社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第473回:AIと水資源

エンタメ
2024.12.20

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「AIと水資源」です。

AIの進化により大量の水が必要に。水資源確保が課題。

水専門のジャーナリストの橋本淳司さんに教えていただき、番組でも取り上げたのですが、今、IT企業のデータセンター建設が世界各地で相次いでおり、水源の確保を巡って、地域で新たな社会問題を生み出しています。

データセンターではサーバーが稼働していますが、サーバーを冷やすのに、これまでは空気の循環で冷やす「空冷式」が主に使われていました。ところが昨今、AIが普及しデータ処理量が増え、ものすごく熱を持つようになったため、サーバーを大量の水で一気に冷ます「水冷式」が増えています。

Googleがウルグアイで建設中のデータセンターは当初、1日760万Lの水の使用が予想されていました。これは市民5万5000人分の消費量にあたり、水不足が懸念されたため、規模を縮小し空冷式に切り替えました。

2022年にGoogleがデータセンターやオフィスで使用した水量は56億ガロン=212億L=約2000万t。前年より2割増加しました。これは計算能力の進化、主にAIの影響です。オープンAIがChatGPTをリリースしたのを皮切りに、AI開発も加速化、膨大な量の冷却水が必要になりました。大量の地下水を汲み上げることは、環境バランスが崩れ、水が枯渇する可能性もあります。

環境に負荷をかけず、水資源をいかに確保するかが課題です。熊本では、ソニーが農家と協力して「地下水涵養(かんよう)」の仕組みを作りました。地下水を汲み上げ、冷却に使用したのちに水田から地下に水を浸透させる循環システムです。これにより、台湾からの半導体工場の誘致も安心してできています。

今、東京都日野市に大きなデータセンター建設の計画がありますが、どのくらいの環境負荷がかかるのか、住民向けの説明会では水の消費量についての回答は得られませんでした。今後、同様なことが各所で起きるでしょう。

1ユーザーがChatGPTに20~50個の質問をすると、サーバー冷却に約500mlの水が必要なのだそうです。これからは、私たちもPCやスマホを使いながら、大量の水を使用していることを意識して、水資源を守ることを考えていきたいと思います。

PROFILE プロフィール

堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2426号(2024年12月11日発売)より

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