熱狂&偏愛をさらに語ります!!
本国で香港映画史上歴代No. 1ヒット(広東語映画動員数※2024年9月現在)を記録し、日本でも、絶賛の口コミやファンアートがSNSに溢れ、盛り上がりがどんどん加速中! そんな本作を愛する「anan城塞四少」こと、アジアエンタメ好きライター&編集部スタッフ(※城塞四少=劇中に登場する若者4人組の愛称)が、前編に続き、“好き”をとことん語りました。
ニシモリ/ライター。香港や韓国などアジアのエンタメ作品を長年ウォッチ、俳優などへの取材も行う。香港は何度も訪れたことあり。3月12日に新刊『あらがうドラマ「わたし」とつながる物語』が発売に。
ホテハマ/ライター。『anan』本誌を中心に、アジアの映画やドラマに関する企画やインタビューを多く手がける。香港映画では、トニー・レオン、ドニー・イェン、レスリー・チャンが大好き。
N山/編集者。アジア映画、アクション映画、ホラー映画ファン。ジョニー・トー作品が好き。推しはニコラス・ツェー。昨年秋初めて念願の香港旅行へ。
T岡/編集者。映画担当で、普段はミニシアター系作品などを好んで観ている。香港映画やアクション映画は初心者だが、本作をきっかけにハマりそうな予感。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』あらすじ
舞台は、かつて香港に存在した「九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)」。1980年代、香港へ密航してきた陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の組織に追われて九龍城砦へ逃げ込む。そこで、城砦を仕切る龍捲風 (ロンギュンフォン)と、龍を慕う信一(ソンヤッ)、十二少(サップイー)、四仔(セイジャイ)ら住民たちと絆を深め合い、そこでの暮らしに生きがいを見出していく。しかし、やがて、時代の流れと共に、九龍城砦をめぐる覇権争いが激化。陳洛軍らも、その渦の中に巻き込まれていくのだった…。
私たちを狂わせる…関係性の抗えない尊さ
ルイス・クー演じる龍捲風(ロンギュンフォン)と、アーロン・クォック演じる“殺人王”陳占(チャン・ジム)は、覇権を争い敵対する間柄かと思いきや…。
さて、ここからはネタバレOKで話していきたいと思います。
今作がこれだけ私たちの心を掻き立てるのは、キャラクター同士の関係性の見せ方が見事というのも大きいですよね。
ルイス・クー演じる龍兄貴(龍捲風・ロンギュンフォン)と許されぬ絆を築く、“殺人王”陳占役がアーロン・クォック! 私が本当は仲良くなっちゃいけない立場にいるのに、どうしても通じ合っちゃうっていう関係性が大好きなので、ここのふたりが良かったですね。アーロンは、アンディ・ラウと並んで香港四天王でもある大スターですからね。SNSを見ていると、この作品をきっかけにみんながアーロンのことを調べて、昔のド派手で奇想天外なライブの衣装なんかを知り始めている。
今後作られるという前日譚(今作は三部作になる予定)では、彼らの物語ももっと深掘りされるのかな。
龍兄貴と陳洛軍(チャン・ロッグワン)の髭剃りシーンからの流れで、龍兄貴と陳占の関係が明らかになるところ、粋な演出でシビれました。「えー、その設定はアツすぎるだろー!」って悶えましたね(笑)。
虎兄貴と十二少(サップイー)の関係も、なんだか微笑ましくて良かったし。あの二人のストーリーももっと観たい!
そうそう! キャラクター同士の関係の描き方に、いろいろ想像を掻き立てる断片や余白がきちんとあって、ファンにとっては大量の燃料を投下されているようなもの。それは、ファンアートにも熱が入りますよね。ファンアートも素晴らしいものばかりで、SNSで見ていて本当に楽しい!
陳洛軍の仲間たちからの大事にされっぷりもすごかった。城砦の住人たちにほんとに優しくされて守ってもらって。アクションの中でお姫様抱っこされた瞬間もあったし(笑)、まさに、姫! 信一(ソンヤッ)なんて、彼をめぐる戦いの中で指を切られたりもしたのに、再会したときもなんの恨み言も言わず受け入れてくれて…。
ジャッキー・チェンの『新宿インシデント』とか、香港映画で密航船のシーンはけっこう出てくるんですけど、本当に過酷なんですよね。陳洛軍が大変な経験をしてきた人だとわかっているから、自然と優しくなるのかもと思いました。十二少も同じ立場だからシンパシー感じてましたよね。
城砦を追われた陳洛軍(チャン・ロッグワン)、信一(ソンヤッ)、十二少(サップイー)、四仔(セイジャイ)の4人が再会を果たし、昔のように麻雀卓を囲むシーンは、絆の美しさに胸を打たれる。
ハイロー味を感じるアクションとは?
では、好きだったポイントやシーンを教えてください!
龍兄貴が「竜巻」と呼ばれていて、その名の通り風を連れてくるキャラクターだったじゃない? それが、いろんなシーンに繋がっているという構造が良かった。最初の抗争シーンにも、凧揚げのところにも繋がっていて、そして、最後のバトルでも、亡くなってしまっているけれども存在を感じさせる…というのがよくできているなと。
うん。最後に竜巻に救われるシーン、胸が熱くなった!
