鹿乃子のセリフによって自分の迷いを受容できた気がしました。
「映画は熊本地震から始まるのですが、私は実際に地震が起こった2016年当時、それを経験したわけではありません。でもその時の状況や熊本の方々の心情はわかっていたつもりです。猫も飼っているので、地震が起きた時の動物の動きや、飼い猫にどう接したらいいかなどの気持ちの準備もできていて。その経験がお芝居に生きたと思っています」
ほのぼのと描かれた3人と猫との日常生活が見どころでもある今作。撮影現場の雰囲気についてこう話す。
「幼い頃から活躍している安達さんは役者の大先輩。現場では流れるように心地いい空気感を作っていただきました。人見知りの渡邊くんは、そのまま演じているだけでもう仁で。3人の絶妙なバランスは自然に作られていったと思います。監督はお芝居から生まれる空気感を大事に撮ってくださる方で、出会いのシーン以外はほぼリハーサルなしの一発撮りで進みました。私たちは控室が一緒で、たわいもないことをよくしゃべっていたのですが、渡邊くんが猫の待機部屋にしょっちゅう行っていたのが印象的でした」
役者を虜にした猫たちもまた、この物語に欠かせないキャストだ。
「もちろん思い通りにならないので大変でしたが、それよりも可愛いが先にきていました(笑)。メインのミカヅキはすごく美しい子で、灯の愛猫のまゆげは人見知りもせず、誰よりも人たらし。現場のみんながその可愛さに翻弄されていました」
鹿乃子は35歳の精神科医。心理が見えにくくミステリアスな印象も持つが、どのように演じたのだろう。
「原作ではもっと鹿乃子の人間性について描かれているのですが、映画ではその部分が割愛されていたりもしたので、原作から彼女のバックグラウンドを自分なりに汲み取りながら演じました。陽の2人に対して、やや陰の雰囲気を纏う鹿乃子を演じるのは少し難しかったかな。もともと私は、活発な性格なんです(笑)。完璧そうに見える鹿乃子ですが、部屋の片付けや料理が苦手な一面もあって、そのギャップが魅力のひとつ。表面上は理論的でも、実は内側に感情が渦巻いていたりもします。仕事柄、他人を客観視できる人でもあり、心に響く名言も多くて。たとえば、私は36歳になりましたが、それまで想像していた36歳とはかけ離れていて。まだまだ大人になりきれていない…なんて思っていたけど、鹿乃子が夜空の三日月を見た時の『欠けているんじゃない。満ちる途中』というセリフのおかげで自分自身の迷いもすべて受容できた気がしたんです。私のように迷える現代人は多いと思いますが、この映画はそれらを優しく包んで癒してくれるはずです」
『三日月とネコ』 原作は、「第1回anan猫マンガ大賞」で大賞受賞のウオズミアミ氏の『三日月とネコ』(集英社マーガレットコミックス)。出演/安達祐実、倉科カナ、渡邊圭祐、小林聡美、山中崇ほか 5月24日より全国公開。©2024映画「三日月とネコ」製作委員会 ©ウオズミアミ/集英社
くらしな・かな 1987年12月23日生まれ、熊本県出身。映画『あいあい傘』、ドラマ『隣の男はよく食べる』(菊池風磨とW主演)など主演作多数。テレ朝系列にて放送のドラマ『霊験お初~震える岩~』に出演。
カーディガン¥128,700 Tシャツ(3枚セット)¥83,600 パンツ¥147,400(以上MARNI/マルニ ジャパン クライアントサービス TEL:0120・347・708) ピアス¥28,000 ネックレス、ボールチェーン¥35,000 ハート¥31,000(以上LORO/ロロ info@loro.tokyo)
※『anan』2024年5月29日号より。写真・木村心保 スタイリスト・道端亜未 ヘア&メイク・渡嘉敷愛子 インタビュー、文・若山あや
(by anan編集部)