われて観に行きました。前情報を一切入れない状態で観に行ったよね?
——それでご覧になって、いかがでしたか?
あー! あの時代の香港か! って。ちょうど私が生まれた1980年代の香港は、ネオン看板が並んでギラギラしている、ちょっと危険な香りのするイメージで。そのイメージがまんま映画の中で再現されていたのが凄かったですね。あとは、強い! 絆! 戦いの合間でもご飯が美味しそう! というのが第一印象でした。
私は、本当に、強い男たちが戦う姿がめちゃくちゃかっこいいなって。あと、“強い男たちが戦う”っていうものに対して私が抱いていたイメージと少し違いました。 ポスターもダークなトーンだったので、勝手に孤独なアウトローな戦いのイメージを抱いていたのですが、田辺さんも言っていたように絆が強く描かれていて、私の中の強い男のイメージがちょっと変わりました。主人公がものすごく強いお話なのかなと思っていたけど、最後は最強の敵と仲間4人で戦っていて、強いって、腕力がただ強いだけじゃなんだなと。
あと、今作の音楽を担当されている川井憲次さん、『劇場版 薄桜鬼』や『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』も手がけられている方なんですよね。私その2作品も大好きで、そりゃ、私好きだわ、好きな要素いっぱいあったわ! ってなりました。
そして、これにハマって、まだ2週間しか経っていないことが信じられないというか、怖い…(※取材時)。2週間前の月曜日に行って、木曜日にもう2回目観に行ってるんですね。その時に、「えっ、まだ3日しか経ってないの!?」って思いました。なんかもう心の充実度が凄すぎて。酒寄さんも、こんなにハマって、まさか一人で本屋さん(※神保町にある、中国・台湾・香港関連書専門店・東方書店)にまで行ってるとは思いませんでした。
本屋さんも行ったし、上野でやっている轟音上映にも行きましたよ。やっぱり迫力ありました! 臨場感が増して。
明日も酒寄さんと仕事で会うんですけど、「その前のこの時間なら観に行けるよ!」って酒寄さんから連絡きて、すごい、隙間時間に観ようとしてる! って(笑)。
——魅力的なキャラクターがたくさん登場して、その関係性の描き方がとても人気を集めていますよよね。
やっぱり私は信一(ソンヤッ)と龍兄貴(龍捲風・ロンギュンフォン)の関係性がすごく好きで。最初に主人公が兄貴の理髪店に迷い込んで、兄貴が人質に取られるみたいになった時の、信一のあの余裕そうな表情! ああいうところがたまらないですね。1回目観た時は、一目見た時から信一に奪われてしまって。作中で「色男」って呼ばれてたから、やっぱり彼は香港でも「色男」なんですね。友達とも話してたんですけど、最近よく言われている「メロい」って言葉がイマイチわからなかったんですけど、信一を見た時に「メロいって、こういうことか!」と腑に落ちました。あと、私、ボロボロな男が大好きなんですよ。ボロボロな中に強さとか美しさがあるというか…。美しさといっても外見的というより心の美しさ。
私は、 Tiger哥(虎兄貴)と十二少(サップイー)の関係性がすごく好きで。信一と龍兄貴とはまた違った、兄貴と右腕という感じの関係がたまらないですね。自分の右腕みたいな存在が、争いの渦中にいる主人公の陳洛軍(チャン・ロッグワン)を助けに行くと言った時に、「戻ってこいよ、俺の世話が残ってる」って言うのが…
私、最初にTiger哥を見た時、正直、ちょっと不思議な声の人だなって思っちゃったんですけど、じわじわと好きになっていきました。気づいたら、「彼が私の上司だったらな…」とかずっと考えちゃって。格闘シーンの出番は少なめでしたけど、ものすごくかっこいいという。
わかる! 私も2回目観た時、あら? この人めちゃくちゃかっこいいじゃん! ってなった。
酒寄さんが夢中になった、ケニー・ウォン演じる虎兄貴!
虎兄貴のチャーミングな右腕、トニー・ウー演じる十二少
ボロボロになっても美しい…。龍兄貴を慕う信一。演じるのは、テレンス・ラウ
“イケオジ”という言葉が腑に落ちる、兄貴たちのかっこよさ!
