意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「本土初空襲」です。

民間人も狙われた非道な戦争を繰り返さぬために。

4月18日は、1942年に日本本土がアメリカ軍により初空襲を受けた日です。日本が真珠湾攻撃をした4か月後のことでした。空母ホーネットからノースアメリカンB‐25爆撃機が出撃し、東京上空を通過していきました。日本軍は東京の空を守れなかったと大変な打撃を受けました。「東京大空襲」というと、1945年3月10日の約10万人の死者を出した大規模な夜間攻撃が有名です。しかし、東京は終戦までに100回以上の空襲を受けています。犠牲者のうち約8万人のご遺体は誰のものか判明がつかない状態で、家族のもとに遺骨が帰ることもなく東京都慰霊堂に眠っています。

広島、長崎の原爆被害は広く知られていますが、東京以外にも大阪や兵庫、神奈川など各地が空襲を受けました。ここで忘れてはいけないのが、大量の焼夷弾を落とされ、戦闘員か非戦闘員かにかかわらず犠牲になった「無差別爆撃だった」という点です。もし今、同じことが行われたら、戦争犯罪に問われるジェノサイドだったと思います。

専門家の研究によると、木造家屋の多い密集地を狙い、火の海になるように確信的に焼夷弾を投下していったということです。このことはもっと追及されるべきだと思いますが、日本は敗戦国のため、空襲した側の責任を問うことはできませんでした。

東京では3月10日以降、空襲による死者数は減りましたが、それは人々が地方へ疎開をしたこと、また「建物疎開」といって、火災を広げないためにあらかじめ建物を取り壊したからなんですね。人々がいなくなっても、プレッシャーをかけるために爆撃が続けられたというのも恐ろしいことです。江東区北砂には「東京大空襲・戦災資料センター」があり、東京大空襲に関わる資料や写真が展示されていますから、ぜひ一度足を運んでください。

今もガザやウクライナ、中東やアフリカで戦争が起きています。非戦闘員を攻撃してはならないという「国際人道法」が作られ、戦後80年経った今もなお、戦争も虐殺も続いているというのは許されないことです。その状況にNOを突きつけ、平和への想いを受け継ぐ責任が日本にはあると思います。

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2443号(2025年4月16日発売)より

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