あとは、香港映画のアクションって、周りの家具を派手にバンバン壊したり、ガラスなんかも突き破りながら戦っていくのがすごく好きで、今回もそれを堪能できた!
家具を壁や床に打ち付けて、埃と煙がもうもうと舞う、みたいなね。
ちなみに、韓国映画のアクションとはまた違うんですか?
韓国のアクションは、リアルで痛そうなイメージ。香港のほうがエンタメ性が強くて、韓国は容赦ない印象があります。
『ベテラン』などで知られるリュ・スンワン監督が、ジャッキー・チェンのアクションが好きで、そのアクションに影響受けてはいるんですけど、韓国は最後に素手で一対一で殴り合うことが多いんだよね。カンフーというよりテコンドーがベースで、それがリアルな殴り合いに見えるのかな。しかも、みんなが見ている公衆の面前でやり合うのが、お約束なんですよね。
僕の好きなアクションシーンは、最初、信一と陳洛軍が細い通路で向かい合って戦うところ。
信一がバイクに乗ってやってきてね。狭くて暗いのに、バイクに乗ってサングラスかけてて最高!
そこで陳洛軍がトタン屋根みたいなのをギリギリっと手で握って武器を作って、壁をタタっとつたって走り火花を散らすところがカッコいいなーと。映画を観た人の感想に、どんどん階を飛び越えていく感じとかパルクールっぽさがあるというようなことが書かれていて、確かに九龍城砦という場所だからこそのアクションになっていて良かったです。
もしかしたら、そこが、ハイロー味を感じる理由のひとつじゃない? パルクールと、上下移動しながらのアクション。
『HiGH&LOW THE WORST』の団地も、九龍城砦を感じましたもんね。
陳洛軍は、最後のバトルのとき、煙の中から登場するのが王道のヒーローっぽくて。バットマンみたいな。あの演出好きでした!
気功で攻撃を跳ね返す最強の敵・王九(ウォンガウ)に立ち向かうため、九龍城砦に“城塞四少”が集結するラストバトル!
王道でいうと、主人公がみんなを巻き込まないために一人で戦いに出向くけど、後から仲間たちが助けにくる、という展開もね。
ハイローだと、もうちょっと溜めてから助けに来るかも?
バタフライナイフと気功ブームがやってくる!?
私は、“ちっちぇえナイフアクション好き”を自称してるんで、やっぱり、信一のバタフライナイフアクションですかね。包丁より小ぶりのナイフをシュッシュと振り回す、スピード感のあるアクションが好物なんですよ。バタフライナイフは、カチャカチャ動かす素振りもたまらない。
信一(ソンヤッ)とバタフライナイフは、至高のコンビネーション。
大ぶりの刃物より動きが早くなるから、テンポよく勢いのあるアクションになるというのと、あと、ナイフを美しい顔の近くでかまえたときの画がいい!(笑)しかもね、今作では最後のほうで、ナイフの柄からさらに小さい爪やすりみたいな武器を取り出すところがあって! えっ、さらにそんなサービスしてもらっちゃっていいんですか!? ってビックリして天を仰ぎました。
今作のアクション部に同じ趣味の人がいるのかな?(笑)
私はどちらかというと長い刃物好きタイプかも。長いのを振り回すのを見るのが好き。
ニシモリさん、ハイローでも小林直己さん演じる、日本刀を操る源治が好きですもんね! 人によって好きな刃物が違うんだ(笑)
でも、そんな信一たちも、王九(ウォンガウ)の気功にはなかなか勝てなくて。
“硬直”!
これ、観た後絶対言いたくなるよね!
あれはいいんすかね。お腹の中に入っても大丈夫だったのかな?