正直私が2回目観に行った理由は、Tiger哥を最初からしっかり観ればよかったという後悔があったから。観れば観るほど、どんどんいいなって。
この作品は、きっと観れば観るほど新しい発見がある。みんなも大好きなシーンだと思いますけど、あの髭剃りのシーンも、2回目は1回目とは違う気持ちで観ることができるんですよね。気づくと涙が出てくる。
——俳優さんで気になった方はいらっしゃいましたか?
やっぱり龍捲風を演じたルイス・クーさん。渋くてかっこいいなーって。いままで私”タバコ萌え”みたいなのってそこまで感じたことなかったんですけど、彼のタバコの吸い方は、なんか「うわっ、かっこいい!」って。一つ一つの仕草が本当にかっこよくて。私“イケオジ”という言葉も正直わからなかったんですね。でも、この作品に出てくる兄貴たちを観ていたら、「この人たちだ!」って全て腑に落ちました。なので、他の作品も観てみたいと思いました。
それこそ、サモ・ハンさんとかも、過去の出演作を観てみたい! 私、特に年上の男性にこの作品を布教する時には「サモ・ハンが出てます」と言うと強いんじゃないかと思って。実は、「ラヴィット!」収録のCM中に、麒麟の川島さんにそう言って布教してみました。食いついていたので、多分観てくれると思います。
私は、やっぱり(虎兄貴役の)ケニー・ウォンさんが気になっていて。ちょっと気になりすぎて、いま『Man on the Dragon』が観たいです。あとは、(陳洛軍役の)レイモンド・ラムさん。来日舞台挨拶の映像を見て、びっくりしてしまって。洛軍役を最初に知ったから、あのキレイなお顔に衝撃を受けて。でも、確かに、洛軍の笑顔って、とっても華があるなと。
いるだけで場がパッと明るくなるというか。ずっと笑っていてほしいというか。
あの麻雀のシーンの笑顔がね! 心の底からいま笑ってるんだろうなって言うのが伝わってくる。
サモ・ハンさんは、『プロジェクトA』で若い頃を観ていたんですけど、若い頃の愛らしい面白い感じから、今回の恐ろしいボスの振り幅に凄さを感じました。
あと、王九(ウォンガウ)役のフィリップ・ンさん。やっぱりあの人がいるから、この映画が凄いんだなって。最初はかませ犬っぽい登場の仕方なのに強いっていう、今までにないパターン。
あのチャラチャラした感じで一番強いって、最強のラスボスキャラなんじゃないでしょうか。チャラチャラした感じを出しつつ強さも出せるのがスゴい。
嫌なやつなのに、なんか憎めなくて、好きなんだよね。
キャラクターが多いから、絶対誰かは刺さる人がいますよね。ちなみに、周りでは、四仔(セイジャイ)が一番人気な気がします。「大きなヒーラーポジション最高!」という。
そう、で、一人が最初刺さったと思ったら、みんな良すぎて、結局全員刺さる。私がいつもXで騒いでいるので、「田辺さんの推しを知りたい」って言っていただくんですけど、私もわからないんです。今日はこの人って感じで、その時の気分で変わるので。
1回目は、なんだったら、ちょっと嫌かも…と思っちゃった秋哥(秋兄貴)も、2回目観たら、戦闘シーンの一つ一つの動きの美しさと、パンチに込められた念の重さに切なさを感じてしまって…。もうなんか、ほんと、みんないい…ってなっちゃいます。
観た人を次々と沼に引き摺り込んでいる、ルイス・クー演じる龍兄貴
レイモンド・ラム演じる主人公の陳洛軍は、九龍城砦の仲間と出会い、次第に笑顔を見せていく
サモ・ハン演じる大ボスは、アクションのキレもさすが!
前代未聞の“ギャルみのある最強の敵”、フィリップ・ン演じる王九
大人気の"大きなヒーラー"、ジャーマン・チョン演じる四仔
リッチー・レン演じる秋兄貴は、拳に込めた念の強さが胸に迫る
一番強いのは「助け合い」だということを教えてくれる
——この作品が、ここまでたくさんの人に愛されているのはなぜだと思いますか?
