新型コロナウイルスの影響により、今シーズンは例年と異なり、変則的な開催となる。通常なら選手は1人2大会に出ることが可能だったが1大会のみに。出場する大会は自国ないしはその近隣国、あるいはトレーニングの拠点となる国に制限される。
羽生結弦はGPSの欠場を表明しているが、それでも、フィギュアスケートファンにとっては待ちに待った、選手の演技が観られる舞台だ。選手はなおさら、演技を披露できる場があることを楽しみにしている。
今シーズンの出場条件のもと、海外を練習拠点とするシングルの4名は、それぞれの地でエントリー。スイスで過ごす宇野昌磨と島田高志郎、紀平梨花はフランス大会、そして宮原知子はカナダ大会を選択した。
それ以外の日本勢はNHK杯に出場する。トリプルアクセル習得に力を注いできた樋口新葉、病気の影響で昨シーズンを休養にあてた三原舞依、さらには進境著しい鍵山優真、佐藤駿らの演技を、一大会で観ることができる貴重な機会となる。また、今シーズンからアイスダンスに挑んでいる髙橋大輔と村元哉中がエントリーしていることも、NHK杯で注目すべきところだ。
選手は新型コロナウイルス禍でさまざまな制限を受ける中、試合の場に立つ日を思い描き懸命に取り組んできた。自粛要請期間はリンクに立つことができず、自宅などでトレーニングするなど制限を強いられた。
影響は練習にとどまらなかった。例えば坂本花織は、プログラムの振り付けを海外の振付師に依頼したが、やりとりはLINEのビデオ通話だったという。
「なんか難しかったです。左右が分からないのと、画面内でどっちが正面か分からなくなって……」
それでも皆、大会の氷上に立つ日を信じ、全力で取り組んできた。例年と大会の運営方法が異なるとはいっても、選手たちの演技に込めた思いは変わらない。むしろ、貴重な時間であることをかみしめ、リンクに立とうとしている。
日本勢に限らない。ロシア大会には、世界を席巻するロシア女子のトップスケーターが一堂に会して競う。
来シーズンにオリンピックを控えるプレオリンピックシーズン、選手の熱演が楽しみだ。
宇野昌磨
ステファン・ランビエールコーチのもと、スイスで練習に励んできた成果を存分に見せたいところ。
鍵山優真
昨シーズン、ジュニアながら全日本選手権で3位になるなど躍進。シニアデビューシーズンとなる。
坂本花織
全日本選手権6位など、思うような成果をあげられなかった昨シーズンからの巻き返しを期す。
紀平梨花
海外に練習の場を求めた紀平梨花。新たな環境での取り組みが試される舞台に、フランス大会を選択。
宮原知子
昨シーズンからカナダ・トロントを拠点としてきた宮原知子。カナダ大会でシーズン初戦を迎える。
グランプリシリーズ 2020-2021
10月23日~ スケートアメリカ
10月30日~ スケートカナダ
11月6日~ 中国杯
11月13日~ フランス杯
11月20日~ ロステレコム杯
11月27日~ NHK杯
グランプリファイナルは日程未定。各大会、テレビ放送は未定。
※『anan』2020年10月28日号より。写真・Getty Images 文・松原孝臣
(by anan編集部)