ある程度は体の中も気功で守られてて、でも破られる瞬間がある…ってコト!? でも、ほとんどの部分は守られてたよね。なんなら、着ている服さえも…。
九龍城砦の暮らしと、垣間見える日本との関係
細部まで丁寧に作り込まれた九龍城砦のセットは、ため息もの。
九龍城砦というと治安が悪くて怖いイメージがあったかもしれないけど、以前九龍城砦についての本を読んでいたら、けっこう歯医者とかも多かったというのを知って。犯罪の巣窟みたいなイメージばかり先行してるけど、本当は生活に根差してるんだって書かれていたのが印象的でした。この映画では、そこでの生活の様子もしっかり描かれてて良かったですね。
外で医師免許を取れない人たちが、城砦の中で医療行為を行っていたとか聞いたことあります。エンドロールの、人々の何気ない日々の営みを綴った映像、良かったですね〜。
エンドロールでは、信一の指が切れていなかったけど、あれは、別世界線のifの目線も入っている映像なのかしら。
ラストシーンで、城砦から香港を見おろすシーンも良かったな。九龍城砦の跡地に行ったことがあるんだけど、本当にあの映画と同じくらい飛行機が近くを飛んでいくのが見られて、それを思い出した。
(アクション監督の)谷垣健治さん世代のスタッフの皆さんが”これは俺たちの映画だ”みたいなことを言っていたから、そのあたりリアルな体験を元に描かれているんでしょうね。
YouTubeで今作のメイキング映像を見ていたら、もう生産されていない昔の飲み物を小道具として作ったり、1本しか通っていない水道管からみんなが盗水している様を再現していたり、とにかく細かい作り込みがすごい。実際住んでいた人たちに聞き込みして作ったんだろうなというのが伝わってきました。人が実際に生活している感じがあってすごく良かった。
作品資料によると、プロデューサーのジョン・チョンは、幼い頃実際に九龍城砦に住んでいたそう。それゆえに強い想い入れがあったんでしょうね。
劇中に、日本にまつわるものがちょこちょこ出てきて、そんなに日本のことが香港に知られていたんだ、と。そういうことが知れるのも面白かった。四仔(セイジャイ)が日本のAVをたくさん持っていて日本語が少し喋れたり、「田原俊彦みたいなイケメンだった」みたいなセリフが出てきたり。
王九が、レスリー・チャンがカバーした吉川晃司の「モニカ」をカラオケで歌うシーンもあったし。
医者として九龍城砦の住民から厚い信頼を寄せられている四仔(セイジャイ)。診療所には日本のAVが並び、それを目当てに訪れる人々も。顔を仮面で隠し ているのは、かつて黒社会に深い傷を負わされたため。
原作には四仔の辛い過去も描かれているそうで…。黒社会の人間によって恋人が日本に売り飛ばされ、裏ビデオに出演させられたという…。
だから、“人探し”って言ってたのか…。
あと、劇中に登場しているのが昔のソニーのテレビで。日本のカラオケ機器も出てくるし、日本製品が有名だったんですね。
80年代の日本は、香港の人からするとキラキラしたイメージだったんでしょうね。
香港映画見始めて、一番びっくりしたのは、若いチンピラもコーラをストローで飲むところでしたね。ヤクルトもそうなのかな。
香港では、いろんなものをストローで飲むのかな。劇中で陳洛軍がもらったジュースにもストローが刺さってたし。ぺッて捨てちゃってたけど(笑)。
そういえば『少林サッカー』でも瓶の牛乳をストローで飲むシーン、ありました!
これを機に踏み入れたい、香港映画の世界
この作品をきっかけに、みんなが香港映画に興味を持ってるみたいで、嬉しいんですよね。
谷垣健治さんが手がけている作品は、古き良き部分もあるし、笑いどころも含めてザ・香港映画という趣があっていいんじゃないかな。アクション監督だけでなく、初めて映画全体の監督をした『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』とかも。あと、ルイス・クーとかアーロンとか、俳優で観ていくのもいいかも。私はルイスだったら『エレクション』の1と2を観てほしい!
私は『SPL/狼よ静かに死ね』を、ぜひ、観てほしい。サモ・ハン×ドニー・イェン戦が最高なので。
SPLシリーズの『ドラゴン×マッハ!』も、ぜひぜひ!! 『トワイライト・ウォリアーズ』のソイ・チェン監督作で、アクションもかっこいいけど、お話もめっちゃ面白い。ルイス・クーも、今作とは全然違うビジュアルで怪演してます。
そして同シリーズ3作目の『SPL 狼たちの処刑台』も、ルイス・クー見たさにこの間久しぶりに観ちゃった。ちなみに、アクション監督はサモ・ハン。あの頃のルイス・クーはあまりアクションができるイメージではなかったんだけど、今や!
あと、N山さんみたいにナイフバトル好きな人には、『レイジング・ファイア』だよね! 本作とは密かに繋がっているから。私も大好きな作品。
そうそう、バタフライナイフで繋がってる! こちらも谷垣さんがスタント・コーディネーターをやられています。
谷垣さんが舞台挨拶のときに話していたんだけど、『レイジング・ファイア』でニコラス・ツェーがバタフライナイフを使うシーン、戦う前にチャカチャカさせるんだけど、いざバトルになるとバタフライナイフである意味がいまいち出せなかったという後悔があったそうで。本作の信一は、それを活かしたアクションにしたらしい。
バタフライナイフアクションを進化させてくれてるなんて、ありがてえ…。
あと、『イップ・マン』もよく聞くけどまだ観てないんです。
観てー! ドニー・イェンの『イップ・マン』シリーズは、勝手に、自分の“アクションの父”みたいな存在なの。私の中でそれがアクション映画の基準になっちゃってる。詠春拳の美しさと尊さが堪能できるから!!
観てみます! えーと、あと観るべきものは…『HiGH&LOW』っすね?
前編はこちら!
大旋風到来中! 面白さでぶん殴られる大傑作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』を語りたい !|前編
本作にすっかり夢中になってしまったアジアエンタメ好きライター&編集部スタッフが、それぞれの「好き」をたっぷりと語る座談会を開催しました(前編は、ネタバレなしでお届けします)。記事を読む
©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.
イラスト・犬見沢ぽちひこ