今は無き九龍城砦が復活しているというか、映画の中で見ることができるのも大きいですよね。YouTubeで、信一がセットを紹介する動画なんかもアップされていますけど、セットへのお金のかけ方がすごい。その手の込んだセット、80年代の再現に、湧き上がってくるものがあるのかなと思いますね。
私はまず、少年漫画っぽい、いろいろな強い人たちが出てきて戦うっていう魅力があると思いました。あと、これは個人的に刺さった部分なんですけど、強さとか強い人を表現する時って、その人の弱い部分を描いて、この人も人間なんだなっていうところを見せる作品が多いんですが、この映画って弱さは決して見せてないんですよね。九龍城砦の住人たちも、実は一番強いのは助け合いだっていうことを伝えている。人間の強い部分を表現するために、より強い部分を出して人間味を見せているから、安心して観られるのかなと。
登場人物たちが、愛されることを素直に受け入れているところも安心して観られるポイントでした。みんなが、愛することと愛されることをちゃんと知っているっていうのがいいなって。
九龍城砦の住人たちは、生活するのもけっこう大変な状態なのに、絶望感がない。酒寄さんの言っていることに通じますけど、助け合っているからなんでしょうね。自分が自分が! ってなっていなくて、思いやりの心を教えてくれる。まさかあのアクションで、こんな思いやりの心や絆を教えてくれるんだっていう、ギャップにやられました。
お名前を知らずに申し訳ないんですけど、叉焼飯屋さんのスキンヘッドのお兄さん。1回目観た時は、ピンチの時に突然登場した人かと思っていたら、2回目観た時に「あ! 叉焼切ってた人だ!」って気づいて。普通に暮らして生きてる人が戦ってるんだっていうところに心掴まれました。秋哥との対立のシーンで信一とかが戦えない時に真っ先に動いてくれたり、大ボスに果敢に向かって行ったり、すごく良かった。
あと、戦いのシーンで、相手の手足を4人で持って地面に叩きつけるところが私すごく好きで。やっぱり腹が立つこともあるじゃないですか、生きていると。「こいつ…!」って怒りを感じることがあったら、脳内でそのシーンを想像して、気持ちをスカッとさせています。実際にはやらないですよ! 無意識に私のことを傷つけてくるやつとかがいたら、脳内であれを思い出しているんです。そういった部分に元気をもらえるというのもあるかもしれません。
——ぼる塾さんも4人ですしね!
田辺さん、ほんとに嫌なことがあったら、4人で叩きつけるシーンできますね(笑)
実は今日、あんりとはるちゃんも観に行っているんですよ。私と酒寄さんが会うたびにこの映画の話をしているから、気になってしょうがなかったんだと思います。
強い絆と助け合いの尊さを見せてくれる九龍城砦の仲間たち
大ボスに立ち向かう姿に胸が熱くなる、叉焼飯屋の阿七
香港について、もっと学びたいと思うきっかけに
私は香港映画を観るのが、これが初めてだったんですよ。でも、本作をきっかけに香港映画にとても興味を持っているので、酒寄さんからずっと観たほうがいいと言われていた『少林サッカー』も今度観ようと思っています。それで、酒寄さんと広東語勉強したいね、とも言っているんですよね。難しいかもしれないけど…。
香港の食のエッセイや料理本も買ったりしているし、九龍城砦の歴史も勉強しなきゃいけないことなんだろうなと思ってます。まだこの映画でしか九龍城砦を知らないから、私の中では城砦のことが美化されてしまっているところがあると思うんです。だから、発信する上で気を付けていかないといけないなとも考えています。“萌え”だけではいけないというか。ちゃんと歴史を学んで発信していけたらいいなって思いますし、この跡地なども見に行ってみたいなと。
——素晴らしいですね。そういうふうに学びたい気持ちを引き出してくれる作品だというのもいいですよね。
そうなんですよ。やっぱミーハーだから、最初は「キャー! かっこいい!」ってなりましたけど、少し調べてみると、それだけじゃダメなんだなって思いました。本当に存在した場所ですからね。
だから、この映画のパンフレットって、めちゃくちゃよく作られてるなって思いました。映画を観て面白くて、パンフレットを買って開いたら、九龍城砦の本の情報も書かれていて、この映画ってちゃんと学んで観るべきなんだと教えてくれました。
今まで触れてこなかった香港というものに興味を持ち始めて、いま心の拠り所が香港になっています。元々今年香港ディズニーランドに行こうという計画を立てていたんですけど、ガイド本を買って他の香港の場所についても学んでいます。香港、食べ物も美味しいなんて、最高すぎる! Xで『トワイライト・ウォリアーズ』にまつわる聖地の情報を発信している方々がいるので、それも参考にさせていただこうと思ってます。
あと、勝手に黒社会の人たちは酒をガブガブ飲んでるイメージがあったんですが、今作を観て、プーアール茶を飲むんだ! かわいい!って思って。最近銀座にプーアール茶専門のティールームができたので、今度行こうと思ってます。
強い男たちが戦う映画を観に行こう!
——では、最後に、まだ今作を観ていない人に薦めるとしたら、どんな言葉でオススメしますか?
うわー! どうしよう! いっぱい伝えたいことがあり過ぎるけど、何を伝えたらいいんだろう。月並みな言葉では薦めたくない!
確実に…確実に伝えたいんだよな。ほんとに観てほしいんですよね。アクションも香港も知らなくて、映画を観に行く習慣がない人も、きっと確実に何かが刺さるんです!!
仕事の後、疲れてもうすぐ帰りたいと思うかもしれない。でも、その帰る足を一歩映画館に向けることによって、明日への活力がもらえます! そして、観た後は、叉焼飯が食べたくなります!
私は、田辺さんが私を誘った言葉って正解だと思っていて。「強い男たちが戦う映画を観に行こう!」って、すごくいい誘い文句だと思います。一番シンプルにこの映画を言い表していて。
うん、本当にそれだね。私、伝えた過ぎて長く喋っちゃったけど、結局そこだわ。
この誘い文句、「そうだ 京都、行こう。」くらい名言だと思ってて(笑)。みんなも、絶対、強い男たちを観たいと思います!
こんなにも映画の力やエンタメの力を感じさせてくれて、心を動かしてくれて人に話したくなるようなものって、そう簡単には出合えない。
最近、推しのこととかでモヤつくこともあったんですけど、この映画を観て、けっこう救われたというか、すごく元気になったんですよね。『トワイライト・ウォリアーズ』があるから、いま私がんばれてるなって。いまは、いつ終わってしまうのかヒヤヒヤしてて…。
いや、終わらないでほしい…。どうしよう…。一生どこかで上映していてほしい! だって、この映画、絶対映画館で観るべき作品なので。
うん、いつか酒寄さんのお子さんにも観てほしいねって言ってます。
Profile
田辺智加
たなべ・ちか 4人組お笑い芸人「ぼる塾」のメンバー。スイーツを愛し、著書に『あんた、食べてみな! ぼる塾 田辺のスイーツ天国』(マガジンハウス刊)がある。ぼる塾のYouTubeチャンネルの他、「ぼる塾田辺の食べるわよチャンネル」も好評。
Profile
酒寄希望
さかより・のぞみ 4人組お笑い芸人「ぼる塾」のメンバー。著書に、ぼる塾の日常や知られざるエピソードを綴ったエッセイ『酒寄さんのぼる塾日記』『酒寄さんのぼる塾生活』『酒寄さんのぼる塾晴天!』(すべてヨシモトブックス刊)がある。
日本語吹替版の上映もスタート!!
異例のロングラン&大ヒットに応える形で、4月4日から日本語吹替版の上映もスタート。九龍城砦の伝説的リーダー・龍捲風を演じるのは堀内賢雄。他にも、小林親弘(陳洛軍)、鈴木崚汰(信一)、石谷春貴(十二少)、星野佑典(四仔)と豪華声優陣が揃った。さらに、大ボス役を、長年サモ・ハンの吹替を務める水島裕が演じるのも香港映画ファンにとって嬉しいところ。リピーターも、また新たな魅力を発見できそう!
©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.
イラスト・犬見沢ぽちひこ